第36話 新たなる旅立ち
魔王撃破のニュースは国中、と言うか大陸中を駆け巡った。
王都セントスにはエレインさんの銅像が建てられる事になった。
勇者の剣を天に掲げ、勇者の鎧と盾を纏った、堂々たる姿だ。
その竣工式で、僕はエレインさんとルナテラスさんに再会する機会を得た。
勇者の鎧と盾を身に付け、勇者の剣を下げたエレインさんだが、これらは試練の神殿に返す予定らしい。
今日は式典のために特別に装備したようだ。
そして、エレインさんの隣に寄り添うルナテラスさん。
本当に幸せそうな姿だ。
「リンクス君の『アンチエイジングッドラック』のおかげよ。
あなたの魔法のおかげで、エレインは魔王に勝利できた」
涙ながらに僕を褒めてくれるルナテラスさん。
「君のしりとり魔法が、本当に人と人を結び付けたんだ」
エレインさんもそう言ってくれた。
「いえ、そんなのはきっかけに過ぎません」
確かにアンチエイジングッドラックは、幸運の女神の微笑みまでも、アンチエイジング効果でパワーアップする優れものだ。
でも、そんな事は重要じゃない。
「ルナテラスさんの心の美しさが、エレインさんに力を与えたんです」
目頭を抑えるルナテラスさん。
「リンクス君、立派になったね。
あなたの力も決してユニークスキルだけによるものじゃないよ」
二人はこれから旅立つようだ。
エレインさんの故郷は、試練の神殿の途中にあるらしい。
勇者の装備を返還してから、二人は結婚するようだ。
それから、王都セントスの冒険者ギルドにも勇者の像が。
これはエレインさんがSランク冒険者になったからだ。
Sランク冒険者になれたのは、歴代の魔王を倒した勇者のみらしい。
ギルドはエレインさんのネームプレートの下に、ステータスウィンドウのSランクの文言を転載した。
「Sランク
神命を果たし、世界を救うもの
救世主のみが到達する最高の栄誉」
おそらく勇者に会えるのは一生に一度。
Sランク冒険者に会えるのも一生に一度だ。
Sランク冒険者の誕生に立ち会えたのは素晴らしい事だ。
この像とネームプレートは、各地のギルドにも設置されるらしい。
港町マイリスでも、今頃イネスさんが対応しているだろう。
「じゃあ戻りましょうか、リンクス」
「海を見るのは楽しみだぞ」
僕らはそのマイリスに帰る。
ルナテラスさんが預かっていたウガガウは、カエデが引き取る事になった。
これからは三人で、平和な世界を冒険して回ろう。
僕らは意気揚々と、王都セントスを後にしたのだった。
◇◆◇
その頃、王城では国王ラウール三世に、勇者一行の魔法使い、マリスが謁見していた。
玉座の間ではなく、国王の自室に招かれての事だった。
「話を聞かせてもらおう」
マリスが国王に人払いを願い出たのだった。
「恐れながら報告いたします」
恭しく一礼するマリス。
「これは高レベルのマッピングを使ったルナテラスが確認した事ですが、あの魔王の城はティフォンが作ったものではありません」
「どういう事だ?」
「石造りの城壁は上層のみです。
その下層には見た事のない空間が広がっていました。
奇妙なすべすべした張り紙で覆われた空間です。
魔王は発掘した建造物の上に城を建てたのです」
「古代文明の遺跡、か?」
「そうです。
異変に気付いたルナテラスが改めてマッピングを使ったのです」
高レベルのマッピングは施設名をステータスウィンドウに写し込む。
「あの城の本当の名前は『国際連邦センター』です」
「なんだと!?」
ラウール三世は驚愕の声を上げた。
まるで幽霊でも見たような、青ざめた表情になっていた。
「昔話に出てくる、あの『国際連邦センター』の事か!」
「はい」
マリスは淡々と話すように心掛けていたが、その声は震えていた。
「古代文明の虚栄と傲慢の象徴。
神の怒りを受け、古代文明が滅ぶ原因となったあの『国際連邦センター』です。
幸いにして、魔王には調査を進める時間はなかったようです」
「分かった。秘密裡に調査団を派遣する。
リーダーを引き受けてもらえるな」
「かしこまりました」
もちろんとばかり、大きくうなずくマリス。
「我が領内であれが見つかるとは」
魔王が倒されようやく受難の時が終わったと思っていたラウール3世だったが、大きくため息をついた。
「なかなか厄介事がなくならんものだ」




