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第六話 三人娘と小さな姫

 アルベスタイン王国は自然豊かな国である────と、好意的に見ればそう評せる。


 実態は少し違って、基本的に山地が多いのだ。それ故に魔石の発掘が盛んでもあるのだが、裏を返すと平地が少なく人が住む場所が限られる国とも言える。人が住む場所が限られるのだから農業など言うに及ばずであり、故に無限とも言える鉱脈を切り売りする国家方針が基本となった。


 話を戻すと、山間が多い国故に河川もまた多く、その殆どがカルトン大河へと流れ着く。その支流の一つの川辺で、衣服を洗う少女がいた。


 青い髪を二つ括りにした少女────リリティアである。


(お姉様…………一体何処へ)


 手にした三人分の衣服を水洗いしつつ、彼女の頭の中は愛しのお姉様(マリアーネ)の事で一杯であった。


 あの後────謎の光がシリアスブレイカーズ一行を包んだかと思うと、リリティア、ラティア、カズハの三人は見知らぬ土地に放り出された。


 原因は不明。だが、運が良いのか悪いのか主要街道の近くだったようで、すぐに人里に辿り着いた。その村で情報収集を行い、この国がアルベスタイン王国であるということ、帝国へ帰るならば一週間ほど掛かるということを知った。


 幸い、マリアーネがジオグリフとレイターを拐った時点で絶対何かトラブルが起こるとラティアとカズハは装備を整えており、起き抜けだったリリティアも野生の勘で臨戦態勢へと移行していた。故にギルドカードも持って来ており、当座の資金や緊急時の金稼ぎには困ることはなかった。この辺の周到さは三馬鹿とは大違いである。


 ともあれ同じように三馬鹿も転移に巻き込まれた、と推察した三人娘は情報収集をしつつ帝国への帰路についたのだ。


 この日も日中の移動を早めに切り上げ、野営の準備や食料調達や洗濯などそれぞれに役割分担していた。リリティアの役割は洗濯だったので、三人分の衣類を纏めて川で水洗いしていたのだが。


「ん?」


 その岸に流れてきたものが視界に入って、リリティアは洗濯の手を止める。最初は流木か何かのゴミだと思った。だが、それにしては少し色鮮やかだ。


 頭があり、手足がある人型。しかし大きさは精々川魚のそれ。大きく見積もっても三十センチぐらいだ。


「…………妖精の、人形?」


 気になって手に取ってみると、その人型には羽があった。妖精にしては些か派手なピンクのドレスを身に纏っている。くてりとした力の無さで脱力しており、岩肌にでもぶつかってきたのか、あちこちに打撲痕や擦過傷が見られた。更にその表情は人形のものにしては生々しく、そして苦しげであった。その上。


「…………けほっ…………かほっ…………」

「生きて…………る!? じゃぁ本当に妖精か!」


 唐突に噎せて、身体に入り込んだであろう川の水を吐き出すものだから、手にしたこれが人形ではなく本物の妖精だと確信するに至った。


「はぁ、仕方ない。────運がいいぞ、お前」


 色々と気になる所は多いが、取り敢えずは助けてからにしようと決めたリリティアは、回復術式の詠唱を開始した。




 ●




「ただいま、カズハ」


 カズハが野営用のテントの設営と調理の段取りを終え、切れ味が気になったので包丁の研ぎをしていた所で背後から声を掛けられ、振り返ってみるとラティアがいた。


「おかえりなさいませ、ラティア様。収穫は…………聞くまでもないですね」

「まぁね。魔導銃(コレ)もあるし、森の中でエルフが野生動物ごときに遅れは取らないわ」


 山菜の調達や狩りを買って出たラティアだが、その成果は彼女が手にする三羽の鳥を見れば一目瞭然であった。ソートル鳥と呼ばれる北国に多く見られる野鳥だ。人の手で飼育された鶏ほど食い出はないし少々骨ばっているが、臭みもなく味も良い。一食分としては十分過ぎるボリュームだ。


 元々、エルフとして狩猟の腕はあった方なのだが、トライアードからの帰路の途中でジオグリフに魔導銃(ヴァジュラ)を託されてからその冴えに拍車がかかった。


 弓よりも連射が効き、矢の弾速を超え、威力の調整も自由自在。それにエルフの眼と精霊術に寄る補正を加えるとまさに鬼に金棒と言わんばかりの射程距離と命中精度を誇るようになったのだ。


「リリティアは?」

「川へ洗濯に」

「そう。…………明日には次の街に着くと思うわ。そこで合流できることを祈りましょ」


 手近な所に座り込んで、ソートル鳥の毛を毟り始めたラティアは旅の予定を振り返ってそう言った。


「はい…………。正直、ラティア様やリリティア様がいて良かったです。私一人だったら途方に暮れてました」

「それはこっちもよ。内地エルフみたいに、質素な食事はもう無理だもの」


 冒険者として現在赤銅等級である三馬鹿に追いつくために、三人娘達も依頼をこなして等級を上げている最中だ。なので連携は取れているし、それぞれの役割は把握しているので一緒に行動するのに支障がない。三人娘が突然の転移にパニックにならず、ちゃんと目標やルートマップを定めて行動を起こせたのはそういう事情もある。


 もしも単独での転移であったら、こうはすんなりと行かなかったであろう。


「ただいま」


 と、そこへリリティアが洗濯物が入ったズタ袋を片手に戻ってきた。


「あ、おかえりなさいませ。リリティア様」

「悪いカズハ。飯を一人前追加してくれ。ラティア、相談がある」

「なぁに?」


 戻るなりそんな事を口にする彼女に、ラティアが首を傾げた。


「妖精について詳しいか?」

「それはエルフだし、人よりは詳しいけれど」


 そんな質問をしながら、ズタ袋の中をゴソゴソと手を突っ込むリリティアが見せたのは────。


「うそ…………どうしたの? この子」

「川で拾った」

「そんな犬猫みたいに…………」


 先程川辺で拾った妖精であった。衣類に大事に包まれており、拾った時よりは穏やかな表情で眠っていた。


「幸い命に別状はない。細かいすり傷や打ち身なんかはあたしが治したし、いつ目を覚ましてもおかしくはないけど…………」

「そうね。いきなり知らない人間がいたらびっくりすると思うわ。まだエルフの方が安心するでしょ」


 妖精は人を好まない、という民間伝承がある。


 その理由や経緯こそ伝承に残されてはいないが、事実妖精が人前に姿を見せることは滅多にない。時折見せることはあるのでその存在を疑われることはないのだが、地域によっては神の使いとして崇められることもあるぐらいに希少だという。


 一方で亜人────取り分けエルフは身近に遭遇するそうだ。というのも、どうも種族的には近縁種のようで、妖精もエルフも精霊との繋がりが深いことが関係しているのではというのが民間レベルでの憶測だ。真相はどうかは分からないが、実際ラティアが対応するのが適任と言えた。


「頼む」

「ええ。…………それにしても」

「…………何だよ」


 存外に素直なリリティアに、ラティアもカズハも微笑ましいものを見たように頬を緩めた。確かに知り合った当初ならばお姉様に関係ないから無視! とでも言うんだろうなぁと呆れていただろうが、ここしばらく付き合ってみてリリティアの性根を二人は悟っている。


 マリアーネ関係では見境なく常時暴走しているちょっとアレな聖女ではあるが、庶民の出身であることから平素は案外常識的だったりする。


 それに案外TPOを弁えて身分のある相手にはそれなりの対応をしている。少なくとも、今のように蓮っ葉な口調は封印して余所行きに振る舞う程度の常識は持っているのだ。


 後は、だ。


「可愛いですもんね。妖精さん」

「そうね。お人形さんみたいで」

「べ、別にそんなんじゃないし。あ、あたしはコイツを見たお姉様が喜びそうと思ってだなぁ…………!」


 これで意外と年相応に可愛いものが好きだったりする。拠点の彼女の部屋には、人形やぬいぐるみが溢れているのをラティアとカズハは知っていた。


 そういう事もあって見捨てられなかったであろう妖精が、三人娘の声に反応してか身体を動かした。


「う…………」


 ゆっくりと瞼を開く妖精は、その翠玉色の瞳で三人娘を見上げた。


「ここは…………」

「気がついた?」


 ラティアが声を掛けると、妖精は状況を認識する。


 エルフ、獣人、人間の三人の娘。獣人(カズハ)の手には包丁があり、しゃこしゃこと丁寧に研いでいて、エルフ(ラティア)の手には羽を毟られている途中のソートル鳥。周囲には他にも食材がある。どう見ても晩餐の準備である。その三人が一斉にこちらを見ている。好奇の視線ではあるのは間違いないが、この状況────。


「────きゅう…………」


 食材として見られているのだと勘違いした妖精が、再び意識を失ったとしても誰も責められないだろう。




 ●




「す、すみません…………た、食べられるかと思って…………」

「そんな凶悪に見える?」

「あはは…………」

「まぁ、タイミングが悪かったな…………」


 それからしばらくして、再び目覚めた妖精はやっぱり意識を手放しかけ、何とか敵意がないことを説明した。人形サイズの少女がガクガクと青ざめた表情でぷるぷる身を竦めて怯えているものだから三人娘も酷い罪悪感を覚えたものだ。


 どうにか釈明し、何とか会話が成り立つ頃にはすっかり日も暮れてしまった。


「改めて名乗るわ。ラティア・ファ・スウィンよ。こっちは」

「カズハです」

「リリティア・ハーバードだ」


 改めて自己紹介をする三人娘に、妖精はふむふむと頷いた後でぴたり、と何か思い至ったのか動きを止めた。


「リリティア・ハーバード…………? ………………………………リフィール教会の聖女!?」

「ええ。この子が貴方を川で拾ってきたのよ。感謝するならこの子にね」

「あ、ありがとうございます」

「別に。成り行きだ、成り行き。それより────」


 どうやらリリティアの事は知っていたようで、恐る恐ると言った具合に頭を下げた。それに対し、リリティアはひらひらと手を振ってから改めて口を開く。


「何で妖精があたし(聖女)の事を知っている?」

「あっ!」

「そう言えばそうね。俗世に詳しい妖精だなんて珍しいし────どうして、大妖精カテドラの紋章が浮かんでるのかしら?」

「…………!」


 続いたラティアの疑問に、妖精はドレスの胸元に浮かんだ紋章を隠すように身を捩った。


「あの、その…………これは…………」


 迂闊だった、と言わんばかりの妖精にラティアもリリティアも眉を顰める。


 前述したように妖精は滅多に人の前に姿を現さない。逆説的に言えば人の世情など知る由もないのだ。聖女という存在は古くからいるので、単語としてそれを知っていたとしても、現聖女の名前を知っているのは些か不自然だ。


 それに、妖精が身に纏っている胸元が開けているドレス────その肌に浮かんだ複合する逆三角のような紋章をラティアは知っていた。


 数千年前に起こった神魔大戦の折、神族側として戦ったという全ての妖精の始祖、大妖精カテドラ。平均寿命三百年という長き時を生きるエルフをしても神話レベルの存在で、しかしその存在を疑ってはいない。何しろ世界樹を守るエルフの一部は大妖精カテドラと謁見できる資格を持っていて、今でも時折コンタクトを取っているからだ。


 ラティアの故郷であるフェルディナは所謂外地エルフと呼ばれる開明派であるが、それでも伝統や伝承を蔑ろにしてはいない。まして妖精とは親戚筋なのだから、どの種族よりも詳しい。


 であるからして妖精の紋章に気づき、しかし首を傾げたのだ。大妖精カテドラの紋章を持つ妖精など、どんな伝承にも聞いたこともなかったから。


「はい。どうぞ」


 妙な緊張が生まれた中、それを打ち破るようにしてカズハがお茶の入ったカップを妖精へと差し出した。


「聞きたいことはありますし、疑問もありますけれど────多分、私達の目的とは違うのでしょう。なので言わなくても構いませんよ」

「ま、それもそうだな」

「カズハはいつも冷静よね。…………あれ? それってわたし(リーダー)の役割じゃ…………? じゃぁ、わたしの存在意義は…………?」

「け、決断はリーダーの役割ですよ! ラティア様!」


 だが、それは彼女達の本筋ではない。だから三人娘は放置することにした。どうもこの三人、三馬鹿と一緒にいる内に無思慮にあれこれ人助けはしないというルールの影響を受けているらしい。


「目的、ですか…………?」

「あたし達はな。レオネスタ帝国を根城にしてたんだが、気付かない内にアルベスタイン王国に飛ばされてたんだ」

「何かの事故だと思うんだけどね。多分、マリーが関わってると思うんだけど」


 ちらり、とラティアとカズハがリリティアを見れば、彼女は少し表情を曇らせていた。


「マリアーネ様も驚いていましたので、自分の意志ではなかったと思いますよ。リリティア様」

「ん…………」


 リリティアとマリアーネの追いかけ追いかけられるというやり取りはいつものことではあった。だが、転移するほど嫌だったのか────などと詮無いことをここしばらくリリティアは考えていたのだ。付き合いとしては短いが、それでも冒険者活動で一緒することが多いラティアとカズハは彼女の内心を察していた。


 平素なら突っぱねそうなものだが、素直に励ましを受け入れている辺り信頼しているのか────それとも心が弱っているのか。


「まぁ、とにかく帝国に帰るのがわたし達の大方針で、多分一緒に飛ばされたであろう他の三人の仲間の捜索もしてるの。貴女、何か知らない? ジオグリフ・トライアードって人間の少年とレイターっていうこっちも人間の少年と、後はマリアーネ・ロマネットっていう人間の少女なんだけど」

「いえ…………」

「そう。なら仕方がないわね」

「あの…………心配じゃないんですか?」


 妖精が首を横に振ると、酷くあっさりとラティアは肩をすくめた。その妙にドライな反応に、妖精は疑問を口にした。しかし三人娘は互いに顔を見合わせて。


「心配は心配ですけど」

「まぁ、あの三人だし」

「あたしはか弱いお姉様が心配だが?」


 心配よりも、あの三馬鹿への妙な信頼感が勝っていた。


「信頼、されてるんですね…………」

「当然です。レイター様ですから」

「ふっ。夜天の魔王がそう簡単に堕ちるはずがないわ。────待って、今の堕ちるって言葉、カッコいいわよね…………!?」

「あたしは愛しているが?」


 確かに間違いなく、この纏まりの無さはあの三馬鹿由来であろう。


「あ、あの…………!」

「なぁに?」


 それを見てどう思ったかは分からないが、妖精が意を決したように三人娘を見つめた。


「妾の名はルミリア・エル・アルベスタイン」


 そして開陳する。


「────この国の、王女です」


 自らの、その出自と境遇を。




 ●




 かつて、アルベスタインという国ができる前のことである。


 この地には、霊龍と呼ばれる存在が暴れ回っていた。御霊を司るその龍は、魂を持つ者を使役し、喰い、力とした。人は当然、亜人や魔族、妖精や精霊────意思を持つもの全ての天敵であり、怨敵でもあった。一説には神話の悪魔族側の勢力と言われているが定かではない。


 ともあれ、時の指導者は霊龍を鎮めるために大妖精カテドラに助力を請うた。そしてその加護を受け、大妖精カテドラと共に霊龍アルベスタインをこの地へ封じた一族────というのが、アルベスタイン王家となる。


「成程…………それでカテドラの紋章が貴女にあるの────失礼、御身にあるのですね?」

「普段通りに話してもらって構いません。今の妾は、供回り一人もいない身ですので。他のお二人方も、そのようにお願いします」


 ルミリアにそう言われて三人娘は顔を見合わせた。


 一応、彼女たちはレオネスタ帝国人になる。立場としても三者三様ではあるが、それぞれ結構な身分があり、ラティアとカズハはレオネスタの自治区であるフェルディナと獣人の里の外交担当、という役目もあってそれなりに礼儀教育はされている。


 とは言え流石に他国の王族というのは尻込みする相手で、立場として強く出られるのは大陸最大宗教の聖女であるリリティアぐらいだ。


 なので言葉遣いにも気をつけねば、としたのだがルミリアはそこまで気にしないらしい。いや、このボロボロな様子を見るに、その余裕もないと言うべきか。


「かつて、この地で荒ぶっていた霊龍アルベスタインを鎮めた大妖精カテドラ様。その加護を受けた直系────それがアルベスタイン王家です。妾は、その末裔になります」


 彼女の言葉に、道理で世情に通じていて大妖精の紋章を持っているはずだ、と 三人娘は頷いた。


 あの時────騎士団長のリヒター・セントール侯爵に追われて、逃げるために渓谷へと飛び込んだルミリアは、その際に王家に伝わる秘術の一つを行使した。


 妖精との親和性を高めると言われるその秘術は、端的に言えば妖精に変化する魔術だ。とは言え狙いはそこではない。元々戦闘能力がほぼ無いルミリアが、妖精になって小さくなることで先導するシャノンの負担を軽減しようとして行使したのである。確かに軽くなって負担は減ったのだが、結果として軽くなりすぎて激流に流されシャノンとは離れ離れになってしまったのは何とも笑えない話なのだが。


 とは言え、目的地のすり合わせはしてある。どうにか当初の目標であるラドック領へと辿り着けば合流できるだろうとルミリアは判断し、しかし辿り着くためには協力者は必須であることも理解していた。


 故に、彼女は三人娘へと向かって頭を下げる。


「妾はラドック伯の元へ赴き、我が騎士(シャノン)と合流して宰相(ガーデル)を打倒せねばなりません。どうか、皆様の力をお借りしたく」


 それに対し、三人娘は。


「これはちょっと…………」

「流石に手に余るぞ…………」

「そうね。最後まではとても無理よ」


 険しい顔で渋っていた。ここに至るまでの道中で、彼女達もこの国の情報を手に入れている。だからこそ、亡国の王女となりかけているルミリアを前に、軽々な判断はできないのだ。


「今の情勢、言ってしまえば内乱直前なんでしょう? わたし達にとってはここは他国。それに参加して、わたし達の出自がバレれば帝国の介入を疑われるわ。その事実はいずれ、故国の足枷になる。悪いけど、そこまでは付き合えないわ」

「おい、カズハ…………ラティアがちゃんと政治を理解してるぞ」

「い、一応エルフの里(フェルディナ)の外交官と言うべきお立場ですし、最近はジオグリフ様とよく一緒にいられますから…………」

「あの変な言動だけを学んでた訳じゃないんだな…………」

「二人とも? 今、大事な話をしているんだけど?」


 にこぉっとラティアが笑みを向けるが、娘二人はすっと目を逸らすばかりである。


「そう、ですか…………」

「ただ、ラドック辺境領までは同道出来るわ。そこから先は、手を出さないけれど」

「いえ…………それで構いません。確かに他国の客人を巻き込む話ではありませんでした。報酬は、妾が出来ることなら如何様にも」


 わずかに気落ちするルミリアではあるが、後々を考えれば確かにそうなると気を取り直した。


 今の帝国は内政に力を入れているが、元は────否、今を以てもこの大陸の雄である。


 外交────それも侵略を視野に入れた行動を起こす際、自国の民が他国の王家復権を手助けしたとなれば交渉の手札とすることは明白。それは取りも直さず帝国側にも同じことが言えるが、手札にされる側のラティア達にとっては溜まったものではないのは理解できたのだ。


 故に、お互いの素性は知らずにただちょっと同道しただけの間柄────というのが無難な落とし所なのだろう。


「そうね。お金や装備は持ってきたしどうにかなるから────情報が欲しいわ」

「情報、ですか?」

「ええ、さっき言った三人。ジオグリフ・トライアードとレイター、それからマリアーネ・ロマネットを探してほしいのよ。わたし達、アルベスタインでの伝は全く無いから」

「分かりました。目的地に着いたらラドック伯に頼んで捜索してもらいましょう」

「お願いね。三人揃って三馬鹿だなんて呼ばれるぐらい派手な子達だから、すぐ分かると思う」


 そしてラティア(エルフ)は右手を差し出して。


「じゃぁ、よろしく。ルミリア」

「はいっ!」


 ルミリア(妖精姫)も、その手を取った。

次回はまた来週。

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― 新着の感想 ―
>妖精との親和性を高めると言われるその秘術は、端的に言えば妖精に変化する魔術だ  最初に妖精の姿で出てきたからマジの妖精種族の姫かい。  と驚かせてからの、変化だった安心感。
どっちも変身能力持ってんだなこの主従
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