2話 金子先輩との出会い
窓の外から、そろそろ秋らしくなってきた、そんな風が流れ込んできた。そう、去年の今頃、僕は大切な人を失ったんだ。
入学したばかりの僕は、階段を登ってくる小柄な女子にすれ違いざまに声をかけられた。
「君、いいからだしてるね!きっとテニスが向いてるよ?」
後で知ったんだが、彼女は新入部員勧誘のノルマができなくて焦っていたらしい。だから、すこし適当なお世辞も含めて僕のことを誘ったのだろう。
彼女は、当時2年生の金子芽衣先輩だった。ちっちゃくて、かわいくて、そう、女子高校生らしい可愛らしさを体現したような少女だった。
なにか部活をしてみたいとは思っていたので、体験入部からすぐに入部の流れとなった。責任を感じたのか、金子先輩は、僕の指導には熱心だった。
「原田くん、そういえば、下の名前なんだっけ?」
「壮馬です。」
「それじゃ、壮馬くん」
(なんで呼び直すんんだろう?)
「壮馬くんはね、テニスのセンスあるよ?中学からやってた私が言うんだから間違いないよ」
言われたとおり、予言というのだろうか?僕は力をつけて練習試合でも勝ちをかさねていった。毎日がテニスで彩られ、テニスが楽しくてしかたなかった。
「練習は裏切らないよ、たくさん練習して、がんばってね!」
金子先輩の言葉に、僕は励まされた。そして、思った。
「金子先輩の期待に応えたい。金子先輩のために頑張りたい」
自宅の近所で、日課となっていたラケットの素振りをしていたとき、ひじに違和感を覚えた。その次に、激痛がはしった。ラケットを拾おうとしが、できない。
部活の仲間には内緒で、整形外科に診察に行った。医師の言葉に衝撃を受けた。
「ひじを痛めているね。テニスは、少なくても3年はやめたほうがいいよ」
(だって、僕は、金子先輩のために頑張りたかったんだ、それじゃ、僕の高校テニスは終わってしまう)