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#ガールズラブタグさん仮採用で。早速明日から出勤いける?

 桜の花びらがはらはらと舞い散る並木道を歩く。周りを見渡すと友人と話しながら歩く者や、緊張した面持ちで進む者。そして私と同じ様に大きめの制服に着られている者など、十人十色の同じ制服を着た学生が歩いている。


 私は無事に高校に受かっていて、今日が入学式である。あの受験の日から数日後に合格発表があって、最近は学校へ行かなくともインターネットで見られる様になったらしい。昔の様に学校でも掲示はするそうだが、私はパソコンで済ませてしまった。


 学校に辿り着くと人の流れに沿って進み、玄関口にあるクラス分け表を見て自分のクラスを確認する。他にも見ようと並んでいる新入生が多いので、確認が終わったらすぐに離れて下駄箱へ向けて進み始めた。昔に通っていた高校では土足だったのだが、最近は学年毎に色分けされた上履きを履く様である。


 自分の教室へ辿り着いて入口から見渡すと、既に席の半分位が埋まっていて黒板に座席表があるのを発見する。確認すると名前順で席が決まっていたので、此処で御門さんの名前を探してみたが見つからない。同じクラスではないのかと考えつつも、2列目の一番前との事なのでそちらへ向かう。


 どうやら左の席(「隣に話しかける、)の人は既に座っ(隣に話しかける、隣)ているらしい。(に話しかける……」)私は背負っていた鞄を机に置いて、席に着席する。すると左の席の男子生徒から話しかけられた。


 「ょ、よぉ!今日はええ天気やと思わん!?」


 「え?あぁ、うん、晴れてて桜も綺麗で。いい入学式日和だよね」


 何処かで聞いた覚えがあるのだが、初対面の人間とは最初の1秒で第一印象が決まるという。なので私は今度こそ高校生活を失敗しない様に、最初が大事だと普段より気合を入れて笑顔を決めつつ返事を返した。


 「……ッ!?……あ、その、俺の名前は相川(あいかわ)って言うんや。よろしく!」


 「私の名前は音鳴だよ。よろしく相川君」


 「ってか知らない人ばっかで緊張せん? 俺はめっちゃ緊張しとる!」


 「わかる。同じ中学から受験してたの数人だったから、殆ど知らない人ばかりだし」


 受験の出願は同じ受験先の生徒が全員纏まって、直接現地まで移動して出しに行くというスタイルの中学校だったので、うちの中学校から数人受けたのは知っているが、彼らが全員受かっているのかは知らない。私には話す友人が居なかったので、そんな話をする事は無かったからだ。


 「いやー、せやけど横見んと話しかけたら、女子で焦ってしもたわー。高校生活終わった思たでほんま」


 「えー、そんな事で終わらないでしょ?」


 とは言いつつも、わかる気はする。女子に話しかけても許される男子というのは、クラスで一定以上のカーストに所属している者であり、このカーストが定まっていないタイミングでするのは賭けであろう。


 「いやいや終わってまうて! 俺ちゃんと見とったら音鳴さんみたいな可愛い女子に話しかけへんか……った……」

 

 「ん?」


 つい反応してしまったが、彼の困惑している様子からして思わず口が滑ったという奴だろう。相川君は外見から判断すると軽いという訳ではなく、至って真面目そうな少し髪型もオシャレにしている普通な男子だ。


 別に私は気にしないが、クラスメイトに初対面で軟派の様な事をするなんて、本人のキャラ次第ではクラスカースト最下位転落間違い無しで終わってしまう。何処かの動画のコメントで見たがイケメンに限るという奴である。


 「ああ、いや、違うんや! その可愛いって言っても、そのなんていうか! そう小学生みたいに小っちゃくてって意味でや!」


 うん、私は確(「……ぶっ、……)かに小さい。(ぷ……くく……」)背も140cmしかなく、胸もない。相川君の言う様に小学生に間違えられる時もある。最近は弟にも背を抜かされてしまった。いやそれよりも今は彼を落ち着けなければと声をかける。


 「あの、相川君」


 「って違っ……あ゛あ゛あ゛すまん音鳴さん! 何でもないんや!」


 そう言って彼は席を立ち、教室を出て行った。正直私にはどうすれば良かったのか、全くもってわからない。そんな風に呆気に取られていると、右側の席に座った女子生徒に話しかけられた。


 「あははっ、何アレ面白すぎでしょ! アンタもそう思わない?」


 「うーん、それよりも心配かな? ちゃんと戻ってくるのかって」


 「ぷっ、確かにこんなに目立ったらキツいわー」


 彼女の言葉で周囲に視線を向けてみると、クラスメイト達から視線を浴びていた。初日から悪目立ちしてしまったが大丈夫だろうか、と心配になってしまう。


 「私の名前は佐々木(ささき) 咲良(さくら)。よろしくね、お隣の音鳴さん」


 佐々木さんが挨拶をしたタイミングで、ドアから先生が入ってきた。その後ろを着いてきた相川君が、席まで戻ってきて座る。彼の顔が若干赤いが、武士の情けとして見ないでおこう。


 軽くホームルームとして担任の自己紹介と学校の案内を受けた後、クラス全員で整列して体育館へと移動した。在校生の先輩達と来賓の方々が並ぶ道を進んで、新入生用のパイプ椅子に座ったら式が始まる。

 

 校長の式辞や来賓の祝辞祝電、在校生の生徒会長による歓迎の言葉が終わって、次は新入生代表による宣誓である。そして呼ばれた代表の名前を、私は知っている。舞台に向かって歩いていく彼女の後ろ姿を見ながら、私の心は喜びで波打った。

登場人物紹介


音鳴(おとなり) (すず)

主人公でありTS転生者。配信時に使っている名前はベル。

身長140cmのまだ違法ロリ。胸も無い。実は美少女である。


御門(みかど) 沙耶(さや)

受験の時に出会った子。髪型はロングの三つ編みハーフアップ。

身長154cmで胸は普通な美少女。容姿端麗・成績優秀と今の所は完全無欠。凄い。 


佐々木(ささき) 咲良(さくら)

お隣の席の子。髪型はミディアムボブ。

身長は158cmで胸は普通。数日もすると軽くメイクをし始める系女子。


相川(あいかわ) 俊介(しゅんすけ)

やらかした男。勇者振りが男子にウケて、この後ちゃんと友人が出来る模様。

・高校デビューを決めるべくテンパる。友人作らねば!←1ストライク

・隣の着席音に気付き声をかけたら美少女だった。えっ!?←2ストライク

・美少女の超絶可愛い笑顔を至近距離で受けた。混乱の極致。←3ストライク、アウトッ!!

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