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モモンガー01  作者: 眠田 直
8/10

第2話:大いなる森への旅(3)

 ----奇妙な部屋だった。

 地下二階は、王宮の大広間ほどの大きさで、天井も壁も床もコンクリートで覆われていた。


 そして、なぜか中央に豪華なダブルベッドがドンと置かれていた。

 経験豊富なゼロワンも、さすがにこんな部屋を見たのは初めてだった。


 「紅の拳銃」の一行が中に進むと、入って来たトビラがピシャリと閉められた。

 「閉じ込められた?」と言って、マキが後ろへ振り向くと、トビラの上に表示板と警告灯を見つけた。


 「この部屋のクリア条件を発表します」

 明らかに人工音声と思われる、事務的なアナウンスが流れた。

 チーキュの鉄道案内によく使われる、反転フラップ式の表示板がパタパタと音を立てて切り替わると、そこにはこう掲示された。


 「セックスしないと出られない部屋」


 「なにーーーっ!」四人は同時に叫んだ。


 「話には聞いていたが、まさか本当にあったとは…」ゼロワンでさえ驚いた。

 そのためのダブルベッドだったのだ。


 「…それでは」キュルルが少し遠慮しながら、こう言い始めた。

 「ゼロワンさんとリンさんでお願いします。私たちは後ろを向いて、耳もふさいでますから」


 「ざーーんねんね! 冒険はこれで、お・し・ま・い」と、なぜかリンが勝ち誇ったように言った。

 「この人は獣人だから、発情期にならないと勃たないのよ~」

 「むむっ…!」ゼロワンは何か侮辱された気がしたので、リンを睨み付けた。

 その一瞬の隙を逃さず、キュルルはゼロワンに魔法を放った。

 「魅了!(チャーム)

 ゼロワンは正気を失った。

 「ななな、何を考えてるのよ、キュルル?」リンはうろたえた。

 キュルルは冷静に答えた。

 「…リンさんとマキが見ているところでするのは、ちょっと恥ずかしいですけど」

 「リーダーの責任として、私がゼロワンさんに抱かれます」

 「ええーーーっ!」リンとマキは動揺した。


 キュルルはためらうこと無く、服を脱ぎはじめた。

 その裸身は、まだ華奢で未成熟だったが、将来的には期待できそうな、綺麗なボディラインをしていた。


 「さ、行きましょ」キュルルはまだ朦朧としているゼロワンの手を引いて、ベッドの方に向かった。


 「おいおいおいおいおい!」

 「やめてやめてやめてやめてやめて!」


 その時、警告灯が点滅し、またアナウンスが流れた。

 「被験者の中に未成年者がいることが判明したので、クリア条件を変更します」

 そして、反転フラップ式の表示板がパタパタと音を立てて切り替わった。


 「サメを退治するまで出られない部屋」


 それを見たキュルルが「ちっ!」と舌打ちしたのを、マキは聞き逃さなかった。

 ダブルベッドは機械音を立てながら床下の奈落へと沈んでいき、左右から金属製の蓋が閉められた。

 ベッドの収納が終わると、天井角にある注水口が開き、オレンジ色の液体が勢いよく部屋に注ぎこまれた。

 「おいおい、今度は水責めか?」

 液体は早くもマキの膝元まで溜まってきた。


 その時、やっと正気に戻ったゼロワンは液体を手にすくってみて、三人にこう告げた。

 「これは『L.C.L.』だ。肺が『L.C.L.』で満たされれば、 直接血液に酸素を取り込んでくれる」

 マキとキュルルはすぐ対応できたが、リンはいつまでも「げほっげほっ」と苦し気に咳き込んでいた。

 「すぐに慣れるはずなんだが…」

 ゼロワンは「ほれっ」と言いながら、何度かリンの背中を叩いてやった。

 「これでどうだ?」

 「うう…。なんとか」


 そうこうしているうちに天井までオレンジ色の水が溜まり、反対側の入り口が開き、L.C.L.のプールの中に次々とサメが侵入してきた。


 まずは先兵となるヨゴレザメ。

 気性の荒いオオメジロザメ。

 独特の頭部を持つシュモクザメ。

 巨体を誇るイタチザメ。

 そして人食いザメの王者・ホホジロザメだ!


 まさに鮫!鮫!鮫!


 「さぁて、ここからは俺の出番だな!」

 マキは背中の日本刀を引き抜くと、神速無敵の早さでサメを次々と切り捨てていった。

 サメたちはマキに食らいつこうとしたが、彼女の機敏さについていけず、まさに無双状態となった。


 「マキ、そんなことをしたら血煙で前が見づらくな…」

 ゼロワンはそう言いかけたが、L.C.L.がサメの血を吸収していた。

 (なるほど。被験者のことを考慮しているのだな)と、ゼロワンは思った。


 「加勢しないの?」とリンは尋ねたが、

 ゼロワンはマキの戦いぶりに呆れつつ「もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな」と答えた。


 マキはホホジロザメの首をあっさりと切断すると、

 「どうしたどうした!これで終わりってことは無いよなぁ?」と煽った。

 すると扉の奥から「グララアガア、グララアガア」という声が響いてきた。

 「大ボス様のお出ましだな…」マキは戦いの緊張感に酔いしれていた。


 窮屈そうに扉から頭を出したのは…。

 「メガロドン」だ!

 この世界(ガロンドン・コア)の最大の鮫。

 いや、鮫と言うより、もはや魔物に近い。


 マキは「へへん。デカすぎて詰まっちまったのかよ」と不適な笑みを浮かべたが、

 「マキ!いったん戻れ。そいつは手ごわいぞ!」とゼロワンは警告した。

 メガドロンは「グララアガア」と声を上げ、口を開いた。

 その口の大きさは2メートル以上あり、マキの身長をはるかに越えていた。


 ぱくっ!


 「えっ?」三人とも一瞬の出来事に、思考停止してしまった。

 メガロドンがマキを丸呑みにしたのだ。


 「いやあああああああああ!」キュルルは悲鳴を上げた。

 「マキィィィィィィィィィィィィィィィィ!」


 しかし、今度はメガドロンの方に変化があらわれた。

 「グワア グワア グワア グワア」と鳴きながら、苦し気にのたうち回った。

 部屋の壁も崩れはじめた。


 メガドロンが動きを止めると、ザシュウッ!と内部から腹が破れる音がした。

 そこからゆっくりとマキが姿を表し、

 「見たか、これが『サメの腹破り』でいっ!」と、得意げに言った。

 「だけど、ドロドロになっちまったな」

 しかし、マキの身体に付いたメガドロンの体液や血は、急速にL.C.L.が吸い取ってくれた。

 「このオレンジ色の水、便利だな!」


 メガドロンが壁を壊したせいもあって、L.C.L.の排水は早かった。

 「げほっ、げほげほ」

 リンはL.C.L.を吐き出すのに苦労していた。

 最後まで馴染めなかったようだ。


 「マキィィィィィィィィィィィ!」

 キュルルはマキに抱きついた。

 「心配したんだから、心配したんだからぁ」

 「もう無茶はしないでよね」キュルルは涙を浮かべていた。

 「わかったわかった。そんなに泣くなよ」


 「あー、リーダー、感動の再会のところ済まないんだが」

  ゼロワンは二人に近づくとこう言った。

 「はい?」

 「そろそろ、服を着てくれないか?」

 その時、キュルルは初めて自分が全裸のままだったことを思いだした。


 「わっ、はい」

 さすがのキュルルも赤面していた。

 「ちょっと待ってください。すぐに身支度を整えます!」


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