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第18話 銀狼エカテリーナ

 銀狼エカテリーナに出会った僕達は森の最深部に案内される。

 バーサーカー少女、ウガガウも一緒だ。


 彼女達は土地感のない僕らを、時折待ちながら進んで行く。


 それにしてもこの少女は何者なんだろう。

 エカテリーナを「母ちゃん」と呼んでいたけど。

 彼女に育てられたと言う事だろうか。

 本当の親子じゃあないだろうけど。


「ようこそ。我らの家へ」


 そこは巨大樹のうろの中だった。

 大きなうろだが、深くはなく、明るい。


「そこに座るといいでしょう」


 石が置かれていた。

 それがいすの代わりだろう。


 狼のエカテリーナは、うろの奥に座った。

 いすが二つだけだったので、僕は地べたに。

 ウガガウはエカテリーナの隣で動物のようにうずくまっている。


 そこまではいいのだが、その後巨大樹の周りに狼の群れが集まって来た。

 声などは立てず、ただ集まっているだけなのだが、それでも怖い。


「大丈夫だぞ。オレが合図したら襲うからな」


 僕達はドキッとした。


「ウガガウ。合図しなければ襲わない、です」


 訂正するエカテリーナ。

 ウガガウに言語を教えたのは銀狼なのだろうか。


「一応は敵対する関係なのでこうしています」


 言い放つエカテリーナ。

 彼女は魔王軍四天王だ。


「今回はその行き違いを正すために参りました」


 こうしてでルナテラスさんの交渉は始まった。


「乱獲行為を国は認めていません。

 今回の乱獲は密猟行為に当たります」


 そう。

 セントレール王国の人間は基本的には原初の森で狩りはしない。

 何百年も前は狩っていて、銀狼とも敵対していた。

 それを長い年月をかけて改善したのだ。


「犯人の身柄も抑えています。

 引き渡す用意もあります」


 もしかしたら犯人を捕らえたから、このタイミングでの交渉だったのかも知れない。


「必要ありません。

 あなた方の法で処分なさい」


 特に興味もなさそうにエカテリーナは言った。


「復讐など考えるのは人間だけです」


 この件に関して、エカテリーナはそれほどわだかまりを持ってはいないようだ。


「さすが聡明なエカテリーナ様です。

 では次の話に参りましょう」


 きびきびと話を進めるルナテラスさん。

 銀狼に怯えていたのは最初だけ。

 今やいつも通り。

 と言うより、いつもよりもりりしくすら見える。


「ドラゴンマスター、ファフニルとエカテリーナ様の挟撃を受ければ、今度こそ王国は命運を絶たれます」


「それでわたしとの関係を修復して、同盟を結びたいと」


 銀狼は値踏みするようにこちらを見ていたが、


「わたしが魔王ともめている事も知った上で、言っているのでしょうね」


「魔王ティフォンは森の住民を、道具のように使います。

 原初の森を守る存在ではありません」


 ルナテラスさんが調べた情報ではないのだろう。


 やはり王様は切れ者だ。

 魔物同士の情報まで持っている。

 僕にはどうやったのやら想像が付かない。


「魔王に協力しないというのはやぶさかではありません」


 魔王と銀狼の関係性が悪化している事実は掴んでいた。

 それでも、ルナテラスさんはほっと胸をなでおろしているようだった。


「ただし、条件があります」


 と、そう簡単に話は終わらないのだった。


「ワイバーンを操る妖術を使った魔物がいます。

 その魔物を討ち取りなさい」


 魔王自身と四天王のファフニル以外にも強敵がいる、という事だろうか。


「その魔物は今もこの森にいます。

 魔王城のある西のノルエスト山脈もほど近い場所に、ワイバーンや他の多くの魔物を操って、陣取っています。

 帝国の動きが怪しいので、わたしは出向く事ができません」


 東の帝国軍がセントレール王国に攻め込むには、この原初の森を制圧して拠点を置く事が不可欠だ。

 どうやら実際に帝国軍の侵略が始っているらしい。


 森の西側に気を取られる訳にはいかないという事か。


「魔物の名はフーヤオ。

 妖怪と化した狐です。

 月の光を300年浴びて、魔力を蓄えています」


 魔力を蓄えた狐。

 それで妖術が得意なのか。


「話によるとかなりの軍勢に守られているようですが?」


「このウガガウを連れて行きなさい。

 あなた達も早く戻って、ドラゴンマスター、ファフニルの相手をしなければならないはずです」


 確かに。

 ガレスさんとマリスさんが持ちこたえているようだが、今は王都の危機なのだ。

 まだ勇者が戻って来た話も聞かない。


「オレはウガガウ。

 よろしくな」


 立ち上がるウガガウ。

 小柄な女の子だが、とても心強い。

 何しろ僕は殺されかけた。


 バーサーカーの怪力は、味方ならありがたい。

 それにしりとり魔法、「チルアウトランキライザー」を使う事で、見境なく暴れられる事は防げるはずだ。


「ひっ! 怖い」


 でも、カエデさんは怖がっている。


「こんな時は魔力係数を数えると落ち着くって誰か言ってた。


 ……でも魔力係数って何だっけ?」


 まあ、いざと言う時は別人格のモミジさんが活躍してくれるだろう。


 こうして、僕とルナテラスさん、カエデさん、そしてバーサーカーの少女、ウガガウは化け狐、フーヤオの討伐に向かったのだった。

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