第19話 快進撃
大陸北部、原初の森。
動物や魔物達の多く棲むその森の支配者、銀狼エカテリーナと会談した僕ら。
エカテリーナは魔王に協力しない事の条件として、妖術を使う狐、フーヤオの討伐を求めた。
「ギルドから追加料金もらわないとね」
笑って言うルナテラスさんだが、これは実際なかなかの大ごとだ。
大陸の西に移動するだけだって大変だ。
日をまたぐ事にもなるだろう。
その上、フーヤオは多数の魔物を従えていると言う。
しかし、バーサーカー少女、ウガガウが同行しているおかげで、道中森の動物や魔物に襲われなかったのはありがたかった。
出くわしてもウガガウの姿を見ると引き返すか、彼女に甘えてくるのだ。
そんなこんなで、夜になったら野営をする事に。
魔物などの襲撃に脅える心配がないのでゆっくり休む事……、
などはできなかった!
「ワッオーーーン!」
ウガガウが四つん這いになって吠えると狼達がやって来た。
「ウッガッガー!」
ウガガウはたき火を囲んで小躍りし、狼達と共に夜通し吠えていた。
会話していたらしいが、内容は知る由もない。
エカテリーナと共に帝国からの守りに残った狼もいるので、いまいち盛り上がらなかったらしいが、十二分に騒々しかった。
しかし、この宴の中で僕は彼女自身の事について質問する機会を得た。
年齢は12歳。
これはエカテリーナがしっかり記憶していた。
赤ん坊の時、森に捨てられていたのをエカテリーナが見つけたらしい。
エカテリーナを母親と呼ぶが、その辺りの事情は知っているらしい。
バーサーカーとなって暴れるのは物心ついた時からのようだ。
原因は分からないとの事だった。
そして次の日、西の山脈が間近に確認できるようになって来た辺りで異変は起こった。
遠くに小鬼であるゴブリンや、小柄な狼のような獣人、コボルド。
豚のような顔のオークなど森の原生の魔物ではない者達の姿を確認した。
それらの魔物の群れは、どこか動きに生気が感じられなかった。
ふらふらと身体を揺らしているが、何かを思考しているようには見えない。
「あの紫の目はフーヤオに操られてる奴の目だぞ」
ウガガウは目がいいようだ。
僕は遠くの魔物の目の色まで確認できない。
「確かに瞳が紫に輝いてる」
鞭を取り出すルナテラスさん。
レンジャーのルナテラスさんも目が利くようだ。
そして、これがフーヤオの手下のようだ。
「ウッガーーガウーー!」
ウガガウが雄叫びを上げ、魔物達に攻撃をしかける。
それに気づいた魔物達もこちらに向かって来る。
ルナテラスさんは鞭を高い枝に引っ掛けると、それを伝って枝の上へ。
そこから弓を取り出して構える。
「カエデさん! 行くよ!」
「はい!」
僕はは左手を開き、前に突き出す。
「ディフェン……!」
そして、次に右手を広げ、突き出す!
「ストレングス!」
カエデさんが魔法の光に包まれる。
「あっしの出番ですかい?」
あごに手を当て、不敵に笑うモミジさんの登場だ。
「敵は数が多いです。お願いします」
「分かりやしたぜ。旦那」
モミジさんはルナテラスさんの弓をかいくぐって来た敵に狙いを定め、ポントーに手をかけ、接近。
すれ違いざまに武器を抜いて斬りかかった。
ガッシリした体躯のオークが一撃で崩れ落ちる。
「今宵のポントーはよく斬れる。
粋だねえ」
相変わらずの剣技の冴えだ。
真昼間だけど。
そのままポントーでゴブリンやコボルドに斬りかかり、数体の敵をあっという間に倒してしまう。
「やるじゃない」
ルナテラスさんも初めて見るモミジさんのポントー捌きに驚いている。
「ウッガーーー!」
ウガガウも身の丈ほどある大斧を振り回し、魔物達を蹴散らしている。
奇声を上げて暴れ回るウガガウ。
「思い切りのいい戦いっぷり。
粋だねえ」
「ウッガー! ギャオー!」
粋なのかどうかはともかく、モミジさんも一目置く強さだ。
僕もライトニングラビティの魔法で後ろから敵を狙い撃ち。
ウガガウはちょいちょい負傷するので、その時はヒーリングラビティ
消費MPはもちろん0。
圧倒的な継戦能力だ。
ゴブリン、コボルド、オークでは勝負にならない。
僕らは快進撃で先に進む。
しかし、そこに上空から迫る影が。
翼を持った大きな姿。
ドラゴンに似ているが、腕はない。
ワイバーンだ。
一体のワイバーンが現れた。
そして、ワイバーンの背には誰かが乗っている。
「ホホホホホ。
騒がしゅうなって来たと思うたら、人間共が迷い込んで来おったか」
女性の声がする。
ワイバーンに乗っているのは、紫色のローブのような服を纏った女性だった。
ガウンのような羽織るタイプの服を腰の帯で締めている。
カエデさんの民族衣装に似ているが、下半身のズボンがないので片足が太ももまではみ出している。
そのゆったり感のせいで。上半身は胸の谷間がはっきり分かる。
そして、かなりの巨乳だ。
また、肌の色が恐ろしく白い。
白く塗ったような不自然な白さ。
髪の色の紫も異様な感じ。
顔立ちは美しいが、目は切れ長、と言うよりつり上がっている。
そして何より頭に生えた獣のような耳。
やはり紫色だが、これは恐らく狐の耳なのだろう。
そう。これが化け狐フーヤオに間違いない。
「そぞろ楽しゅうなってきおった。
ホホホホホ……、ホホホホホ……」
月の光を300年浴びて、魔力を蓄え、妖怪と化した狐。
それがついにその姿を現した。




