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第23話 囚われる辰巳

 三木が死んだことに恐怖と混乱の悲鳴が響き渡る。

 俺は冷静に行動するため【心術】を発動し、コボルトたちと皆を引き離すため、鎖を握っているコボルトたちを四散させていく。


「に、逃げよう!」

「ひぃっ!!」


 一目散に逃げようとするクラスメイトたち。

 俺はできる限りクロスボウで行く手を遮る敵の数を減らしていく。

 皆の進行方向と逆に密集しているコボルトたちに【ファイヤーナパーム】をお見舞いし、さらなる混乱を招いてやる。

 突如上がる炎と逃げ惑うクラスメイトたちの姿に、コボルトはどう動けばいいのかキョロキョロするばかりであった。

 俺はニヤリと笑みをこぼしながらクロスボウを連射し続ける。


 しかしそんな中、逃げようとしない人物が一人いた。

 それは――辰巳だ。

 辰巳だけはなぜか逃げようとせず、コボルトキングを睨んでいるだけであった。

 何やってんだよ、こいつは。


 俺は骸骨の仮面をかぶり、辰巳を引きずってでも敵から離そうと考え、奴に近づいて行く。

 しかし、コボルトキングがその辰巳の背後に回り首に腕を回す。


「だ、誰かいるのかなぁ!? 隠れているならでておいで! 怒らないからさぁ」


 にちゃーっと気色の悪い笑みを浮かべるコボルトキング。

 俺は静かに奴に接近していく。


「お、お前ら、俺に何かがあったら、迷わずこいつを殺すんだ! いいな!」


 コボルトキングの声に何度も頷くコボルトたち。

 さらにコボルトキングは続ける。


「いいか!? 今言った通り、俺に何かあったらこいつを殺しちゃうぞ! いいのか? よくないだろ!?」


 本当に辰巳を助けてやる義理はないんだけどな。

 でも……こんな奴でも死んだら勇太が悲しむ。

 他の皆は混乱の中なんとか逃げ出せたようだし、今はこいつに集中するか。


 俺は攻撃の手を休め、奴の動きを静かに観測する。

 勇太が来るまでにできる限り数を減らしておいてやろうと思っているのだが……残りは500と言ったところか。

 だいぶ減ったとは思うんだけど、これでもまだキツイだろうか?

 そもそもこのコボルトキングは、どれぐらいの強さを有しているのだろう?

 勇太に勝てるか?

 今の奴の反応jを見る限りは、強そうには見えないけどな。


 【鷹の目】で勇太たちとアイリの位置を確認する。


 アイリは村の近くまで移動し終えており、勇太たちは急ぎ足でこちらに向かって来ているようだ。

 勇太がこちらに到着するまで……5分ぐらいか?

 それまでにもう少し敵の数を減らしておきたいものだ。


 コボルトキングはジリジリと村の方へと後ずさりするかのように動いている。

 俺はそこで遠くの方へと【ファイヤーナパーム】を放り投げた。

 その爆発でコボルト一匹たりとも殺しはしなかった……が。

 爆発に反応したコボルトキングは、恐怖に顔を歪めながら村に向かって駆け出した。

 辰巳の体を軽々と抱え込み、背後を見ることなく逃げ惑う。

 俺は後ろからコボルトの数を減らしていく。

 徐々に破裂していくコボルトたちの姿にコボルトキングは気づいていない。

 俺はその滑稽さに鼻で笑いながら、クロスボウを連射していく。


 大方コボルトを片付けた俺は、コボルトキングの様子を気にしつつも、アイリのいる場所へと向かって走る。

 コボルトキングは逃げることに必死で、コボルトの数がすでに20ほどまで減っていることをまだ把握していない。

 あいつのことは勇太に任せるとしよう。


 俺はコボルトキングを追い越しアイリの下へと移動すると、彼女はほっと溜息をつく。


「司……」

「お待たせ」


 俺はアイリにも【潜伏】の効果を与えてやる。

 彼女は恐る恐ると言った様子で、物陰から村に向かって歩き出した。


「ほ、本当に見つからないの?」

「ああ。俺を信用してくれ」


 俺たちは村に足を踏み入れ、盗賊たちがいる場所へと向かう。

 奴らは酒場にいるらしく、こんな昼間から酒浸りのようだ。

 このまま突入して敵討ちに力を貸してやってもいいけど……


 俺は村を見渡す。

 元々のどかな場所なのであろう。

 何も無いけど、穏やかな雰囲気のある場所だ。

 しかし……無数の死体がそこら中にゴロゴロと転がっている。

 俺は胸に黒々とした怒りを燃やしつつ、冷静に【鷹の目】で奴らの姿を睨み付けた。

 こいつらには痛い目に遭ってもらおうか。

 

「アイリ、少しここで待機しておこう」

「なんで……?」

「あいつらに自分でやったことへの罰を与えてやるんだよ」

「…………」


 そして待つこと数分、コボルトキングが村へと到着する。

 奴は奴で必死だったのだろう。

 まだ仲間が減っていることに気づいていない。


「お、おい、撒いたか――って!? なにこの数ぅ!?」


 ようやく手下が20ほどまで減っていることに気づいたコボルトキングは素っ頓狂な声を上げる。

 その叫び声に反応し、盗賊たちが酒場からゾロゾロと出て来た。


「なんの騒ぎだ……って、なんだ、このバケモンは!?」

「コ、コボルトキングだ……」

「コボルトキングって……エリアマスターか!?」


 コボルトキングの姿に目を見開いて驚愕する盗賊たち。

 アイリはその盗賊たち――中でも、一番体の大きな眼帯の男の姿を目にし、怒りに顔を歪めていた。


 すると勇太たちも到着したようで、コボルトキングたちのすぐ後ろまで接近していた。

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