第24話 コボルトキングと盗賊
「辰巳!」
「お、大崎……天野」
駆けつけた勇太たちに青い顔で視線を向けている辰巳。
コボルトキングは登場した勇太たち、そして盗賊たちを交互に見渡し叫ぶ。
「あ、あっちの人間どもを捕まえろー! 人質を一人でも増やすんだ!」
20匹のコボルトたちは、盗賊たちに向かって走り出した。
「ちょ……どうするんすか、親分!」
「や、やるしかねえだろ!」
盗賊たちは武器を手に取りコボルトたちとの戦闘へと突入する。
しかしコボルトたちの方が絶妙に強いらしく、徐々に押されていく。
親分と呼ばれた眼帯を付けた男だけは少しばかり強いらしく、二匹のコボルトを倒していた。
「あいつが、私の恋人と家族を殺したの」
ギリッと音がしそうなほど歯を噛みしめるアイリ。
「そうか」
俺はその眼帯の男に向かって左手を突き出す。
【弱化】。
相手の能力を一時的にダウンさせるという、いわゆるデバフ能力だ。
眼帯の男の体に一瞬黒いオーラがズシリと乗りかかるのが見える。
するとさっきまで対等以上に戦っていたコボルトに押され始めた。
「な、なんだ! どうなってやがる!」
徐々に傷を負っていく盗賊たち。
やられるのは時間の問題だろう。
「アイリ、少しだけ待っててくれ」
やられている盗賊たちから視線を外すことなくアイリは頷く。
勇太たちは辰巳が捉えられていることに身動きが取れない状態のようだ。
コボルトキングも見えない俺の姿に怯えているのか、勇太たちから一定の距離を取っているだけである。
「ぬふふ……ち、近づいたらこいつを殺すぞ」
「くそっ……」
俺はコボルトキングとの距離をこっそりと縮め、奴に【弱化】をかけた。
そして辰巳の首に回している左手の太い人差し指をボキッと折る。
「痛いっ!」
パッと辰巳を奪い、辰巳を蹴って勇太たちの背後に吹き飛ばしてやる。
「ああ! 仮面の戦士!」
「来てくれたんですね」
「ああ……後はお前たちに任せる」
辰巳は勇太たちの背中に向かってか細い声で言う。
「や、やめろ……あいつはとんでもなく強いぞ」
「とんでもなく強かったとしても、俺たちは負けねえよ」
「お、俺もそう思ってたが、負けてしまったんだ。お前たちだって――」
「あの仮面の戦士が俺たちに任せるって言ったんだ。それは俺たちにでも勝てるってことだ! だから……俺たちは負けないんだよ!」
俺は再度【潜伏】を発動し、コボルトキングたちから距離を取る。
勇太たちはコボルトキングとの戦闘に入った。
任せると言ったものの、どうしようもないなら手を貸すつもりだけど……
コボルトキングの大剣を盾で防ぐ磯さん。
瞬時に円が背後に回り、十文字にコボルトキングの肉を抉る。
「んぎぃ……なんなんだお前たちは!?」
「俺は【勇者】だ! この世界を平和にしてから元の世界に戻る、選ばれちゃった戦士なんだよっ!」
勇太は飛び上がり、両手で剣を振り下ろす。
コボルトキングは大剣でそれを受け止めはするが、その威力にたじろいでいる。
この様子なら問題なさそうだな。
盗賊の方にサッと移動し、トラップカードを《ホルダー》から取り出す。
盗賊たちは傷だらけとなっており、一人、また一人とコボルトたちに殺されていく。
「な、なんで俺たちがこんな目に逢わなきゃならねえんだよ……」
「お、親分……助けてくれ……」
「ちっ!」
因果応報だ。
全部お前たちがやって来たことへの総決算だと思え。
人々を苦しめてきた人生を後悔しながら死んでいけ。
「リリース」
俺は眼帯の男の後ろにトラップを仕掛けた。
眼帯の男はやられる仲間たちを見て、そそくさと逃げ出そうとする。
「――!?」
トラップにかかり、地面から飛び出してくるワイヤーに足を取られる眼帯の男。
「な、なんだこれは……外れねえ! どうなってやがる!」
それは【くくり罠】。
レア度Nのなんでもないトラップカード。
大したトラップじゃない。
普通なら武器でこれぐらいは断ち切れるのだろうが……これは合成が完成したLRレベルのトラップだ。
あのコボルトキングだって余裕で拘束できるだろう。
そんなレベルの罠を、こいつ程度が逃れられるわけがない。
俺は盗賊が全滅したのを確認し、拳でコボルトたちを始末していく。
「な、なんだてめえは!」
「俺は協力者だ」
「き、協力者ぁ? 何を言って……」
ぬっと、何もない空間から現れるアイリ。
その手には短剣を持っている。
「て、てめえは……この村の」
「あなたは私たちの家族も、恋人も……村の人たちも皆殺してしまった……」
つーっと涙を流しながら眼帯の男に近づいていくアイリ。
「ち、近づくんじゃねえ!」
眼帯の男は持っている剣をアイリに向けるが――俺がその腕ごと蹴り飛ばす。
「ギャー!!」
その場に倒れ、傷口を抑えながら恐怖に支配された瞳でアイリを見上げる男。
「た、頼む……もう悪いことはしねえ。見逃してくれ」
「もう悪いことはしない? そんなの遅すぎるのよ。あなたは救いようがないほどの悪行を重ねた。これは――」
「頼む……頼む」
「天罰よ!」
男に向かって何度も何度も短剣を振り下ろすアイリ。
返り血を浴びて彼女の顔は真っ赤に染まる。
いつしか絶命してしまっている眼帯の男。
だがアイリはその手を止める様子はない。
「ぬふふ……お願いだから許してくんない?」
コボルトキングの方へ視線を向けると、勇太たちに完全に押されているコボルトキングが、へつらうような顔で勇太たちに赦しをこうていた。
「お前は人間を喰うらしいな……それに、俺の友達も何人か食ったらしいじゃないか」
「も、もう食べないから。ね? お願い」
勇太は剣を両手で掲げ、コボルトキングを見据えている。
「許せるわけないだろ。死んでいった同級生……そして、今まで食われてきた人たちの無念を晴らせさてもらう! 【聖剣】!」
勇太の剣が光に包まれる。
「うおおおおおおお!」
「くそぉおおおおお!」
振り下ろされる光の剣。
コボルトキングは大剣でそれを迎え撃つが――大剣ごと勇太の光に両断される。
ズシーンと地面に倒れたコボルトキングは、ゆっくりと地面に飲み込まれていく。
「私たちの勝ちですね」
「ああ」
「…………」
喜ぶ由乃たちの背中を、辰巳は放心状態で見つめている。
「…………」
アイリも短剣を持つ手を止め、ゆっくりと起き上がる。
「あの……ありがとう。皆の敵をあなたのおかげで取ることができたわ。本当にありがとう」
ボロボロと涙を流しながら、血で染まった頭を下げるアイリ。
こうして、二つの戦いは静かに幕を閉じるのであった。
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