第79話 幸せな日々
「ご苦労様でした! リンクス殿、カエデ殿、ウガガウ殿!」
港町マイリスに現れた大渦の怪獣、カリュブディスを討伐した僕達。
「さすが我が街が誇るAランク冒険者。
いやあお見事! 実にお見事!
あっはっはっは!」
受付のイネスさんは元気なのがトレードマーク。
いつも豪快に笑う。
「カリュブディスをたった3人で撃破されるとは!
街からの追加報酬もありますぞ!」
報酬を受け取った僕達は、そのまま買い物へ。
「肉! 肉が欲しいぞ!」
ウガガウにリードされて向かうのは食料市場。
最近は報酬をもらった後は、食材を買うのが僕らのセオリーだ。
そのままカエデとウガガウの家へ。
そして、僕は食材を持って調理場へ。
「何か手伝う? リンクス」
「大丈夫。飲み物だけ用意したら休んでて」
僕は、かつて冒険者だけでは生活できなかった頃、料理の副業をしていた。
こういう時は僕の出番だ。
今は魔法を使って、加熱したりもしてる。
味付けやフレーバーの魔法もいくつか習得している。
ささっと手早く調理する。
「ドラゴンステーキの香草焼きです」
「ドラゴン! ドラゴン!」
ウガガウのはしゃぐ声がする。
料理をするにあたって気にしなければならないのは、ウガガウが野菜を食べたがらない事だ。
炒め物にして、肉と一緒に食べさせている。
帝国王宮でのレッスンのせいか、肉の切り分けは上手い。
元は森に住んでいた野生児だが、器用なものだ。
「ワイン、いる?」
カエデに勧められ、ワインを頂く。
ボトルは半分くらいしか残ってない。
こんな時は飲んで行く事が多いのだ。
僕はそんなに飲まないけどね。
「今日は泊って行く?」
「うん、そうだね……」
たどたどしく答える。
僕は飲むとすぐ眠くなってしまう。
ウガガウを挟んで三人で寝る。
こうしてカエデとウガガウの寝顔を見ていると幸せな気持ちになる。
冒険者としても波に乗っている。
今の生活は、気に入っていて、ずっとこうしていたいとすら思う。
……とは言え、心配事がない訳ではない。
僕は瞬きをした。
目の前にステータスウィンドウが出現する。
冒険者ランクの項目を見る。
「Aランク
いかなる困難な状況も突破する、広く名を知られた高名な冒険者。
その幅広い知識と経験で、人々の命と平和を守る」
そう。僕達は最近、Aランクに昇格した。
それはめでたい事ではある。
しかしそれは、強力な魔物との戦いが続いているせいなのだ。
今日はカリュブディスを倒したが、その前は巨大なたこの海獣、クラーケンを倒した。
海だけでなく、平地でも双頭の巨大犬、オルトロスを撃破した。
今日のドラゴンステーキだって、最近倒したから売られているのだ。
魔王が別世界である魔界の出入り口を作り、そのせいで魔界の強力な魔物が人間の世界にも現れる。
それは知っているのだが、もう魔王ティフォンが倒されて久しい。
そろそろ魔物が弱体化していいはずなのに、最近の方が活発な気すらする。
何か良からぬ事が起こっているのではないか。
マリスさんかルナテラスさんに相談した方がいいのではないか、そう思っている。
でも、最近マリスさん忙しそうだし、ルナテラスさんの新婚生活の邪魔もしたくないなあ。
と、考えていると、
「リンクス、起きてる?」
カエデも起きていたみたいだ。
「うん、ちょっと考え事」
「今日は大物をやっつけて疲れてるんだから、ちゃんと休んだ方がいいよ」
僕が頭の上に置いていた手に、カエデがウガガウ越しに伸ばしてきた手が触れる。
「そうだね、お休み」
僕はその手を握り返し、言った。
「うん、また明日」
カエデに心配させてもしょうがない。
まずはイネスさんに相談して、それからマリスさんと連絡を取ってみよう。
僕は眠る事にした。




