6話 追いかける足音(完結)
帰り道、後ろからバタバタする足音が聞こえて振り向くと、ミヤチョが走ってきた。
「原田くん、アルクの早いよね」
ミヤチョは息を弾ませながら言った。
「どうしたんだ?」
「ちょっと原田くんと話したくてね」
「俺なんかと話したってつまんないぞ?」
すると、ミヤチョは僕の前に立ちはだかるように小走りで進んだ。
「つまんなくなんかない」
「・・・・」
「あたし、知ってる。原田くん、いつもがんばってた。テニスしてたときも、テニスやめてからも。どうしていいかわからないときって、あったと思う。誰にも言えなくて、でも、前に進めなくて。だから、原田くんは、いつだってがんばってたんだ」
「どうしたんだよ、急にそんなこと言って」
「急じゃないよ」
(それって、どういうことなんだろう?)
そう言えば、僕が辛いとき、いつもミヤチョがそばにいた。ミヤチョは、僕の一番つらかったときのことを全部知っていて、そんなとき、つい無愛想にしたり、あまりいい態度ができないことも多かったのに・・・
「覚えてる?原田くんに辛いことや悲しいことがあったら、あたしが守る、って言ったこと」
「ああ、もちろん覚えてるよ」
「あたしがそばにいる、っていったことも?」
「・・・ああ」
「もうすぐ夏休みだね」
「話が飛ぶなあ、ミヤチョ」
「つながってるよ?夏休みもそばにいるってこと」
「・・・ありがとう。俺、お前に今まで言いたくて言えなかったことがある」
「なに、あらたまって」
「俺が、誰かがそばにいてほしい、と思うとき、あたりまえのようにお前がそばにいてくれた。俺はあんまり表情が豊かじゃないからわからないだろうが、おかげで、ずいぶん元気になったぞ」
それを聞いているミヤチョの耳のあたりが、紅く染まっていくのを、僕は気づいた。
(完結)
拙い投稿ですが、そして、短い話ですが、ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
前を向けないときほど、本当は頑張っているときなんだ、それを理解してあげることが大切なんだ、というメッセージが込められています。
うまく伝えることができたでしょうか?