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地下都市10

なろう作品らしい表現でふわっと投稿するなろう特有の少年の一人称視点的作品が見たい人はこちらもどうぞ。

     → 恢攘のフォクシィ https://ncode.syosetu.com/n3085kf/

 気がつくと、少年は自宅の柔らかなベッドの上に横たわっていた。

 周囲は薄明かりに包まれ、ささやかな食事と温かい飲み物がベッドサイドに整然と並べられていた。


 窓の外を見ると、かつてにぎわっていた街の通りは人影もまばらになり、夕暮れの名残とともに空は濃紺に染まっていた。


 どうやら、気を失ってしまっていたようだった。

 いつの間にかあの瞬間から時が流れ、気づけば夜の帳が静かに降りていた。

 ベッドのすぐ隣には、椅子に腰掛けたまま眠り込んでいる少女がいた。

 彼女は、少年の倒れた姿を見てすぐに駆け寄り、看病してくれたのだろう。

 その温かな行動に対して、少年は深い申し訳なさと、守らねばならないという本能的な決意に胸を締め付けられた。


 妹という存在が持つ、無条件の愛情と責任感を改めて実感しながら、少年は彼女をそっと抱き上げ、彼女の寝室へと運び込んだ。

 柔らかな布団をかけながら、心の中で彼女への感謝とともに静かに誓った。


 ──如何なる手段をもってしても、あらゆる脅威を排除し、必ず守り抜く


 その後、ゆったりと食事を終え、体を休める中、ふと外からノックの音が響いた。

 重い木製のドアをそっと開けると、そこには先ほどの審問会で冷徹な目線を少年らに送り続けていたもう1人の男の審問官が立っていた。

 昼間の彼らに対して、どこか冷酷な印象を覚えたが、今の彼はどこか温かみすら感じさせる、意外な人間味に溢れているように感じた。


「少し、お邪魔してもいいかな」

「はぁ、どうぞ。今ツィアを起こしてきますね」

「いや、彼女は大丈夫だ。今日は君。兄である君に話があってね…」


 その男は、昼の冷淡な表情とは裏腹に、まるで友人に語りかけるかのような柔らかい口調で話し始めた。


「昼の出来事は、いろいろと大変だったね。

 あの場ではあの国の人間や内通者も同席してて、どうしても口にできなかった事実が山ほどあったからね。

 何もできなかったお詫びにはならないかもしれないが、君が知りたがっていること、何でも遠慮なく聞いてくれ」


 穏やか口調で、そう聞かれ、自分と彼の間に感じていた壁が無くなった気がした。

 そこで、意を決して聞いてみることにした。


「では、ここは一体どういう場所なんですか?えっと…」


 そう言い、手を男の方へ向け、首を少し傾ける。


「あぁ。名前がまだだったね。私はヴォルト・ウェイン。ウェインって呼んでくれて構わない。よろしく」


 そういい、男は少年に手を差し出し、握手を交わした。





  — μετά—

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