表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

74/103

第74話 これからのこと

「うーん」


 【帰還】で由乃の家の前へと戻り、俺は大きく伸びをした。

 天気はいいしのんびりと一日を過ごすことが出来そうだ。

 モンスターを狩ってレベル上げもいいけど、たまには息抜きも必要だよな。


「司くん」

「何だ?」


 由乃が真剣な表情で俺を見つめてくる。

 俺はドキッと胸を高鳴らせ、彼女と視線を合わせた。


「あの……司くんが来た世界の魔王(エールキング)、でしたっけ? それを倒してこっちに来ることはできないんですか?」


 多分、由乃は向こうの面倒事を済ませてこっちに永住してほしい、なんてことを言っているのであろう。

 確かにそれも悪くないかも。

 なんて思いながらも、俺は考えていることを口にする。


魔王(エールキング)……俺なら勝てるんだろうけど、絶対に横やりが入ると思うんだよ」

「横やり?」

「ああ。管理者なんて名乗っている連中だよ。後どれぐらいの人数がいるか分からないけど、そいつを俺が倒そうものなら、なりふり構わず俺を止めに来るはずだ。あっちにいる由乃たちを人質に取られるかも知れない」

「では、向こうの私たちをこちらに連れて来るというのは? それなら安全じゃ?」


 由乃は必死に解決策を提案するも、俺は冷静に起こりうる可能性のことを思案する。

 向こうの世界とこちらの世界。

 根本的な部分は同じような気がする。

 誰かが世界を管理し、人間の戦いを観測して愉しんでいるんだ。

 もし、二つの世界を管理している者が同一人物だとするなら……皆をこちらに連れて来ても、結局危険なのは変わらないだろう。

 こっちに来た皆を人質に取られてそれで終わりだ。


 管理している者が別だとしても、俺にこうして世界を渡る能力があるということなら、同じようにこちらに移動する力があったとしても不思議ではない。

 結局のところ、逃げ切ることは不可能だと思う。


 だとすれば、ある程度ルールに従って行動している方が皆は安全なのではないだろうか?

 俺がサポートしているとはいえ、順当に魔王(エールキング)へと近づいている勇太たち。

 彼らは俺みたいにチートじみた能力を持っているわけでもないし、管理者たちだって俺の命だけを狙っている。

 だから俺が魔王(エールキング)を倒すのではなく、勇太たちに任せておけば、結局のところ皆は安全なのだと思う。

 俺が死ねば全部解決なんだろうけど、だからと言って死ぬのはごめんだ。


 皆を危険な目に遭わせず、俺も死なないようにする。

 ルールを守りつつ自分の身を守るという、今の流れのままに進むのが一番なのではないだろうか。


「皆はこのまま冒険を続けている方が安全だと考えているんだ。無理にこちらに連れて来ても、かえって危険な気がする。あいつらは俺がどこにいても、隠れていても簡単に探し当てることができた。別の世界に来ていたとしても、簡単に見つかってしまうと思う。今だって俺がここにいることを把握してるんじゃいかな?」

「じゃあ、また向こうの世界で過ごすことになるんですね」

「そういうことになるな」


 分かりやすく肩を落とす由乃。

 俺は彼女の寂しさを感じ取り、同じような気持ちになっていた。

 できることなら俺も由乃と一緒にいたい。

 こんな魅力的な女の子が俺に好意を抱いてくれているんだ。

 嫌な気持ちになるわけがない。

 むしろ嬉しくて、応えてあげたいと思う。


 だけど俺にはまだやらないといけないことがある。

 はっきりした正体も分からないが、管理者の奴らを片付けて、向こうの勇太たちを無事に元の世界に戻す。

 元の世界に戻るかこちらに残るかはまだ決めかねているが、どちらにしても話はそれからだ。


 目の前の由乃の体を抱きしめてあげたい気持ちが溢れてくるが、そんな勇気のない俺は代わりに彼女の頭を撫でる。

 少し気持ちよさそうに吐息を漏らす由乃。

 

「天野」

「え?」


 俺はパッと由乃から手を離し、声の方へ視線を向けた。

 そこにいた人物を見て、俺は驚愕する。


 なんとそこにいたのは――円だった。


「南さん……」


 円の顔の左半分は包帯に覆われており、痛々しい傷が包帯の隙間から少しだけ顔を出している。

 左腕も左脚も同じように包帯を巻いており、いつもと比べて圧倒的に暗い印象を受けた。

 俺は円のその傷と表情に胸が痛くなり、彼女の下へと駆け寄る。


「円! どうしたんだよその傷!」

「司……なんでここにいるの?」

「え……?」

「南さん、司くんを知っているんですか?」


 由乃の問いかけに首肯で答える円。


 そうだった。

 ここは別世界。

 この円だって、この世界の住人なんだ。

 だから俺の知っている円じゃない。

 そんなの少し考えたら分かることだろう。


 だけど――この円は俺を知っている。

 いや、正確に言えば俺じゃない。

 この世界の俺のことを知っているんだ。


「円。俺が……この世界の俺がどこにいるのか知っているのか?」

「司の言ってることよく分からない。私たちは一緒に暮らしてるでしょ」

「い、一緒にって……同棲?」


 ほんのりと頬を染めて円は首を縦に振る。

 おいおい、この世界の俺は女の子と……それも円という美少女と同棲してるのかよ。

 羨ましい……


 俺をジッと見つめる円。

 由乃はそんな円の反応にムッとし、俺たちの間に割り込んでくる。


「こ、この人はあなたの知っている司くんじゃありませんから」

「……どういうこと?」


 抑揚なくそう言う円。

 俺は簡潔に円に現状を説明した。

面白かった。と、少しでも思っていただけたら、ブックマークと高評価の方お願いします。

評価はこの小説の下にある【☆☆☆☆☆】を押してもらえたらできます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ