表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モモンガー01  作者: 眠田 直
9/10

第2話:大いなる森への旅(4)

 地下三階も不思議な部屋だった。


 天井は柔らかな魔法の光に満ちていた。

 そして、大小いくつかの岩が置かれていたが、あまり自然な感じはしない。人工的な配置だ。

 足元は砂地で、もうしわけ程度に雑草が生えていた。


 「リーダー、どう見る?」ゼロワンはキュルルの意見を聞いてみた。

 「どうやら、何かの飼育室のようですね」


 すると、

 「ゴーン ゴンゴンゴン ラホーイ」

 という奇妙な鳴き声が部屋の中に響いた。


 そして岩陰から、鼻先にトゲの生えた大蜥蜴が、ぬっと顔を出した。

 筋骨隆々とした四本の足が、8メートルはあろうかという大きな図体を支えていた。


 「…こ、これは『水晶宮のイグアノドン』!」

 さすがのゼロワンも緊張していた。


 「『水晶宮のイグアノドン』って何よ?」と、リンは疑問に思った。

 ゼロワンの代わりにキュルルが説明を始めた。

 「『水晶宮のイグアノドン』は、とある魔導士が古代の化石を発見したのですが、骨を間違って組み立ててしまったのです」

 キュルルは説明を続けた。

 「本来、イグアノドンはおとなしい草食恐竜なんですが…」

 「ん、それ前にも同じような事を言われたなぁ?」

 「今のアレは、もう恐竜ではなく『魔物』です!」


 「水晶宮のイグアノドン」は「ラホーーーイ」と声をあげながら、ゆっくりと「紅の拳銃」一行の方に近づいてきた。

 (前に戦ったステゴザウルスほど、スピードは無いのが救いか…)と、ゼロワンは相手をよく観察していた。


 「どうせこいつを倒さなきゃ、冒険者として認められないんだろ?」

 マキは覚悟を決めたようだ。


 「じゃあリンさん、ちょっと試してみますか」

 「わかったわ」

 マキとリンの二人はそれぞれの剣を抜き、イグアノドンに襲いかかった!

 「ラホーーーイ!」

 「えっ!」

 マキの剣は、イグアノドンの放った光のバリアーに弾き返された。


 リンはもっと悲惨だった。


 ぺきーーーん!


 戦闘の最中に、またもやマヌケな音がした。


 リンの どうのつるぎは おれてしまった。


 「ええっ、また~!?」とリンは落胆した。


 「物理でなく、魔法攻撃なら効くかも!」

 キュルルは「氷のつぶて(アイスペレット)」の魔法で攻撃したが、これもバリアーにさえぎられ、イグアノドンのところにまでは届かなかった。


 ゼロワンは疑問に思い、

 「うん? キュルルは氷属性の魔法しか使えないのか」と聞いてみた。

 キュルルは顔をしかめながら、

 「最初に言ったでしょ。まだ『新米の魔法使い』だって!」と言い放った。

 ゼロワンは(こりゃ戦力不足だな…)と痛感した。


 そうこうしているうちに、イグアノドンが赤色の噴煙を口から吐きはじめた。

 「まずい!毒ガスだ。みんな顔を布で覆え!」

 「撤退しましょう!」リーダーはそう判断した。

 「賛成だ」ゼロワンも同意した。


 ---またも地下二階


 階段を上がると、あの大きなダブルベッドが置かれていたので、ゼロワンは一瞬「げっ!」と思ったが、表示板は「クリア済み」になっていた。


 メガロドンが壊した壁も修復されていた。

 どうやら伝説に聞く「ダンジョンの中のひと」がいるらしい。


 「あ~~疲れた」とマキが言うと、四人ともベッドにゴロンと横になった。

 「これ、寝心地いいなぁ」


 「さてリーダー、どうするかね?」とゼロワンが聞くと、

 「うーーん、打つ手が無いですねぇ」とキュルルも迷っていた。


 「私ならイグアノドンを、空から攻めるね」

 急にリンがまともなことを言い出したので、三人は少し驚いた。

 「だってあのバリア、円環状で上はガラ空きだったよ?」

 「そうか、二足歩行から四足歩行に移行したから、考え方も二次元的になってるんだ!」

 キュルルはすぐ理解した。

 「じゃあ、ジャンプしてあのバリアーを越えれば、攻撃できるってことだ」

 マキはベッドから起き上がった。


 「助走距離は2メートルってとこか。ちょっとキツイな」とマキは愚痴りながらも、

 「キュルル、高さ3メートルのところに標的を出してくれ」と頼んだ。

 キュルルはベッドから半身を起こし「標的(ターゲット)」の魔法を使った。

 すると地面から3メートルのところに、風船が出現した。


 「ま、これくらいは楽勝だな」

 マキはジャンプして、易々と風船を蹴りあげた。


 「ようし、次は高さ5メートルだ。キュルル、頼む」

 キュルルは2度めの「標的(ターゲット)」を唱えた。


 「さぁてと…」

 マキはわずかな助走距離で、風船をキックしようとした。

 だが、あとわずかなところで風船にマキの足は当たらず、空中でバランスを崩してしまった。

 「おっとっと」


 「あぶないっ!」

 マキがコンクリートの床に転落すると思ったリンは、思わずそう叫んだ。

 しかしマキは、なんなく受け身を取って、すぐにまた立ち上がった。

 「へへっ、失敗失敗」マキは笑いながらそう言った。

 (ほう、この()は格闘技の基礎も修得済みなのだな)ゼロワンは感心した。


 「それじゃあ、もういっちょう」

 マキは再び、風船蹴りにチャレンジした。

 今度は風船が「パンッ!」という音を立ててはじけた。

 「もんだどんだい。これぞ名付けて『流星キック』!」


 「よし、これで攻略の目星がついたわね」

 キュルルは三人に言った。

 「えー、じゃあ四人で手を合わせて、気合入れるの、やる?」

 「それはいいな」

 いつも一人で戦っていたゼロワンは、パーティー戦の楽しみを初めて知った。

 まず、キュルルが手を伸ばし、リン、マキ、ゼロワンの順で手を重ねた。

 「紅の拳銃、ファイヤー!」

 「ファイヤーーー!」

 四人の士気が高まった。


 ---ふたたび地下三階


 「ゴーン ゴンゴンゴン ラホーイ」

 「水晶宮のイグアノドン」はまだそこにいた。

 四人をザコだと思い、待ち構えていたのだ。


 マキは準備運動を始め、キュルルはバリアー解除後の魔法攻撃に備えていた。


 「わ、私はどうすればいい?」

 どうのつるぎを無くしたリンは、手持ち無沙汰状態だった。


 「なんでもいい! 踊りでも朗読でもやって、とにかくヤツの注意をそらせ!」とゼロワンは指示した。


 ♪ゆっかいなおどりがはじ…


 「おどらないわよ!」リンは誰にともなくそう言った。


 「行くぜぃ、流星キッーーーク!」

 マキはそういうと、見事な跳躍力をみせ、イグアノドンの顔面にキックが命中した。

 予想外の攻撃にイグアノドンは驚き、バリアーを解いてしまった。


 「よし、行くぞ!」

 ゼロワンは稲葉ジャンプをトントンと二回繰り返し、三回めの跳躍からのクロスチョップをかけた!


 「ブラストエンド!」

 強烈な電撃と衝撃波が、イグアノドンの全身を内部から焼きつくした。

 こうして戦いは「紅の拳銃」の勝利に終わった。


 「あれ、爆発しないね。また手加減したの?」と、リンは不思議に思った。

 「ああ、あの()らにトロフィーを持たせてやろうと思ってな」

 ゼロワンは、いつもの不敵な笑みを浮かべた。


 ----カラヅカ


 「あわわわわ…」

 門の衛兵たちは驚きのあまり、チェックすることも忘れ、四人を素通りさせた。


 キュルルが浮遊魔法で「水晶宮のイグアノドン」の首を浮かせて、運んできたからだ。

 マキが日本刀を使って、胴体から切り取った代物である。

 内部から焼かれているので、死臭も無い。

 もちろん、ゼロワンとリンは人間の恰好に戻っていた。


 ----そしてギルド本部。


 「ほら、これでいいんだろ?」と、ゼロワンは木札を渡そうとしだが、受付のおねいさんはそれには目もくれず、カウンターを乗り越え、キュルルの荷物に近づいた。

 「こっ、これは『水晶宮のイグアノドン』!」

 「へへー、俺の『流星キック』でやっつけたんだぜ」とマキは自慢した。


 キュルルは受付嬢に尋ねた。

 「でも、初心者向けのダンジョンって言ってたのに、ラスボスがこれって、ちょっとキツくないですか?」

 「おかしいですねぇ。『ダコバの洞窟』は被験者のレベルに応じて、難易度が変わる魔法がかけられているんですが…」


 その言葉を聞いたとたん、三人はいっせいにゼロワンを指さし、

 「お前か~~~~~~っ!」と叫んだ。


 その時である!

 べこべこに凹んだ鎧を身に付けた、一人の戦士がギルドに駆け込んで来た。

 そして大声でこう叫んだ。


 「ドラゴンだ!ドラゴンが出た!」

 「それも『三つ首のドラゴン』だ!」


更新が遅くなってごめんなさい。

第2話はこれで終了です。

次の第3話は、ゼロワンとリンがタイムトラベルで恐竜の時代に行きます。

(このお話、恐竜が多いな…)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ