表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/124

第20話 ウガガウVSワイバーン

 ついに姿を現した化け狐、フーヤオ。

 頭に獣の耳の生えた、妖艶な女性の姿をしている。


「ホホホホホ。

 ここはわらわ、フーヤオの縄張り。

 すぐに引き返すがよいぞ。

 手駒を減らされたのは口惜しいが、今なら見逃してやろう」


 手駒なんて言い方をしているのは、さっきの魔物も、魔王軍に加えるために操っていたからかも知れない。


「この先に進むなら容赦は……」


 ワイバーンの上から見下ろすフーヤオだが、ここで彼女の言葉が止まる。


「む……? お主は銀狼の育てておる……」


 ウガガウを凝視している。

 そして、目を一層細めると、


「ホホホホホ……、なるほど。

 銀狼の差し金じゃったか。

 ホホホホホ」


 フーヤオはワイバーンから飛び降りた。


「ならばわらわを追って来るがよい」


 そして、ニヤリと笑って指をならした。

 するとワイバーンが滑空して、こちらに向かって来た。


「そやつを倒せればな」


 そう言うと彼女は、紫色の狐に変身して、森の奥に消えていく。


「逃がす訳にはいかない!」


 フーヤオを追いかけようとしたルナテラスさんだが、


「くっ!」


 途中の木々のまばらな場所でワイバーンが体当たりをしかけて来た。

 間一髪でかわすルナテラスさん。


「この先も開けた場所はあるみたい」


 マッピングの魔法でルナテラスさんのステータスウィンドウには周辺の地図が表示されている。

 僕もマッピングラビティで同じように確認できる。


 僕らは森の深い部分に退避したが、ワイバーンは上空をぐるぐると偵察している。

 ワイバーンに狙われながらの追跡になるだろう。


 そんな中、


「ギャオスー!」


 ウガガウが開けた場所に飛び出して行く。


「ギャオスって何?!」


 思わず叫ぶ僕。


「あいつの名前!

 あいつは知ってる奴だぞ」


 ワイバーンもウガガウに向かって行く。


「ギャオス、オレだぞ! ウガガウだぞー!」


 ウガガウの言葉によって妖術が解かれ、感動の再会に……、なればよかったが、


「ギャッ!」


 ウガガウはワイバーンの体当たりを受け、弾き飛ばされた。


「粋だねえ」


 モミジさんがウガガウをキャッチ。

 木に激突するのはまぬがれた。


「粋って言うか危ないって!」


 僕はヒーリングラビティでウガガウを治療。

 ちなみに重力波でワイバーンを狙ったが、届かなかった。


「でもあいつは助けたいぞ」


 気持ちは分かるけど、フーヤオも追わないと。


「二手に分かれましょう。

 わたしとカエデちゃんでフーヤオを追うわ」


 僕とウガガウでワイバーンか。


 言われるまでもなく、ワイバーンに向かって行くウガガウ。

 その隙に森の奥に向かって行く、ルナテラスさんとカエデ(モミジ)さん。


 さて、ワイバーンのギャオスをどうやって救出するのか。

 妖術による洗脳を解く事が不可欠だろう。


 ウガガウのバーサーカー化を(中途半端に)解いた「チルアウトランキライザー」の効果があればいいが、動物や魔物に効果があるか分からない。


 実は、確実に効果が見込めそうな選択枝として「ディスペル」の魔法がある。

 これは解呪のための魔法で、妖術にも効果がありそうだ。


 そして、僕の魔法リストの中にもある。

 しかし、「ル」はしりとりにとって鬼門なので、目下の所使う事ができない。


 そんな事を考えていると、


「グガアアアアアア!」


 ウガガウの身体から赤い煙が。

 瞳も真っ赤に輝いている。


「ウッガーーーガウーーー!」


 ウガガウがバーサーカーへと変化した、が……


「グオオオオオッ!」


 大斧を拾い上げて、担ぎ出した。

 そのままワイバーンに向かって行こうとする。


「ちょっ……!

 それじゃ殺しちゃうって!」


 助けるって言ったのに。

 やはり狂戦士は見境なしだ。


 ここはしりとり魔法の出番だ。


「チルアウトランキライザー!」


 二つの光が命中すると、ウガガウは動きを止めた。


「おー、落ち着いてきたぞ」


 瞳は赤いが、意識はしっかりしている。

 クールなバーサーカーの誕生だ。


「まずは斧を置こうか」


「そうだな!」


 ウガガウは斧を投げ捨てるとパンチとキックの素振りをした。


「やっぱり力があふれてるぞ!」


 風を切るいい音がする。

 やはり落ち着いても、バーサーカーのパワーは据え置きだ。


「ギャオスー!」


 ウガガウが叫ぶとワイバーンが向かって来る。


「ギャオス! オレだぞ!

 ウガガウだぞ」


 反応はなく、ウガガウは体当たりの直撃を受けてしまう。


「危険だよ。相手は操られてるんだから」


 僕はヒーリングラビティの魔法でウガガウを治療しながら言った。


「ギャオスは友達なんだぞ」


 そう言うとまたウガガウはまたワイバーンに向かって行った。


「オレが分かるだろ! ギャオス!」


 そしてまた体当たりを受けて吹っ飛ぶ。


 僕はまたヒーリングラビティをかけにウガガウのところに。


「話の通じる相手じゃないよ」


 仰向けになって放心状態のウガガウ。

 妖術を何とかしないとどうしようもない。

 ここは一旦、ワイバーンを捕縛するなり、気絶させるなりするしかない、と伝えようとしたが、


「ウガアアアーーーッ!」


 勢いよく起き上がるウガガウ。


「オレは怒ったぞー!」


 今度は四足歩行でワイバーンに向かって駆けて行く。

 まさかまた理性を失ったのでは、と心配になってしまう。


 またもウガガウ目掛けて滑空して来るワイバーン。

 しかし、


「ガウウーーーーーッ!」


 ウガガウはジャンプでワイバーンを飛び越え、その背に跨った。

 さらに羽を押さえ付けたのでワイバーンはそのまま不時着する。


「ガアアアアッ!」


 そのマウント状態で、恐ろしい形相で叫ぶウガガウ。


 このままワイバーンに暴力を加えるなら一応、阻止するつもりだ。

 友達らしいし。


「ウガガガアアアアッ!」


 さらに雄叫び。

 まるで猛獣のような声なので、僕もちょっと怖い。


 ところがウガガウはワイバーンから降りた。

 そして、ワイバーンはウガガウに顔を摺り寄せている。


 どういう風の吹き回しだろう。


「キミが妖術を解いたの?」


 ウガガウは首を振った。


「どっちが強いか分からせただけだぞ。

 いつも言う事聞かない奴にはやってるぞ」


 再教育という事だろうか。

 ウガガウはワイバーンをしつける事に成功したようだ。


「ギャオス。

 後で迎えに行くからここで待ってろよな」


 ワイバーンを待たせ、僕とウガガウは先を急ぐ。

 ルナテラスさんとカエデ(モミジ)さんはもうフーヤオと交戦しているかも知れない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ