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第四十四話 そして三馬鹿が流星で来た。

コメディさん「参・上☆」

シリアスさん「助けてくれ(´・ω・`).;:…(´・ω...:.;::..(´・;::: .:.;: サラサラ..」

 時はほんの少し巻き戻る。


 帝都を旅立った三馬鹿一行が機上の人ならぬ天馬車の人となって、およそ七時間。障害物もなく、最短距離を突っ走れる空の旅はこの世界において他に類を見ないほど快適かつ快速で進み、昼を回る頃にはハーヴェスタ平原近郊まで辿り着いていた。


 最初の頃は初めての空の旅に荷台でわーわーきゃーきゃーと騒がしかった三人娘もすっかり慣れて、素直に景色を楽しむ余裕が生まれていたのだが、実際に現場に辿り着くと絶句していた。


「これは一体………」

「戦争………ではなさそうですが………」

「いや、あそこを見ろ。ケッセル軍の………残骸、のようなものが」


 想像していた戦争とは違う状況に、三人娘ラティア・カズハ・リリティアが困惑していた。


 戦争の助太刀に来たはずなのだが―――。


『なんで怪獣映画になってんの?』


 こてん、と御者台の三馬鹿ジオグリフ・マリアーネ・レイターも首を傾げて思わず声を重ねた。


 そう、デルガミリデ教団の暗躍とか、戦争の元凶とか、ディアドの復讐とかカリーナやバスラの命懸けの召喚とかそんな細かな事情など一切知る由もない三馬鹿からしてみれば、戦争映画を見に来たはずが途中から怪獣映画になってしまったかのような肩透かし感が否めなかった。


 おかしい。自分達は家族や仲間の身内を救うためならば他人の命を奪うことも厭わぬと悲壮な覚悟で来たはずなのに―――とは思うがそれはそれとして。


「しっかしとんでもなくでっけーですわ、とんでもなくでっけーですわ。魔力密度もジオの本気の五十倍はあるんじゃないですの?コレ」

「大事なことなので二回言いました。まぁ状況はよく分からんが、アレがやべーってのは分かる。ゴ◯ラみてーな威圧感があるわ。―――どうすんべ?先生」

「ふぅむ………あの巨体だし、強度を一度調べたいし、さて………」


 前世では科学的にというか物理的に存在できなかった未確認巨大生物を見て、ちょっとワクワクしている三馬鹿だが、何となくあの巨大生物の次の矛先がトライアード軍であることは察することは出来た。


 であるならば、とジオグリフが方針を決める。


「マリー。この馬車、ぶっ壊れてもいい?帰りは実家の馬車手配するからさ」

「拠点に予備はありますから別にいいですけど、何をする気ですの?」

「ラムアタック、神風、ハードラック」


 出された3つの単語に、馬鹿二人が嫌そうな顔をする。


「おいおい先生。よりにもよって専業(プロ)の俺にアクセルとブレーキ踏み間違えたって素人(トーシロ)みてぇなことやらせる気かよ」

「それ轟◯号というかただのコンビニミサイルじゃないですかやだぁ」

「それが嫌ならV-MAXとかどうだろう。君の愛称もレイだし」

「某楽器屋のバイクじゃねぇよな。先生の場合、流星の方か。―――俺、Readyとか言ったほうがいい?」

「走れメロスのようにですの?」

「僕の名はジオ………トライアードは狙われている!」

『知ってるよ!』

「そりゃそうだ」

『また三人で訳の分からないこと言って盛り上がってる………』


 ゲラゲラ笑う三馬鹿に、三人娘が白い目を向けていると巨大生物の動きがあった。のっそりとした動きだが、徐々にトライアード軍へと回頭していく。


「おっと、あんまり余裕はなさそうだ。よし、じゃぁ邪魔な荷物を仕舞うよ。はい、皆、危ないから手荷物出して。収納しておくから。マリー、天馬の強化を。レイ、手綱は任せた。僕は障壁を張るよ」

『アラホラサッサー』


 指示を飛ばしながら慌ただしく準備を始めるジオグリフに、ラティアが手荷物を渡しながら尋ねる。


「どうするの?ジオ」

「一撃で決まれば良し。決まらなくても相手の再生能力や防御力を測れる。最適且つトチ狂った戦法」


 すると背景に『!?』をわざわざ炎魔術で出現させた三馬鹿は―――。


特攻(ブッコ)んでくんでぇ、夜露死苦ゥ………!!』


 何故か急にリアル調の顔芸をした。




 ●




 そして、時を戻して現在。


「オラオラオラ!こちとら任意保険にゃ入ってねぇぞぉっ!自賠責もねぇから泣き寝入りしたくなきゃ死ぬ気で逃げな!!―――(プロ)から逃げられるもんならなぁっ!!」

『ひゃぁぁあぁああぁああっ!!』


 SFオタが悪ノリでネタをぶちかました直後、まだまだ平気そうだったデルガミリデへとケモナーがハイテンションで特攻していた。空の旅に慣れて始めていた三人娘も、ジェットコースターを軽く超える命の掛かったアトラクションには思わず悲鳴を上げているが、そんなことなど気にも止めずレイターは手綱を握ってデルガミリデへと突撃していく。


 無論、単なる自爆ではない。


 馬車を曳く天馬は主人であるマリアーネからの魔力供給によって速力を強化、更に天馬と馬車を覆うようにしてジオグリフが防壁魔法を展開してぶつけても問題ないぐらいに守りを固めている。その際に溢れた余剰魔力が燐光のように輝いて、さながら箒星が如く煌めいていたのだ。


 それを手繰ってレイターは∞の軌道を描きながら「まっくのうち!まっくのうち!」と叫びながらデルガミリデの顔へ向かって何度も何度も突撃をカマしていく。


 どっかんどっかんとその都度重い衝撃音が響いて、運転手として常ならばぞっとする破砕音も―――。


「あぁ!なんていい気分だ!自分からぶつけてもいいとかサイコー!!」


 今日の所は許されるわけで、ヒャッハー!と叫びながらブレーキが壊れたようにノリノリでハンドル操作をミスっていく。


「うーん、ジオ。コレ、実はヤバい人選だったんじゃないですの?」

「職業ドライバーってストレス貯まるみたいだからね。たまに横着な乗用車に茶々入れられると海外みたいに物理的制裁加えたくなるみたい。会社の看板背負って走ってるし、自分の免許に傷が付くから我慢しているようだけれど」


 そんなはっちゃけている(シリアスブレイカーズ)鹿(の特攻隊長)の様子を、強化と防壁を維持しながらマリアーネとジオグリフが顔を見合わせる。


「ゲラゲラゲラ!俺が安全に停まれるように開けた車間に勝手に入るなよ!ブレーキ一発荷崩れ自腹!バスなら車内人身累積一発面取り!なぁにがエッセンシャルワーカーだ!無くてはならない仕事だ!その割にゃ法律も社会も会社もだぁれも俺等を守りゃしねぇじゃねぇか!そりゃそうだよなぁ!ブルーカラーの法律決めてんのは普段ハンドル握らねぇホワイトカラー(官僚)と政治家のスポンサー(企業献金)やってるブラック荷主なんだから!代わりなら幾らでもいる!?だったらいなくなったら自分等で運べよ!?ケツで椅子磨きすぎて運動不足のその身体じゃチャブリの積付け一つも出来やしねぇくせにさぁ!!ホント物流業界は地獄だぜ!フゥハハハーハァ―――!!」

「相当溜まってたんだねぇ、レイ」

「他人事のように言いますけど多分、私達当てはまりますわよね」


 前世ではジオグリフは労組という票田や献金するだけの資本力を持つ企業に配慮して一向に法改正しない政治家側で、マリアーネは一円でも安く買い叩きたいブラック荷主側であった。


「………。今度、レイをマホラに連れて行こうか」

「アニマルセラピーですわねー」


 そっと目をそらす二人を他所に、特攻はクライマックスを迎えていたらしく―――。


「どらっしゃぁああぁあぁあっ!」

『あっ』


 フィニッシュとばかりに顎先に下からぶっ込ま(特攻さ)れたデルガミリデは、ついに白目を剥いて仰向けで倒れていった。




 ●




 未だ巨獣の転倒による砂埃が立ち昇る中、流星―――ではなく、シリアスブレイカーズ一行を乗せた天馬車はトライアード軍の本陣へと辿り着いていた。正体不明の乱入者にトライアード軍は騒然としていたが、領主一家や愚連隊は気づいていた。何しろトライアードに帰って来たと言ったのだ。


 こんな非常識なことをする馬鹿を、彼等は一人しか知らない。誠に遺憾ながらこれから追加で二人知ることになるが。


「兄様!父様!」

『ジオ!やっぱりお前か!』


 ジオグリフが馬車から飛び降りて手を振ってみれば、トライアード一家はほっとしたような、こんな事するのこいつ以外にいないよなと納得したような、そんな複雑な表情をした。


 そんな反応にジオグリフが苦笑して、周囲を見回す。見渡す限り、怪我人だらけだ。収容した遺体もある。その中には知っている顔も。まぁ戦争をしていたのだから当然という前世の政治家の部分と、今生のジオグリフとしての感情が一瞬だけせめぎ合う。


 それを全部飲み込んで、一息。


「無事、ではなさそうですね?―――リリティア、先に父様と兄様の治療を頼めるかい?」

「分かった」

「それで、ミド兄様、何があったんです?」


 重症患者のラドグリフとルドグリフの治療をリリティアに任せ、ジオグリフはミドグリフへと水を向けた。


「分からない。戦の最中に突然、アレが現れたんだ。軍監のラッカス卿によれば、あの瘴気や姿形から古の人造邪神じゃないかって話だ。幸いにこっちとしては運良くケッセル軍を巻き込んでくれたから勝ちは勝ちなんだが………」


 ミドグリフはそう言葉を切って、デルガミリデを見やる。


 体高約90m、全幅約40m、尻尾を含めた全長はおそらく180強m。確かに生き物としては規格外だが、トライアード全域に比べれば矮小だろう。問題は、この巨獣が生き物で、無差別に暴れることだ。伝承の通りならば、トライアードのみならず、レオネスタ帝国そのものが早晩滅ぶということ。


 早い話―――。


「あんなのが自領にあっては困る」


 為政者として、そんな制御されていない爆弾のような存在は看過できない。


「―――どう見る?」


 そりゃそうだ、とジオグリフは頷いて、倒れた巨獣を遠目から観察していた馬鹿二人に話を振った。


「んー………ひと当てした感じ、単に召喚されたようですわね。それも術者が死ぬぐらいに無理矢理。だから制御もされてませんし、本能に任せて中途半端に暴れるだけなのですわ」

「だがあの巨体と魔力量はとんでもねぇぞ。ただ暴れるだけでも被害が笑えねぇ」

「ほっとけば消えるなら良いけど………」


 ジオグリフの呟きがフラグになってしまったのか。


「ほ、報告します!邪神が動き出しました!」

『ですよねー』


 ずずず、とまるで地すべりのような音を立てて巨獣が再起動し、立ち上がり始めたのを伝令が伝えてくる。


「仕方ないですわねー」

「まぁ、先生の故郷を見捨てるのも忍びねぇしな」

「―――じゃぁ、やりますか。邪神ちゃんの後始末」


 にわかに騒がしくなる本陣で、三馬鹿は不敵な笑みを浮かべていた。

次回も来週の水曜日。

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