ひまわり畑の小人たち
1000文字ちょうどで書き上げる気持ちよさ!
にゃっふー!!
「なぁ、ひまわり減ってない?」
「変わらないよ」
と言ったのは隣に立っている友人だ。
亡くなった祖母から
『小人を見かけても見ないふりをしなきゃいけないよ。そして絶対に小人の邪魔をしてはいけない。小人が怒り、襲ってくるからね』
そんな話をよく聞かされた。
初めは1匹だった。
手のひらサイズの小人が、校庭に咲き誇るひまわり畑の足元で歩き回っていた。祖母が言っていたのはこれだったのか。ちょこちょこ動き回る小人が可愛くて微笑ましい。
祖母の言いつけを守って視線は向けず、それでも視野は小人を捉える。
翌日、小人は2匹に増えていた。そのまた翌日には3匹、日を追うごとに小人は増えていった。
小人が可愛く映らなくなったのは何匹目のときだっただろうか。ある日、小人達がひまわりを齧り始めたのだ。獰猛な笑顔で歯茎をむき出しにし、尖った歯でガジガジとひまわりを食べていく。
あれだけ立派だったひまわり畑も数日で半分ほどになった。
ひまわりがなくなっているにも拘らず誰も話題にはしていなかった。
「ひまわり、半分に減ってない?」
「なんの冗談だよ」
笑いながら友人が言う。小人が食べてしまったひまわりはみんなの記憶からなくなったらしい。というよりも初めからなかった扱いになっている。
その後も日に日にひまわりは減っていく。それでも周りの反応に変化はない。
小人がひまわりを食べる姿を見て思う。なぜ祖母は小人に対して見ないふりをしなければいけないと言っていたのだろうか。
邪魔をすれば襲い掛かってくるというのはよく分かる。この獰猛な小人が一斉に襲い掛かってきた場合、僕はなすすべもなく小人に体中を齧られてしまうだろう。
見ないふりをすることで小人の怒りを防げるとでもいうのだろうか。
ある日、ついに畑からひまわりがなくなった。
「ひまわり、なくなったな」
「そんなの咲いていたか?」
まるで最初から何もなかったかのような友人の反応。
目の前では小人たちが畑を歩き回っている。
そして、唐突に方向を変えこちらに向かってきた。
その光景に恐怖して後退ってしまう。
「どうした?」
振り返った友人の前で小人は立ち止まり、友人を囲むようにして再び歩き始めた。
それを見て僕は確信をする。
『見ないふりをするのは小人自体ではなく、小人がやることに対して見ないふりをしなければいけないのだ』
目の前では小人が友人の足を齧りだしていた。
これは見ないふりでもしないと精神的に耐えられそうもない。
評価、感想などいただければテンションが上がります。
どうぞよろしくお願いいたします。