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第81話 奪還作戦

「マッピングラビティ」


 帝都に入った僕が呪文を唱えるとステータスウィンドウに地図が出現した。

 施設名も表示された高レベルのマッピングだ。


 大聖堂まで首尾よく移動できた。

 大聖堂が兵士達の拠点になっていたら厄介だと思っていたが、その様子はなかった。


 僕達は礼拝堂に突入した。


「おや、あなた達は?」


 そこには、黒い司祭服を着た大柄な男性がいた。

 この人が大司祭だろう。


「エーメ=ガブリエル氏の指示でここに来ました」


 それで話が通じると、手紙には書いてあった。


「おお、あなたが……!」


 男性はこちらに近づいて来る。


「わたくしははリベン=バフォメットと申します。

 この教会の大司祭です」


 セントレール王国から伝わったのが光明教だ。

 その教会に王国の大臣である、エーメさんとの繋がりがあったようだ。


「エーメは今、クーデター軍に拘束されています」


「知っています。

 あの人からその時はあなたに会いに行けと」


「なるほど」


 リベンさんは周囲を見回した。


「念のため、奥へどうぞ。懺悔室でお話しましょう」


 僕達は大司祭の打ち明け話を聞くべく、懺悔室に向かった。


「ローゼンベルク公爵はどうやら皇太子殿下暗殺に大きく関わっているようなのです」


 黒騎士団と言えば、皇太子を守る立場であったはずなのに。


「なんでそんな事を?」


「皇帝陛下は帝国主義の方針を切り替えようとしています。

 植民地経営も切り上げ、軍団の規模も縮小する方針なのです」


 その話は聞いている。

 黒騎士団は仕事がなくなってしまうので反対しているとも。


「皇太子殿下の殺害は陰謀だと?」


「エーメ殿はその証拠の密書を手に入れました。

 わたしはそれを預かっています」


 その暗殺事件の証拠の密書なら、確かに重要だ。

 しかし、


「それよりエーメさんの拘束されている場所は分かりますか?」


 帝国内の陰謀より、まずエーメさんを救出したい。


「おお、エーメ殿を救い出してもらえますか?」


「はい、知らない仲じゃありません。

 無事に助けたいです。」


「よく言って下さいました。

 部屋の外へ。地図をお出しします」


 僕達は聖堂の祭壇の前へ。


 リベン大司教は祭壇に地図を広げた。それは帝都の全体図だった。


 まず大司教は、円形の城壁部分の東側を指差した。


「ローゼンベルク公爵はここから撤退を始めています」


 クーデター軍は逃げているのか?


「実際は別動隊と合流する事が目的です。

 彼の支持者は東の港湾都市に多い」


 戦地にいた部隊との合流、という事か。


「しかし、エーメ殿を捕らえたのは彼らではない」


 大司教は反対側、西側の城壁を指差した。


「その部隊を指揮官をしているのは公爵ではありません」


「では誰なんですか?」


「公爵の副官である魔法使い、グラム=モンテコックリ伯爵です」


 グラム=モンテコックリ……!

 以前僕に話しかけてきた謎の魔法使い。

 彼が帝都のクーデター軍を指揮しているのか。


「どうしてこの部隊はこんな所に?」


「エーメ殿の宿泊場所が王都の西側だった。


 ……我々の情報源との合流場所です」


 情報源と連絡が取れない、と伝言には書かれていた。

 その確認中に捕まったのか。


「彼らは密書の場所を聞き出したいはず。

 それまでは彼が殺される可能性は低い」


 大司教は封筒を取り出した。


「そして今のところ、彼らはありかに到達していない」


 密書の場所が知られたら、ここにクーデター軍が押し寄せているに違いない。

 ならば、まだエーメさんは無事な可能性が高いか。


「彼らは城壁の監視塔にいます。

 逃げ出すのは容易でしょう」


 いざとなったら帝都の外に逃れるのは容易だろう。

 エーメさんを連れて逃げられてしまうとまずい。


「帝都は建物が密集しています。

 見つからずに進める経路をお教えしましょう」


 目的の監視塔とその周辺の城壁は何しろ見晴らしがいい。

 高い建物の影を通り、警戒の目を逃れて接近しなければならない。

 そのためのルートを、リベン大司教は地図に書き込んでくれた。


 それは覚えにくい入り組んだ経路の上に、僕には土地勘もなかった。

 でも大丈夫。


「マッピングラビティ!」


 僕の視界に帝都の地図が出現する。


「マッピング」の魔法の効果だ。


 重力波で近くの燭台が押しつぶされたが、こればっかりはしりとり魔法の必要経費だ。


 僕が念じると、その魔法の地図に赤い矢印で、大司教の書き込んだのと同じ経路が出現する。

 マッピングの魔法はレベルが上がるとこんな事もできるのだ。


「ありがとうございます。

 行こう! カエデ、ウガガウ」


 こうして僕達は帝都の西側に向かった。

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