地下都市8
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「君も見たところ、その潜在能力を秘めた者であるようだ。
君が鍛錬を積むならば、やがてこの程度の魔法は使いこなせるようになるだろう」
その瞬間、これまで彼の頭の中を駆け巡っていたあらゆる疑問は、ひとつの確かな答えへと収束したかのように感じられた。
混乱と不安に満ちた思考が、一瞬にしてクリアな光となり、真実の一端が彼の心に差し込んだのだ。
「では、あの扉もまた魔法の応用ということですか?」
と、少年は尋ねる。
その問いに対して、彼はにっこりと微笑みながら答えた。
「おぉ、察しがいいな。そうだ。あの扉は、位置を入れ替えるという魔法の応用例のひとつだ。
この力は、用途の広さにおいて実に万能であり、状況に応じて様々な形で応用が可能なのだ。
神の力の一端を知り、その一端を行使することによって、我々は常に神との深い繋がりを感じることができる。
つまり、神の恩寵を受け、この力を宿している者こそ神に選ばれし誇り高き“人間”であることの証明、存在の根源となるんだ」
「では、この国の全ての人間が、その魔力が備わっているということですか?」
「ああ、まさにその通り。この世のすべての人間は神によって創られ、神の加護を受けている」
その瞬間、突然、扉の方から数名の兵士が来る気配を感じた。
彼らは全身を純白の装束で包み、頭部には洗練されたヘルメットを被り、流れるようなマントを羽織っていた。
その姿は、人間らしさを超え、まるで神話の英雄や天界の戦士のような荘厳さと神秘性を漂わせ、見る者に深い感動と威厳を与えた。
その中の一人が、低く、しかし鋭い囁き声で耳元に告げた。
「ウィリアムズ卿。少し、問題が…」
その囁き声に、彼はすぐに理解を示し、わずかに表情を曇らせながらも、即座に返事をした。
「わかった」
その言葉を聞いた途端、彼は今までの穏やかな顔立ちとは打って変わり、焦りと緊張が入り混じった険しい面持ちに変わった。
「申し訳ない。急用が入ってしまったから、一旦、私は失礼する。今日のところは家に戻ってくれるかい?」
と、男は低い声で告げると、颯爽と扉の方へ歩み出し、姿を消してしまった。
残された部屋には、再び静寂が訪れた。
— μετά—
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