地下都市9
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天井に敷き詰められたガラスからは、眩いばかりの光が差し込み、空高く輝く円形の光が、まるで新たな世界への入り口のように空に浮かんでいた。
彼はその美しい光景をしばらくの間、言葉を失いながら眺めた。
そして、約15メートルの高さから差し込むその光を5秒ほど見続けた後、ふと目に残像のようなものが浮かび、かすかな目の痛みと違和感が脳裏をよぎった。
「あれもまた、魔法の力なのだろうか……」
そう呟きながら、彼は広く静かな部屋で二人だけとなった。
その時、ずっと彼の心に引っかかっていた、手を握る少女の口づけのような静かな言葉が蘇った。
彼はその記憶に導かれるように、静かに、しかし温かな声で問いかけた。
「そういえば、君は話すことができたんだね?」
少女は小さな声で
「ごめん…なさい」
とだけ答えたが、彼はそれに対して優しく微笑み、さらに尋ねた。
「いや、全く問題はない。てっきり君は話せない思っていたから、むしろ驚いたよ。改めて聞くけど、君は僕のことを『兄』と呼んでよいのかい?」
少女は一瞬の沈黙の後、柔らかい声で答えた。
「いい。それでいい。私は…どこまでも…あなたについていく」
その言葉に、彼の胸は熱く高鳴り、呼吸が一層荒くなり、まるで新たな生命の鼓動が体中に満ち上がるような感覚に包まれた。
それは、深く胸に刻まれた妹への愛情が、今ここで鮮明に蘇った瞬間であった。
こうして、あらゆる疑問と混乱がひとつの真実へと繋がったかのような、神秘と魔法、そして愛と希望に満ちた一幕が幕を閉じようとしていた。
緊張という重い鎖から解放されたその瞬間。
まるで溜め込んだての疲労が一気に押し寄せるかのような感覚に襲われた。
体温の急激な上昇。
呼吸の一つ一つが苦しくなるのを感じる。
心と体の隅々までが一瞬にして虚脱し、やがて意識は静かに遠のいていった。
— μετά—
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