プロローグ
「ただいまより、世界大会決勝――エフィエル・ローランドvs天草隼人の試合を始めます!それでは――MATCHSTART!」
実況による試合開始の合図が会場に響くと同時に、天草は自身の能力――《神装》を体に展開し、エフィエルに打撃が届く間合いに入り、懇親の一撃を与えた――はずだった。
その事実に気がつくと同時に、エフィエルは《神装》を体に展開させると、天草に懇親の一撃を与える。
「くっ……」
《世界創造》――それがエフィエルの能力だ。エフィエルが思ったことを具現化させる能力だ。
その能力により、天草をフィールドの端に転移させ、《神装》を具現化させ天草に致命的な一撃を与えた。
《神装》を展開させると、使用者の身体能力を数百倍まで引き出すことができる。
お互いに《神装》を展開している状態での攻撃は、展開していない状態で攻撃されているのと衝撃は同じだ。
しかし、天草は立ち上がることが出来ない。
エフィエルの能力ならば、《神装》や攻撃力を強化することも容易だ。
「――8、9、10!」
カウントを数える審判の声が場内に響き、10を数えた瞬間――エフィエルの勝利が確定した。それと同時に、観客も湧き上がる。
「またもやエフィエル選手の優勝! 果たして、エフィエル選手に勝利することが出来る能力者は現れるのか?!」
そうだ。
エフィエルに勝利したことがある者は1人もいない。
WkR1位のエフィエルに次ぐ2位の天草でさえ勝利したことがないのだ。
1位と2位以下には大きな差がある。
生まれもつ1つの能力を駆使して戦う2位以下に対し、《世界創造》という1つの能力でありながらも複数の能力を使えるエフィエル。
2位以下からすると、大人数を相手に戦っているようなものなのだ。
「すげえ……」
そんなエフィエルの試合を観て興奮する1人の少年――津島暁。
試合後、会場を出た暁は世界大会終了を祝した祭りへと向かう。