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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

旅行の準備は「想像力」勝負!  ーTNstory

作者: 伊原みい

さて。何をつめようか。


ぼくは愛用の旅行バックを開けた。予定では、明日から約5日ほど。途中に仕事の用事があるけれど、自由時間が多くとれる今回の海外出張は、ぼくとしては旅行気分。日頃の激務を考えたら、会社もこれくらいのご褒美はくれないとね。


仕事柄、国内の出張は頻繁にあるから、だいたい持っていくものは決まっている。それらをぽいぽいっとボストンバックに投げ入れた。飛行機の時間、そこそこ長いから、クッションいるかなあ……。少し考えて、入れるのはやめた。


そもそもぼくはモノを持つのがきらいなタイプ。モノは必要最小限でいい。気に入ったモノを長く使う。日常生活がそうだから、旅行でもそれは変わらない。足りなければ、現地で買えば済む。


それにしても旅行日数を考えればこのボストンだと小さすぎるのに、これで済むのは恋人のせい……、いやおかげだ。

スマホを手にとって、コールする。

「……ター? 今、話せる?」

「なんだ? ちょうど手が空いたからいいよ」

「明日の荷物詰めた? 洋服まかせてもいい?」

「あ? 自分の分くらい自分でもてよ」

「いいじゃん。あー、調べたら結構寒いらしいから、あの黒い上着ももってきてほしいな」

「ああ。わかった、わかった。もってくよ。じゃあな。明日」


仕事中だったのか、さっさと切れる電話。ふふふ。これで準備は完了だな。


恋人のターは、ぼくと性格が真逆。心配性で、旅行になんでも持っていかないと気が済まないタイプ。今回も巨大なキャリーバックを用意しているに違いない。ぼくたちは身長がほとんど変わらないから、たいていの服はシェアできる。ぼくは予備の予備として揃えられたターの服を着ればいいから、ぼくの荷物はさらに少なくて済む。今、電話で伝えたから、きっとさらに多めに洋服をつめてくれるだろう。


あとはパスポート……と確認していて、ふとターが浮かんで、LINEを立ち上げた。

「ター、パスポート忘れずにね? 怖いから、明日、家出る前に持ったかどうか、メッセージ送って」

未読スルーが多いのに、珍しくすぐに既読がついて、OKのスタンプが送られてきた。


まあ…忘れっぽいターのことだ。このメッセージさえ、明日起きたら忘れている可能性がある。うちに迎えにきたら、まずはそこだけ確認しなくちゃ。パスポートを忘れて飛行機乗れないなんて、ギャクにもほどがある。なんであんなに、慎重で、準備も時間をかけてするのに、あんなに抜けているのか。


ぼくはもう一度、自分の荷物を見た。

ぐるっと見渡して考える。この前、ターが買ってくれた指輪、つけていこうかな。ぼくはチェストに向かい、引き出しを開けた。ペアリングなんて普段は絶対にしないけれど。今回の出張はごく限られた人しか参加しないし、寒くなってきて、厚着するから目立ちにくい……はず。


もらってから一度も、つけているところをターに見せていない。

ぼくは自分の手に指輪をはめてみた。シルバーに映える薄い青。さりげなく買ってくれたように見えて、ターのことだ。きっとすごく悩んでくれたに違いない。明日、ぼくがこれをはめていったら、ターはどんな顔をするだろう。


忘れものの多いターのことだ。明日に限って指輪を忘れてくることもあり得る。ぼくだけつけていたら、気合が入っているみたいで少し恥ずかしい。


でも、やっぱり。

ぼくは指輪をしていこう。むむむむ。自分の指輪に向かって念を送る。

ター! 明日もこれとおそろいの指輪、つけてきてよ。それと、洋服の中にぼくへ選んだ服を入れてきて。双子コーデなんかじゃなくていい。ターが選んでくれたター好みの服を着て、久しぶりに二人で旅行ができるたら、こんなご褒美、なかなかないから。


まずい……。ぼく、重症かな……。

こんなこと普段は絶対に考えないのに。いつもと違う、心浮かれたぼく。神さま、たまにはぼくに、ご褒美を。


(自分の想像力が足りなかった……けどそのままにします)

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