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第22話 お前を倒すしりとり魔法は決まった!

 ついに見えて来た紫色の人影。


 僕の魔法とカエデさんの魔封剣で狐火は確実に減っている。

 フーヤオとの距離は縮まっている。


「くっ、追いついて来おったか!」


「ディバインレインフェルノ!」


 直線の軌道を描くディバインレイが、狐火を薙ぎ払い、一直線にフーヤオへの道を開く。


「今です。カエデさん!」


 カエデさんの素早さならフーヤオに斬り付けられるだけの道筋を作ったのだ。


「やあああああ!」


 一瞬でフーヤオに肉迫するカエデさん。

 勝負は決まったと思った。


「ぐっ……!」


 カエデさんはポントーを振り上げたまま、固まってしまう。


「ホホホホホ!

 こけおどしか」


 フーヤオは至近距離から狐火を放ち、カエデさんは吹っ飛ばされた。


「カエデさん!」


 僕は駆け寄ってヒーリングラビティで治療を行った。

 カエデさんはポントーを地面に突き立て、泣いていた。


「やっぱり……、生身はダメ……」


 何か言っていたがよく分からなかった。


「カエデちゃん!

 ケガはない?」


 ルナテラスさんも駆け寄って来る。


「治療はしました」


「そう。無事ならいいの」


 ルナテラスさんはカエデさんを抱きしめていた。


「大丈夫よ。大丈夫」


 あと一息でフーヤオを倒せたが、カエデさんの抱えている問題は根が深いようだった。


「ホホホホホ……。

 わらわの魔力なれば、ほれ」


 新たに大量の狐火が出現する。


「狐火などいくらでも作り出せるのじゃ」


 フーヤオは僕のようにMPを消費しない訳ではないだろう。

 おそらくMPの数値が恐ろしく多いのだ。

 300だろうか。400だろうか。


「ホ~ッホッホッホ~~~♪」


 勝ち誇るフーヤオ。


「これじゃあキリがないぞ」


 ウガガウがへたり込む。


「くぅぅ、わたし……、わたしが……」


 カエデさんも膝を付いている。


「まずいわ。これは」


 ルナテラスさんは空を見上げた。

 見れば、日が暮れかかっている。


「なぜ逃げ回っているのか分からなかったけど……。

 あいつはきっと月が出るのを待っている」


「月が出るとパワーアップするんですか?」


 何しろ300年、月の光を浴びて、膨大な魔力を得た妖怪なのだ。


「するでしょうし、恐らく体力や魔力も回復するんじゃないかな」


 この上、回復なんかされたら、らちが明かない。


 フーヤオを倒せなければ、銀狼エカテリーナと同盟できない。

 同盟できなければ魔王を倒すのも困難だし、帝国の脅威も残ったままだ。


「フーヤオさん!

 聞いて下さい!」


 僕は思わずフーヤオに話しかけていた。


「帝国がこの森も、王国も狙ってます。

 このまま魔王に味方し続けると大陸全体が大変な事になるんです」


 僕はフーヤオの説得を試みた。

 大陸全体の情報を教えれば、危機感が伝わると思ったのだ。

 しかし、


「ホホホホホ……!

 その混乱こそ好機になろうというもの。

 結構な事じゃ」


 フーヤオはその状況を喜んでいた。


「わらわがあのにっくき銀狼に取って変わる日も近かろう。


 魔王めも操ってこの大陸をわらわのものにしてくれる。

 ホホホホホ!」


 フーヤオはその過程でどれだけの人が苦しむか、一顧だにしていなかった。

 自身の欲望を満たすために、大陸に混乱を招く事を何とも思っていなかった。


「……許さない……」


 僕はフーヤオをきっと見据えた。


「もう容赦はしない!


お前を倒すしりとり魔法は決まった!」


 僕はは左手を開き、前に突き出す。


「させぬわ!

 狐火よ、行け!」


 僕目掛けて無数の狐火が飛んで来る。


「借りるよ!」


 膝を折っているカエデさんの前に突き立てられていた、ポントーを手に取る。

 その刃にはまだ魔封剣の白と黒の輝きが残っていた。


 それを前にかざし、向かって来る狐火を弾く。


「くっ!」


 全てを防ぐ事はできず、僕は火傷を負うがそんな事はどうでもいい。

 ほんの一筋の道さえあればそれでいい。


 正面にかざしたポントーが狐火を消滅させたその先に……、


「見えた!」


 紫色のフーヤオの姿が現れる。


 僕はポントーを手放し……


 左手を開き、前に突き出す。


「アンチエイジン……!」


 そして、次に右手を広げ、突き出す!


「グラビティー!」


 重力波がフーヤオの動きを止め、そこにさらにもう一つの魔法の輝きが炸裂する!


 フーヤオの肌と髪の色が紫色から、いわゆるきつね色に変わっていく。

 そして、背丈が縮み、抑揚のある豊満な肉体もなだらかになっていく。


「リ、リンクス君。これは一体?」


 ルナテラスさんも何が起こったか把握できていないようだ。


 加齢効果を打ち消すアンチエイジングの魔法だ。

 月の光を身体に300年集めたならば、その効果を打ち消せばいい。


 周囲の狐火も消えていく。

 僕の作戦は成功したようだ。


「さあ観念するんだ」


 僕はフーヤオに近づいていく。


 アンチエイジングラヴィティの効果はバツグンだった。

 あれほど妖艶な美女だったのが、五歳くらいの女の子になってしまったように見える。


「うわーん!」


 そのフーヤオは僕に体当たりして来た。


「ばか! ばかー!」


 両手の拳で叩いて来るが、痛くない。

 こうなると頭に狐の耳の生えたただの女の子にしか見えない。

 もう魔法は全く使えなくなったようだ。


「三百年間、月の光を浴びたのにぃぃぃ!」


「ア……アンチエイジングってこういうものなの?」


 ルナテラスさんは、茫然としている。


「月の魔力による成長だから、魔法によるアンチエイジングの効果はバツグンなんです!」


 多分……。


 でも、こんなに若返るとは思わなかった。


「ひどいよー! ひどいよー! うわーーーん!」


「ご、ごめん。

 でもこれ、健康と美容にはすごくよくって。

 紫外線の肌へのダメージや、ホルモン分泌のケアもやってくれて……」


「うええええん!」


「む、むしろ、今一番オススメしている奴で……」


「ばかばかばかばかばかー!」


「デトックスとか、ホント凄くて……」


「うわああああああああああん!」


 なだめてもまるで泣き止まない。

 結局、狐に姿を変えて森を走り去ってしまった。


「……勝ちました!」


 仲間達を振り返ったがみんな、きょとんとしていた。


 その後は銀狼エカテリーナの元へ報告に戻ったのだが、フーヤオを「討ち取れ」という言い方をされていた事を思い出す。

 改めて探すのも困難だし、今のフーヤオを殺すのは心苦しいなあ。


「おほほほほ……。

 あなたは変わった魔法を使うのですね」


 しかし、報告を聞いた銀狼は笑っていた。

 神獣とも妖怪とも言われる森の主の意外な姿だった。


「これでフーヤオもそうそう悪さはできないでしょう。

 ご苦労様でした。


 もうわたしが魔王ティフォンに手を貸す事はありません」


 これで依頼は完了した。

 銀狼の信用を得る事ができたようだ。


 ただし、


「もしもあなたが、フーヤオに使った魔法をわたしに使おうとしたら、喰い殺します」


 と、釘を刺された。


「今夜はゆっくり休みなさい」


 すっかり夜になっていたし、みんなクタクタだった。

 原初の森の最深部、巨大樹の根本で僕らはゆっくりと……、


「ワオーン!」


「ワッオーーーン!」


「ウッガッガー!」


 休む事などできなかった。

 ウガガウと狼達の宴は夜通し続いたのだった。


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