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第32話 男と男の話

 山岳地帯で一夜を明かす事になった僕達。

 熟睡するウガガウに僕は上着を掛けた。

 エレインさんとたき火を囲む事に。


「君は変わった魔法を使うね」


 やはりエレインさんも僕の魔法が気になるようだった。


「しりとり魔法です」


 僕は手短に効果を説明した。


「そうか。君もユニークスキルを」


 ユニークスキル持ちはとても珍しい。


「このスキルのおかげでFランクから脱出できたんです」


 大げさな話でも何でもなく、しりとり魔法がなかったら僕はFランク冒険者のままだった。

 それどころか冒険者でいられなくなってた可能性が高い。


「ユニークスキルはどれも強力だ。

 それにそれぞれの生き方を象徴している」


「生き方、ですか?」


 それは初めて聞いた話だ。


「わたしの『知勇兼備』も、昔から文武両道たらんとして生きてきたからだ」


 そう言えばガレスさんとマリスさんのユニークスキルも、うってつけと言うか、能力に合ったものだ。


「ガレスは人々を守る。

 マリスはその叡知で人々を導く。


 ユニークスキルを持つものはそれぞれに役割を帯びているんだ」


 うーん。だとしたら、しりとり魔法は僕の生き方なのか?

 しりとり魔法の生き方ってなんだろう?


「君はきっと人と人を、しりとりのように結び付ける。

 君も大きな役割を帯びているはずだ」


 何だか、上手く乗せられた感じもする。

 この人の気品がありつつ堂々とした口調で言われると、説得力があるのが不思議だ。


 その後、彼のこれまでの冒険や勇者に選ばれた経緯、神々の試練についての話を聞いた。

 それでも夜は長い。


「君も少し寝るといい」


 エレインさんが僕を気遣ってくれたが、僕はすぐには答えなかった。

 そして、


「相談したい事があるんです」


 相談できる人が普段いなくて、エレインさんには話せると思った。

 このチャンスを逃すべきではないと思った。


「あ、その……、疲れているならいいんです」


「いいよ。聞こう」


 ドキドキしてきた。

 でも、もう後には退けない。


「エレインさんは恋愛した事ってあるんですか?」


「あるよ。勇者になる前だがね」


 今そんな話をするな、と言われないか不安だった。

 でもエレインさんは驚きはしたが、怒ってはいない。


「君は恋をしているのかい?」


 そう、優しく尋ねてきた。


「はい。気になっている人がいます。

 でも告白するかどうか迷ってるんです」


 優しい表情のまま、思案しているエレインさん。

 そして、


「おいおい。なんだよ」


 エレインさんの声のトーンが変わった。


「面白そうじゃないか。聞かせろよ」


 目がキラキラ輝いている。

 クールな紳士のイメージだったが、意外とグイグイ来るなあ。


「じゃあ今日は男と男の話だな」


 こうして僕は恋愛相談をした。

 ルナテラスさんの名前は出さなかった。


 ただ七歳上の女性と言ったら、


「過去の男と比べられる気はするな」


 と言われた。

 そういうものなのかな。


「やっぱり無理かなあ」


「いや、もやもやするなら告白してみればいいさ。

 そう邪険にもされないだろう」


「すみません。

 勇者に向かってこんな話」


「いやいや、いくらでも聞いてくれ」


 本当に楽しそうに言うエレインさん。


「しかし、すでに恋人がいるなんて事、ないだろうな?」


「今はいないって言ってました」


「よし。

 情報集めは大事だぞ。そもそも……」


 親身にに答えてくれるので、僕もいろいろ聞いてしまう。

 その夜、僕達は男と男の話をして過ごした。


 目が覚めるとウガガウとギャオスが狩りから戻ったところだった。


「朝食を取ったら王都に戻ろう」


 みんなも心配しているだろう。


「ここ最近、殺伐とした気分だったが、君のおかげでリフレッシュできたよ」


「こっちこそ相談に乗ってもらっちゃって」


 元気になったギャオスに乗って、僕達は王都セントスに帰ったのだった。


 僕達のファフニル撃破の報告は王都セントスを駆け巡った。

 銀狼をのぞく最後の四天王が撃破されたという事は、あとは魔王本人との直接対決だけだ。


 しかも、勇者エレインは勇者の鎧と盾も手に入れている。

 勝利の予感に王都中が沸いていた。


「心配しました!

 リンクス。ウガガウちゃんも」


 王都ではカエデが待っていた。


「ギルドの手配で高級な宿屋に泊まれるんですよ!」


 ファフニルとの戦いに参加した冒険者への粋な計らいらしい。


「あ、そうだ!

 ステータスウィンドウを見て下さい」


 きっとランク、上がってます。

 わたしも上がってました!」


 僕は意識を集中して瞬きをした。

 目の前の青いの枠の付いた、透明度のある黒い板が現れる。


「Cランク

 困難な依頼も解決に導く。

 パーティの柱石とも言うべき存在」


 ランクも上がって、魔王撃破の準備も整った。

 後はエレインさん達に任せるばかり。


 たまには高級な宿屋でゆっくりしよう。

 あ、でも、せっかくだから王都見学もしたいなあ。

 多少は蓄えもできたし、ちょっとくらいぜいたくしたっていいはずだ。


 勝利の余韻と勝利の予感。

 そして、初めての王都に僕は気分が高揚していた。

 ワクワクが止まらなかった。


 この時は。

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