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第25話 一悶着(後編)

「何しに来た、リンクス」


 ベルナールに睨みつけられる。


「みんなの迷惑になるから、ケンカは止めようよ」


 彼は僕の腕を払った。


「俺達と別れた途端、ランクを上げたらしいな」


 そして、また睨みつけられる。


「ふん、俺達が足手まといだったか?」


「そ、そんな事はないよ」


「そうだよなあ」


 語気を強めていくベルナール。


「足手まといはお前だったよなあ?!」


「そ、それは……」


「お前じゃない奴と組んでいれば、今頃パーティーのメンバーを探したりしてない。


 お前のせいだ。お前がいなければ俺達はもっと上を狙えた」


 僕の胸ぐらをつかむベルナール。

 気が付いたらケンカの相手はいなくなっていた。


「お前がいなければ、今頃俺は実積を重ねて、聖騎士団に入ってたかも知れない!」


 僕は何も言い返せない。

 ベルナールが聖騎士団に入る夢を持ってた事は知っている。

 僕と組んでいなければ、彼の夢は叶っていたのだろうか。


「自分がいい調子だからって、俺達を笑いに来たのか?」


 そんな訳はないけど、言い返す事はできなかった。

 僕は下を向いて黙っていた。


「国王からの依頼も受けたそうだな!

 俺達の役には立たなかった癖に!」


 グイグイ揺さぶられてる。

 口ケンカの時より人が集まって来た。

 カエデやウガガウも心配そうに見てる。


 いよいよルナテラスさんもやって来て仲裁に入ろうとしてた矢先だった。


 僕をつかむベルナールの腕をねじりあげる太い腕。


 巨漢の戦士、ジョゼフだった。


「いい加減にしろ!」


 そして、ジョゼフはベルナールを殴り付けた。


 吹っ飛んだベルナールはテーブルにぶつかる。

 食器やなんかが落下して、大きな物音が起こる。

 もはや、ギルドの全員が注目している。


「言い掛かりもいい加減にしろよ。

 俺達の事は俺達の問題だ。

 リンクスは関係ない」


「何をするんだ、ジョゼフ……!」


「お前は俺達には言ってないが、王都に行って、聖騎士団の入団試験を受けたよな」


「どうしてそれを……」


「俺の親戚が王都で兵士をやってる。

 お前の事も知っているんだ」


 すでにベルナールは試験を受けた事があったのか。


「お前が受からなかったのは、その短気な性格のせいだ。


 いや、お前だって自覚があるだろう」


 ベルナールは答えない。


「俺達がDランクなのは俺達自身の実力だ。

 リンクスには何の責任もない」


 ここでジョゼフが「俺達」と言った事には、一つの違和感があった。

 しかし、その理由はすぐに分かった。


「ぼちぼち潮時だ。

 俺とドニーズは田舎に帰る」


「な、何を言ってるんだ?」


 驚きの声を上げるベルナール。


 しかし、ここでシスターのドニーズが立ち上がった。

 ジョゼフの肩に手を置く。


「田舎に戻って、俺達は結婚する」


「赤ちゃんができたの」


 ドニーズはお腹をさすっている。


 僕も驚愕した。衝撃の事実だった。


「俺達は冒険者に向いてなかったんだよ。

 じゃあな、ベルナール」


 そして、二人は僕の前へ。


「お前も気を付けてな。

 たまには戻って来いよ」


「あなたは頑張ってね、リンクス」」


「う、うん。

 おめでとう……」


 ジョゼフとドニーズが立ち去って、散らかったお店の片付けを手伝った。


 その後はルナテラスさん達に状況を説明。


 落ち着いたところで、ベルナールの事が気になったが、すでに姿を消していた。

 ギルドの誰も彼の行方は知らなかった。


 今までだって罵倒されてきたし、今回も乱暴に扱われた。

 しかし、4年間Fランクのままで、迷惑をかけてきた事実はある。


 こんな決別の仕方はしたくなかった。


 ◇◆◇


 ベルナールはその時、呆然と街の外を歩いていた。


 その心は怒りに煮えたぎっていた。

 どいつもこいつも気に食わない。


 おれの入団を拒否した聖騎士団。


 言う事を聞かない新しい仲間。


 自分を見限り、田舎に帰る事を決めたパーティーの仲間達。


 そして何より、四年間ずっとお荷物だったのに、追放した途端に、ユニークスキルとやらでランクを上げ、Dランクに並んだあいつ。


「リンクス……!」


 あいつのとぼけた顔を思い出すだけで、また怒りが蘇る。


「リンクス=リーグルゥゥゥゥゥ!」


 全身の血が沸き立ってくるようだった。


「おい、お前。

 この先は帝国領だ。引き返せ」


 不意に声をかけられる。

 王国の兵士だった。


 東に歩き過ぎたようだ。

 国境に壁などはないが、見張りはいるし、物見やぐらも立っている。


「最近物騒なのは分かってるだろう」


 戦争になるかどうかの状態だ。

 もちろんそれは知っている。


「黒騎士団の連中も気が立ってるから、近づかない方がいいぞ」


 ふん。いっそ戦争にでもなってしまえ。

 ベルナールは思った。


 自分を認めなかった聖騎士団も王国も滅んでしまえ。


 王都も港街も黒騎士団に滅ぼされればいい、黒騎士団に。


 黒騎士団…………、


 そう言えば黒騎士団は実力主義で、入団自体は誰でもできると聞いた事がある。


 俺が黒騎士になるのはどうか。

 コケにした連中を見返してやるのだ。


 いや、さすがに祖国に弓を引くなど。

 ベルナールは逡巡した。


 しかし、それならどうすると言うのか。

 仲間に去られ、路頭に迷った俺のこの状態を、誰が救ってくれるのか。


「おい、待て! お前っ!」


 気が付いたら駆け出していた。

 見張りを振り切り、帝国領をさらに東へ。


 リンクスの奴が、パーティーを追放されてからのし上がったのなら、おれだってやってやる。


 鎧も脱ぎ捨て走る。

 黒騎士団に入って、おれを認めなかった連中に目にものを見せてやる!


 目指すは帝都、ツェンターム。


 かつて聖騎士を目指した男は、黒騎士になるため、駆けていた。

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