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デートの誘い

数日後。


私は空のカップの前で、目をつぶり両手を組んでいた。



「この空のカップを紅茶で満たして下さい・・・・!」



そぉーっと目を開ける。


しかし、目の前にはカップは【空のまま】だった。



「私、本当に聖女なのかしら・・・・?」



女神の言葉が頭をよぎる。



「叶えられることには条件があるわ。それは、【-----------------------】。最高に最強で面白い条件でしょう?」



まだ分からないことが多すぎる。


しかし私は実際、あの時出会った女神の力で生き返った。


そのことを考えると、女神の力も言葉も事実である可能性が高い。


まだ私の聖女の力の条件は分からない。


その時、グレン殿下の言葉が頭をよぎった。



「今、この状況で一番聖女リエナに対抗出来る可能性が高いのはエイリル嬢だろう」



私は聖女リエナと向き合わなければならない。


お父様の仰った通り、聖女リエナの力は【蕾を成長させ、花を咲かせる】ものだと知られている。


植物の成長が蕾からと言えど早まる素晴らしい能力である。


また他国からの来賓らいひんを招く時は、花の蕾を集め、聖女リエナが一斉に花に成長させる。


そのパフォーマンスを見ることを楽しみに、我がベルシナ国に訪れる来賓も多い。


しかし、今現在私を一番悩ませているのは・・・・



「愛しているよ、エイリル嬢」


「返事は急がないし、ゆっくりで構わない。ただ、またエイリル嬢に会いにくるよ。私が君に会いたいからね」



思い出しただけで、心臓が速くなるのが分かった。


「緊張してしまうわ・・・・」


私は愛されるということを知らない。


公爵家の令嬢でありながら、貴族同士の情勢の関係で婚約者も16歳で未だ決まっていなかった。


その時、ふと気づいた。


聖女リエナは【何故私をおとしいれたかったのだろう?】


私は、聖女リエナにとって何が邪魔だったのか。


聖女同士は力が使えないから?


しかし、私は聖女リエナをおとしめるつもりなど一切なかった。


それに聖女リエナを愛している貴族達と関係が深かったわけでもない。


その時、部屋の扉がコンコンとノックされた。



「お嬢様、グレン殿下がお見えです」



「っ!」



どうしよう、まだ心の準備が出来ていない。


しかし、王族の訪問を拒否出来る者などこの国に存在しない。


私は一度だけ深く深呼吸をした。


「すぐに準備して、客間に向かいますわ」


何を伝えられるのか、どんな用事なのか、緊張しながら客間の扉を開けた私にグレン殿下はいつも通り優しく微笑んだ。



「ねぇ、エイリル嬢。私と街へデートに出かけないか?」



甘い言葉と共にグレン殿下が私の手を取り、そっと口付ける。


どうやら今日はいつもと違う日になりそうな予感がした。







SIDE:RENA《サイド :リエナ》







私はベルシナ国の聖女。


国民皆に愛されるべき存在。



「リエナ、今日は一緒に街へデートへ行かないか?」


「行きたいですわ!ルーマス様が連れて行って下さいますの?」


「ああ。今日はリエナを独り占めさせてくれ」



ルーマス様は我がベルシナ国の第二王子である。


独り占め、か。


独り占めなんてしないで。


私はもっともっと沢山の人に愛されなければならないの。


私はそっと両手を目の前で組んで、目をつぶる。


「リエナ?」



『今日は、公爵子息のクリス様と公爵令嬢のフレース様、男爵子息のヴァン様も一緒に行くはずでしょう?』



「・・・・ああ、そうだったな」


ルーマス様がうつろな目で了承した。


しかし、すぐにいつも通りのルーマス様に戻る。


「リエナは沢山の人と交流をする努力をして素晴らしいな。心まで本当にこの国唯一の聖女だ」



この国唯一、なんて実際は違うのだけれど。



あの日の【女神】の言葉が頭をよぎる。



「あなたを聖女にしてあげる。けれど、聖女同士は力を使えないわ。覚えておいて」



なんて自分勝手な女神なの。


けれど、分かっている。


私が女神に優遇されるような優しくて可愛い性格ではないことなど。


エイリル様には私の力は効かなかった。


それはつまりエイリル様も聖女ということである。


ただただ邪魔だった。


エイリル様は、聖女として皆に期待されていた私にも優しく声をかけた。



「リエナ様、無理をしていませんか?何かあれば、仰って下さいませ。出来る限り、力になりますわ」



みんなに尊敬され、愛される性格。


私にはない、優しさの塊のような人だった。


正直、吐き気がした。


それでも、彼女を排除までするつもりなどなかった。


あの日、女神のあの言葉を聞くまでは。



「もう一人の聖女の力は【-------------------------】」



私は彼女が憎くて憎くてたまらなくなった。


「リエナ?どうかした?」


「っ!なんでもありませんわ。少し考え事をしてしまって・・・・」


「君を虐めた悪女エイリルのことか?リエナのことは私が守るから、何も心配などしなくていいんだ。それにもう彼女は学園から追放しただろう?」


ルーマス様がそう仰って、私の手をそっと握る。


「ほら、そんなことより早く街へ行く準備をしよう。今日はリエナの好きなものを沢山買ってあげよう」


他人に守って貰えるものなど、他人が救ってくれるものなど、一つもないことを私は知っている。


それでも・・・・



「嬉しいですわ!ルーマス様」



今日も私は笑顔を振りまくの。


愛されるために。


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