第64話 対決 ヴァンパイアロード
近付いて来るヴァンパイアの群れ。
「下がってろ」
ガレスさんが前に出る。
夕べもガレスさんがヴァンパイアの群れを防いでくれた。
安心して任せられる。
ただし、
「アイスエッジ!」
殺到するヴァンパイアの群れの後ろにはヴァンパイアロード、フローズンが。
奴も魔法で攻撃してきた。
氷の刃がガレスさんに迫る。
ガレスさんは、ヴァンパイア達と鍔迫り合いをしていて、対応できない。
「わたしが止めます!」
カエデが素早く射線に入り込み、氷の刃を叩き斬った。
「なかなかやるな。
ならばこの魔法ならどうだ」
マントを翻し、詠唱するフローズン。
「ブリザード!」
吹雪がカエデに襲いかかる。
こうなってくると、叩き斬るという訳にもいかない。
「それなら僕が!」
僕は両手の拳を握りしめた。
その後、まずは左手を開き、前に突き出す。
「マジックバリ……!」
そして、次に右手を広げ、突き出す!
「アンチエイジング!」
迫り来る魔法の吹雪を間一髪で防ぐ、マジックバリア。
「ありがとう、リンクス!」
ついでに、カエデに美容効果が発生するが、こればっかりは必要経費だ。
「思った以上に強力な魔法を使ってきやがる」
ヴァンパイアを防ぎながら、ガレスさんが言う。
確かにフローズンは魔法使いとして優秀だった。
僕もなかなか、攻撃魔法を繰り出す余裕ができない。
「うーん」
何か作戦はないだろうか。
「これは……、逃げましょう!」
僕は城を脱出する事を提案した。
「え? でもあいつを倒さないと……」
カエデが尋ねる。
近隣の村を危険から救うために来たのだから、ヴァンパイアを討伐しなければ意味がない。
それはもちろんそうだ。
「上手く外まで誘導すれば、日光を浴びせる事ができる」
ヴァンパイアは日光に弱い。
日光を浴びればは灰になってしまう。
「相手が外まで出なくても扉を開ければ日光は入って来る」
「なるほどな。一階まで逃げるか。
このまま分の悪い鍔迫り合いを続けるよりマシか」
ガレスさんも納得してくれた。
「俺がしんがりだ。
リンクス、お前は俺のサポートだ」
「分かりました!」
「カエデは一階の扉を開けろ」
「はい!」
ガレスさんはきっちり守りを固めつつ、後退。
僕も隙を見ながらディバインレインフェルノで攻撃し、敵の数を減らす。
「貴様ら、逃げるつもりか!
追え! しもべ達」
追跡を指示したという事は、こちらの思惑は読まれていないはず。
階段まで来るとフローズンの姿は見えなくなり、魔法攻撃は来なくなった。
その隙に一階まで駆け抜ける。
「開けました!」
カエデが外への扉を全開にしてくれていた。
僕らを追ってヴァンパイア達は一階へ。
城の外まで逃げた僕達。
そして、
「ギャアアアアアアアアア!」
日光を浴びたヴァンパイア達は灰になっていく。
「ふーっ、上手く行った」
僕は地面にぺたんと座ってしまう。
「しかし、ロードは追って来なかったな」
さすがにフローズンも追って来て、日光で撃破とはならなかったようだ。
「改めて中に入るか」
今度こそ三対一。
そう思っていた矢先だった。
「……何か聞こえませんか?」
カエデの声に耳を澄ます。
確かに、城の方から大きな音がする。
いや、音だけでなく、地響きを感じる。
慌てて城の方を見る。
最初は城が崩れているのかと思った。
しかし、そうではなかった。
城の各部が動いていた。
左右の尖塔の下半分が城のしたに潜り込み、上半分は前後に動いている。
上半分の底面の石が細かく分かれた。
まるで、手の指のように。
指の付いた尖塔は、まるで腕のよう。
尖塔の上半分が腕ならば、下半分は足だった。
果たして、その部分が交互に前に出て、歩行している。
三階部分の二つの窓が目のようにも見える。
城が人型に形を変えていた。
目のような窓がこちらを見下ろす。
「クックック……、外に出れば手出しできないとでも思ったか?」
城の中から声がする。
窓からフローズンの姿は見えない。
日の光の当たらない場所から制御できるのだろう。
「この城は我が友が残してくれた最後のゴーレムよ」
「ゴーレム、だって!」
ヴァンパイアの城は、巨大なゴーレムだった。




