私も聖女?
享年16歳、ついさっき私はあまりに短い人生を終えた。
「エイリル・フォンリース、ほら起きて」
誰かが私の名前を呼んでいる。
重い瞼は開こうとしても、うまく動かない。
「あーあ、聖女を虐めてもないのに嘘の罪を着せられて、挙句帰り道の馬車で事故に遭って死ぬなんて貴方も運がないわよね」
そうよ、私は何もしていない。
それでも、私の声を聞いてくれるものなど誰もいなかった。
「それに、貴方だって【聖女】よ?」
どういうこと?
私も聖女?
この人は何を言っているの?
「エイリル・フォンリース、貴方は愚かだわ。うまく立ち回ることが出来なかった。しかし、貴方に聖女の力の使い方を教えなかった私も悪いわね」
「まず目を瞑り胸の前で両手をくんで、叶えたいことを深く祈るの。ただそれだけ」
「でも、叶えられることには条件があるわ。それは、【-----------------------】。最高に最強で面白い条件でしょう?」
叶えられることの条件だけ何故か上手く聞き取れない。
「ねぇ、なんで貴方にこんな能力をあげたと思う?・・・・それはね、貴方が【優しい】から。ただそれだけ」
「さぁ、貴方に今から選択肢を三つあげる。どれがいいかしら?」
「一つ目。このままエイリル・フォンリーヌとしての生を終え、普通に亡くなる」
「二つ目。新しい世界で聖女の能力を持ったままもう一度新しい人生を歩む」
「三つ目。馬車の事故で【亡くならなかったことにする】。今の16歳の最悪の状況からもう一度人生を歩む」
「さぁ、どれがいい?」
まだ頭が追いつかない。
しかし、私は三つ目を選んだ。
だって、まだ私はあの世界で幸せになっていない。
「そう、三つ目がいいのね。じゃあ、生き返らせてあげる」
「そして、忠告を二つ。一つ目は、生きるのには狡さも必要ということ。もう一つは、貴方を陥れたもう一人の聖女は【とても強い能力】を持っているわ」
「これはね、一種の実験なの。この【似て非なる】力、本当なら【貴方の方が強かった】はずなの。でも、貴方には狡さが無く、力の使い方も知らなかった。だから、これからよ。ねぇ、この勝負、どちらが勝つか実に見物でしょう?」
「私も見守っているわ。このすでに負けた試合で、貴方が逆転するのか、このまま終わるのか」
「さぁ、もう一度始めましょう?」
その言葉を最後に、瞼がさらに重くなるのを感じた。
しかし数秒後、嘘のように瞼が軽くなり、目を開けることが出来る。
「・・・・お嬢様!エイリルお嬢様!」
私の侍女が涙目で、私の顔をのぞいている。
「すぐに当主様を呼んでください!エイリルお嬢様が目を覚ましましたわ!!」
使用人たちがバタバタを慌ただしく動き始める。
私は本当に生き返ったの・・・・?
その時、先ほどの多分女神であろう人物の嬉しそうな声が聞こえた気がした。
【GAME START】、と。
私の物語がまた動き始める。