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お金の力で実家の近くに新駅作らせた話

作者: ふくろう

ステーキに肉じゃがとラザニア、ダイニングテーブルにはジャンルもバラバラ料理が所狭しと並んでいた。すべて明日から一人暮らしを始める桃を送り出すために作られたものだ。


「わぁー、美味しそう!全部食べきれるかな」

「食べ終わるまで家にいたっていいんだぞ。大学だってウチから通えなくもないんだし」


パパは桃の独り暮らし阻止をまだ諦めていない。実際、この家から大学も通えなくはないんだけど、


「駅まで自転車に乗っても30分も掛かるんだから、四年間毎日通うのは大変だって散々話したじゃないですか。桃が勉強に集中できるのが一番なんですから」

「車だったらすぐだぞ。俺が毎日、駅まで送るし」

「一年の半分は家にいないのに何言ってるんですか」


船乗りのパパは数カ月間海の上で働いて、数ヶ月間のまとまった休暇を家で過ごしてまた海へという生活を繰り返している。船に乗っていない間は基本的に家にいるから、交通の便は多少悪くても問題ない。不便な分、安く大きな家を建てられたから良かったといつも言っている。


「線路自体はすぐそこ通ってるのになんで駅がないんだろうな」


実際、最寄り駅は30分先だけど、その線路自体は家から100メートルも離れていない。だけど、その理由は明白だ。ウチの周りには他に3軒しか住んでないし、店も工場ももちろん娯楽施設も何にもない。高速や国道も近いので、車を使えば色々あるから住んでる分にはあまり困らないのだけど、ここに駅が出来たところで利用する人はいない。


「そうだ。忘れない内にこれ」


そう言って、ママが通帳を渡してくる。表紙には桃の名前が書いてあった。

残高は、一、十、百、千、万、、、100,000,000円!!!???


「四年分の家賃と生活費とお小遣い」

「だからって多すぎるよ」

「桃が稼いだみたいなもんだから取っときなさい。あなた小さいときから株のシミュレータで遊んでたでしょ。桃が買ってた株を実際買ってみたのよ。その結果がこのお金」


桃は自分の密かな趣味がバレバレだったことも気になったが、突然渡された大金への理解がまだ追いついておらず、それ以上何も言えなかった。


「それを元手にもっと増やして、ママに外車買ってくれても良いのよ?生活費だけは残しといて貰わないと困るけど」




大学に入ってから、半年。実際のお金での取引への興味もあって桃はママが言ってたとおり、あの1億円を元手に投資をしていた。そして残高は800倍になっていた。1億円の800倍、800億円。


桃は実家の近く、線路を挟んで反対側の土地を購入した。不動産投資にも興味が出てきたから。不思議なものでまとまったお金を持つとスケールの大きな買い物がしたくなってきたのだ。半年前の自分は土地が欲しいなんて考えたことも無かったのに。

実家近くなのは生まれ育った街への愛着以外には特に理由はない。


もともと何もない街なので、かなり広い土地を買ってもお金はかなり残った。

車の便はいいので、大規模なショッピングセンターの建物を用意して、テナントを誘致した。

ショッピングセンターを作るときに土地用途を変更するように役所に働きかけたときについでに隣接する土地の建設要件を緩和してタワマンを建てられるようにしてもらっていた。

土地用途お変更は、ショッピングセンターの桃の街への投資額やショッピングセンターからの将来の税収の話なんかしたら一発だった。

役所の財布を一切煩わせずに再開発してくれて、失敗しても桃の財産がなくなるだけとあって、役所は二つ返事だった。

タワマンは「こんな田舎にぽつんとタワマンあったら面白いよね」という、桃と役所の担当者のあんまり笑えない悪ノリだったけど。この時は、誰も実際にここにマンションが建つなんて誰も思っていなかった。

もしこの街に住みたい人が現れても、土地はいくらでも余っているので、最寄り駅から自転車で30分以上掛かるとこにあるマンション買うくらいなら戸建建てることを選ぶのが自然だったから。


ロードサイド需要を当て込んで、桃が建てたショッピングセンターに大手総合スーパーを核テナントに映画館や有名ブランドのアウトレット店などが次々と入居するようになると、鉄道会社から新駅設置が発表された。

新駅設置のニュースは大手マンションデベロッパーに新駅周辺の住宅需要の拡大に合わせて現地への進出を意識させるのに十分だった。

そして、桃と役所の担当者の悪ノリ当然デベロッパーは気づいた。あ、ここタワマンも建てられると。

タワマン建設が発表されると、鉄道会社は通勤需要を見込み新駅には急行や特急電車も停まる計画であると発表した。

交通の利便性が上がった桃のショッピングセンターにさらなるテナントの出店が決まり、早くも拡張計画が持ち上がった。



大学3年の夏。ついに新駅が完成した。計画が持ち上がってから開業まで異例の早さだったが急拡大する需要が後押ししてまずは仮説駅での営業スタートになった。これから数年かけて本格的な駅舎の建設が行われる。

実家から電車通学ができるようになった桃は、大学近くの下宿を引き払い実家に帰ってきた。


そして、ショッピングセンターからの莫大な家賃収入でパパとママといつまでも幸せに暮らしましたとさ。

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