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1=アーンの町
ナインツ・ブラウスの故郷アーンと言う町は海と少しの家屋に学校、おまけ程度の万屋という、活発な少女には少し物足りない町だった。友人には困らなかったがナインツからすればそこは、とても退屈な世界だった。ナインツが10になる頃には、この窮屈な町から抜け出すことばかり考えていた。そのまま2年が過ぎナインツは12歳になっていた。
ナインツの世界で12歳と言うのはとても大事な時期だ。学校を卒業したり魔術を使えるように手首に紋章を刻む儀式をしたりと1年でかなり環境が変わってしまう。ナインツは8年間通って来た学校の卒業式を終え、夕食を済まし床に付いていた。いよいよ明日が待ちに待った儀式の日なのだ。ナインツは今までの思い出に浸りながら眠りについた……。
次の日眠りから覚めると朝焼けと言うには明る過ぎる見知らぬ天井を見上げた。病院特有の消毒薬の匂いに横を向くと、ウィーニとグランティが心配そうな顔を覗かせた。ナインツが寝ている間に町が何者かの襲撃によって焼かれてしまったのだと言う、そして逃れたのは大人数人と子供達だけだった。