第36話 ダラデニー王との対面
時間は16時になったばかり。
ダラデニーの町に入ると、とぼとぼ俯いて歩く人ばかり。
楽しそうにしている人は一人としていかなった。
「あんな王様がいて、楽しいわけないよな……よし。ぶっ倒しに行くか!」
「待て待て待て。いきなり突っ込むつもりか?」
「おう。そのつもりだ。さっさと王様ぶっ飛ばしてこの町を平和にする」
「まぁぶっ飛ばしたとしてもさ、あいつが生きてる限り、ずっと同じことが続くんだぞ? これから町の人たちに手を出させないようにするには……あいつを殺すしかないと思う」
「うっ……」
「もしくは再起不能になるぐらいまで痛めつけるか。そんなこと勇太にできるか?」
「…………」
勇太は俺の言葉に固まってしまう。
そうなんだ。
これはイジメを解決するとかカツアゲされた金を取り戻すとか、そんなレベルの話じゃない。
国を変えるレベルの話だ。
命を奪う覚悟もなく、国を変えられるわけがない。
そして命を奪うことを許されない世界から来た俺たちだ。
正義のためだと言って命を奪うなんて、そう簡単に割り切れる問題じゃない。
「だから、もっとよく考えてから行動に移そう」
「あ、ああ……でも、どうしたらいいんだ?」
「それを一緒に考え――」
「おい、そこのお前」
「え?」
俺たちが話をしている時、近くから癇に障る声が聞こえてくる。
それは、ダラデニー王の声であった。
奴は兵士を数十人引き連れて町を練り歩いていたようで、俺たちの姿を見るなりニヤついた顔で近づいてきたようだ。
「何か?」
「お前たちは、セイルレーン王が召喚した異世界の戦士らしいな」
「おう! だから何だってんだ!?」
磯さんが珍しく相手を睨むようにして一歩前にに出る。
「ひっ!」
ダラデニー王は兵士たちの背後に隠れ、彼らの隙間から偉そうに言う。
「お、お前たちが世界を救う戦士かどうか知らないが、ここでは俺様がルールなんだ! だから俺様に従ってもらうぞ!」
「従うわけねえだろ、アホ」
勇太も磯さんに続いて一歩前に出る。
するとダラデニー王の隣に位置していた巨体の騎士――ガリアが前に出て、カードから剣を取り出す。
勇太たちも対抗するように武器を取り出すと、周囲の兵士たちも一斉に武器を手に取った。
「や、やめてくれ……君たちが逆らうと俺たちまで……」
周りにいた町の人は、怯えた様子で俺たちを見ている。
ダラデニー王の八つ当たりが怖いのであろう。
王の顔色を窺いながら、俺たちを落ち着かせようとしてくる。
「ふ、ふふふ。そうだ。ここでは俺様が神なのだ! お前たちも俺様に素直に従え!」
「あなたみたいな自分が手に入れた権力を欲のままに使い、恐怖を振りまく邪な心の持ち主などに従うわけないでしょう!」
「こ、この女……」
由乃の言葉に怒りを覚えるダラデニー王であったが、由乃の顔を見ている間に、ニヤニヤと気色の悪い物に変化させる。
「お前……いい女だな」
「はい?」
「気に入った。お前は俺様の女にする!」
プルプル震える由乃。
呆れ返る俺に今にもキレそうな勇太。
「おい、そこの男。その女をこちらに連れて来い!」
「え、じ、自分ですか……?」
俺たちの後ろにいた町の男性が指名され戸惑い固まる。
「…………」
「何をやっている! 俺様の言うことが聞けないのか!?」
「ひっ……い、今すぐに!」
男性は由乃の腕を取り、ダラデニー王の方へと連れて行こうとする。
由乃は抵抗し、その男性の腕を振りほどく。
「ちょ……離して下さい! あんな男の下になど私は行きません!」
「い、いいから言うことを聞いてくれ……頼む」
悲願するよう、懇願するよう、必死な表情で由乃を説得しようとする男性。
俺は流石に頭にきたので、由乃とその男性の間に割って入り、出来る限り冷静に言う。
「あんたたちは、これからもあの男に怯えたまま生きていくのか? ずっといいなりで生きていくのか?」
「と、当然だろ? あの人は俺たちの王様なんだ……ここで生きて行くのなら従わざるを得ないんだよ」
「そんなことない。気に入らないなら……ぶっ壊せばいいんだ」
「ぶ、ぶっ壊すって……そんなのできるわけないだろ!」
周囲にいる人たちも同じ意見らしく、男の声に賛同するよう、静かに頷く。
「俺たちに何ができるって言うんだ? 俺たちは何もできないから兵士にもなれず、何者にもなれず、こうやって町にいるんだ……俺たちは、誰かに守ってもらいながら生きて行くしかないんだよ!」
「守るべき人間があんたたちを傷つけているんだ。あいつに頼るのは、どう考えても間違っている。皆で正しい選択をしなきゃ」
「だから、そんなことできるわけがないだろ!」
男の叫び。
そして、入り口の方で大騒ぎが同時に起こり出す。
「な、なんだ!?」
俺たちは声の方に視線を向ける。
外で何かが起きたらしい。
「……行こう」
「あ、ああ」
「ち、ちょっと待て! 俺様の用事は終わってないんだぞ!」
「一生やってろ、バカ!」
一体何が起きたんだ?
背後で喚き叫ぶダラデニー王を無視し、不安を胸に抱きながら俺たちは町の外まで走った。
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