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第28話 LR帰還と元の世界

 【ランクアップカード】。

 それはどうやら、ランクSSS――LRクラスのカード同士を合成することによって出来上がるカードのようだ。


 俺は適当に作って放置していたLRのカード同士を合成してみた。

 そして完成するランクアップカード。


 ランクアップカード:レア度――

 所持しているカードのランクをアップさせることができる。


「そのままランクを上昇させることができるカードか……ってことは」


 俺は暗い森の中で操作を続ける。

 《ホルダー》の中にある【帰還】のカードをタップすると、『合成しますか?』の文字が映し出された。


「よしっ!」


 俺はガッツポーズを取り、『YES』の文字を押す。

 すると【帰還】カードが光りを放ち、ランクが上昇する。


 帰還Ⅱ:レア度N ランクA

 指定した人物と共に最後に行った町へ瞬時に帰ることができる


 しっかりとランクがアップしているのを確認し、俺はそこで気が狂ったかのようにガチャを引き始めた。

 もう新しいパッシブスキルが手に入らないからガチャを引いていなかったが……【スキルアップカード】が創れるということなら話は別だ。

 これでレアカードのランクも上げ放題!

 俺は狂喜乱舞で【ランクアップカード】を作成し、【帰還】と【術発動時間短縮】をLRクラスまでランクを上げる。


 帰還Ⅴ:レア度N ランクSSS

 自分のイメージする場所へ瞬時に帰ることができる


 術発動時間0:レア度N ランクSSS

 術の発動時間が0秒になる


「自分のイメージした場所に帰れるって……術の発動時間が0秒って……やはりLRランクは神だな」


 誰も手に入れることができないカード。

 誰も足を踏み入れることができない領域。

 誰もその存在を知らない隠された力。


 あまりの歓喜に、俺は【帰還】を使用しコボルトのいる洞窟まで飛び、目の前にいたコボルトに対して【ファイヤーナパーム】を投げつける。

 術の発動に時間が必要なく、あっという間に手の中に炎が次々と生まれ、俺は周囲を連続で爆発させた。


「すごいな……MPも消費しないし発動に時間もかからない。これ控えめに言ってとも、やっぱ神じゃない?」


 手にある炎を投げつけ、セイルレーン城に瞬間移動する。

 俺たちが使用していた部屋に来たのだが……誰もいないようだ。

 そこで俺は無意味にバク転をして頭を打つ。

 

 少し痛みを感じるがそれ以上に喜びが勝っており、笑いながら床に寝そべる。


「……待てよ」


 天井を見上げながら俺はある可能性に気づく。

 自分のイメージする場所へ行けるってことは……元の世界にも戻れたりするのか?

 まさか……いや、でも。


 俺は起き上がり、それを確かめるべく自分の通っていた学校をイメージする。

 どうなるんだろうか。

 胸をドキドキさせながら、俺は【帰還】を発動する。


 パッと目の前が暗くなり――俺の視界に映ったのは学校の教室だった。

 

「やった……帰れた……帰ってこれたぞ!」


 いくつも並べられた机。

 チョークの跡が残る黒板。

 偉そうに設置されている教卓。

 窓から見える校庭。


 全部、俺の知っている景色だ。

 俺の、俺たちが元居た場所だ。

 俺たちの世界だ。


 窓を開け、夜空に浮かぶ月を見上げ感傷に浸る。

 ああ……帰って来れたんだな。


 よし。

 勇太たちをこっちの世界に戻してやろう。

 こっちに戻せるのなら、強いのがバレてもいいや。


「……ん?」


 しかし。


 見覚えのある自分の住んでいた世界。

 だがそこに、見覚えのない異質な物が目に入る。


 ずいぶん向こうの方に――塔のような物が見えた。

 俺は目を擦り、それをもう一度凝視する。

 いや、何あれ?


 機械で造られたような塔で、塔全体が電気の光を放っている。

 それが消えたり点いたりしていて、高さは雲さえも突き抜けていた。


 俺はその塔の存在に不安を感じ、教室を飛び出し、屋上まで駆け上がる。

 屋上から外を見下ろし、【鷹の目】を発動した。

 スキルはこの世界でも機能している……能力で周囲を見渡すと、そこにも見覚えのない奇妙な物がある。

 

 モンスターだ。

 多分としか表現はできないが、モンスターがいる。

 

「あっ!」


 学校の近くで女の子がモンスターに襲われている。

 黒い体に8本の気色の悪い長い足。

 それは人よりも大きな蜘蛛だった。


 俺は屋上から飛び降り【潜伏】を発動しその女性の方へと走り出す。

 肉眼で確認できる距離まで移動すると、蜘蛛は糸を吐き出し、女性を身動きできないようにしていた。


 民家の前で女性を殺すために蜘蛛は近づいて行く。

 俺は最速を持って、女性と蜘蛛の間に割り込み、拳を叩きつける。

 効果があればいいが……そう考えていたが、ゴブリンたちと同じように爆散する蜘蛛。


 俺はため息をつき、女性の方を向き笑みを浮かべる。


「大丈夫だっ……た」


 その女性の顔を見て、俺は一瞬思考能力を失ってしまった。

 そこにいた女性は――天野由乃そのものだった。


「由乃……?」

「え? どこかでお会いしたことありましたか?」


 彼女は蜘蛛の糸に包まれたまま、怪訝そうに俺を見上げていた。

 俺を知らないって……どういうことだ?

 というか、なんで由乃がこっちの世界にいるんだ?

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