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第21話 カエデ魔封剣

 化け狐、フーヤオに操られていたワイバーン、ギャオスをしつけなおしたウガガウ。

 彼女と僕は森の奥へ。

 ルナテラスさんとカエデさんに合流しなければ。


 少し進むと、遠くに無数の紫色の灯火が。

 それはフーヤオを連想させる紫だった。

 二人は立ち往生していた。


「ルナテラスさん!

 この光は?」


「フーヤオの妖術なの。

 狐火って呼んでた」


「がおおー!」


 狐火にとっしんして行くウガガウ。


「あちぃっ!」


 熱を発するのか。

 接触して、飛び退くウガガウ。


 しかし、木々が燃やされる気配はない。

 少なく見積もっても50を超える炎だ。

 木が燃えるなら、とっくに火災になっている。


 妖術で作った魔法生物とでも言うべきだろうか。


「来るわ!」


 狐火達が襲いかかって来る。


「わあっ!」


 みんな上手くかわすが、僕は腕に喰らってしまう。

 残念ながら、僕が一番運動能力が低い。


 ローブは無事なのに腕には火傷の後が。


「武器で攻撃しても効果がないの」


「あっしの剣技も通りやせん」


 ルナテラスさんとモミジさんもいろいろ試したようだ。

 物理攻撃は通用しないようだ。


「リンクス君。魔法で攻撃してみて」


「はい!」


 この霊魂のような不思議な性質の敵に効果のあるしりとり魔法は……。


 僕はは左手を開き、前に突き出す。


「ディバインレ……!」


 そして、次に右手を広げ、突き出す!


「インフェルノ!」


 神聖なる光の矢を飛ばすディバインレイの魔法。

 そして、魂を焼くと言われる地獄の業火、インフェルノの魔法。


 光と闇の属性を一度に操る強力なしりとり魔法、「ディバインレインフェルノ」だ。


 光の矢と黒い炎が飛んで行き、狐火を焼く。

 狐火は消滅していく。

 どちらの魔法も効果ありだ。


 ちなみにこれらの魔法も森に火を点ける事はない。

 狐火と同じ性質の魔法攻撃なのだ。


 僕が先頭に立って、ディバインレインフェルノで道を切り開く。

 それにしても数が多い。

 しかも、狐火は次から次へと生成されているようで、一向になくなる気配がない。


「そうだ。モミジちゃん!

 魔封剣よ!」


 ルナテラスさんが思い出したように叫ぶ。


「あなたのスキルの中に、魔法の力を武器に宿す、魔封剣があったはず」


 ルナテラスさんは能力診断で、僕やカエデさんのステータスウィンドウを閲覧している。


「リンクス君の魔法を剣に宿せば、モミジちゃんも狐火が倒せるんじゃ?」


「……無理でさあ」


 モミジさんのリアクションはイマイチだった。


「ルナ先生、あっしのステータスを見やすか」


 ルナテラスさんはモミジさんと顔を見合わせた。

 相手の瞳を見て、ライブラリの魔法を使っているんだろう。


「本当だ。『魔封剣』のスキルがない」


「あっしはカエデのできる事が全てができる訳じゃあないんでさあ。

 特に精神に関する事は苦手なんですよ」


「じゃあカエデさんに魔封剣を使ってもらって、またモミジさんになるってのは?」


 ディバインレインフェルノの合間で、僕は提案してみた。

 何とかこの状況を打開したい。


「分かりやした。

 カエデに戻りやす」


 モミジさんが目をつぶる。

 そして目を開けると、辺りを心配そうに見回し始めた。

 カエデさんに戻ったのだ。


「カエデちゃん、実はね」


 ルナテラスさんがカエデさんに事情を説明する。

 僕はこの間も、ディバインレインフェルノを連発していた。


「頑張れー! リンクスー」


 ウガガウはやる事がないので、僕を応援している


「なるほど。魔封剣を」


 説明が終わって、カエデさんもうなずいている。


「リンクスさん、わたしに魔法を」


「攻撃魔法をそのまま?

 危なくない?」


「大丈夫。それが魔封剣です」


 断言するカエデさん。


「このポントーを狙って下さい」


 そして、ポントーを抜く。


「じゃあ、いくよ!


 ディバインレインフェルノ!」


 カエデさん目掛けてしりとり魔法を放つ。


 光の矢と黒い炎がポントーに命中する。


「魔封剣、練成!」


 僕の魔法が竜巻のようにポントーに巻き付いていく。

 カエデさんの長いポニーテールが巻き上がる。

 そして、魔法の力が刀身に収まっていく。


「聖焔剣!」


 ポントーが、稲妻のように白と黒の光を纏っている。

 魔封剣が完成したようだ。


 後はモミジさんに戻れば。


「待って」


 カエデさんだった。


「魔封剣は練成を維持しながらじゃないと使えません」


 ポントーを見ながら言うカエデさん。


「今も練成を維持するために、精神集中しています。

 モミジにはきっと使えません」


「ええっ!

 せっかくディバインレインフェルノをかけたのに!」


 それではどうすればいいんだろう。


「……わたしがいきます」


 カエデさんはポントーを上段に構えて言った。


「大丈夫かい?」


 今まで怖いと言って震えていたカエデさんだけど。


「わたしだって、みんなの役に立ちたいです!」


 よく見ると今も震えているようだった。

 彼女もなけなしの勇気を奮っているのだろう。


「分かった。お願い」


「はい!」


 カエデさんが狐火に向かっていく。

 白と黒の稲妻を纏った一振りが、狐火を一度に数体切り捨てる。

 そこから中断に構え、周囲の狐火の位置を確認する。


 次の瞬間にはカエデさんは新たな集団に斬り込んでいた。

 いや、白と黒の軌跡が動いたと思うと狐火が大量に消滅していた。


 僕はポントー術には詳しくない。

 でも、彼女の目にも止まらない彼女の剣技の凄さは理解できた。


「よし。一緒に進もう」


「はい!」


 僕の魔法とカエデさんの魔封剣で狐火を倒しながら前に進む。

 そうこうしている内に前方に紫色の人影が見えて来た。


 ついにフーヤオに追い付いたのだ。

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