#ヤンデレってどう思う?私は大好きです
今日も一人で勉学に励んでいた学校生活は終わり、待ちに待った放課後がやってくる。自宅に帰った私は今日は何のゲームを実況するか悩んでいた。私が配信している実況はフリーゲームか家庭用ゲームなのだが、昨日までしていたゲームがエンディングを迎えてしまい次のゲームを決めていなかったのだ。
という事でフリーゲームを纏めているサイトを巡回していた私なのだが、気になるタイトルを見つけてそれをプレイすることにした。
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ベルが逃げる!ぷりずんぶれいく実況
2017/12/12(火) 16:38開始
#ゲーム #フリーゲーム配信 #ぷりずんぶれいく
可愛い立ち絵に魅かれてこれにしました。
URL:httb://milkon.jp/product/pribre
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フリーゲームのダウンロードを済ませ、配信を開始してタイトル画面のまま30秒ほど待つとコメントが付いてくる。
【こんベル~】
【こんベル~】
【ダンベル~】
人が来たようなのでそろそろ始める事とし、私は最初の挨拶をする。
「こんにちわ~。箱ダンは昨日終わっちゃったし、今日は新しくフリーゲームやるよ~」
生主によっては独特な挨拶をする者も居るが、私は初期から一貫して普通に挨拶している。コメントには私の名前を使って挨拶をするコテハン付きのリスナーばかりの様だ。鈴という自分の名前を英語にしてベル、とは私の事ながら安直な名付けをしたものである。
「絵が可愛かったからこれにしたんだけど、ゲームの説明とかは軽く流し読みしただけで詳しく見てないです」
【あっ……これかぁ(察し)】
【見たことない】
【知っているのか雷電!】
「察せられるとか何か不穏なんですが。……とりあえず始めていきます」
そんな感じで挨拶を済ませた私は、はじめからをクリックしてゲームを開始した。
[ ]
俺の名前は上木志輝。高校2年のどこにでもいる普通の男子なんだが、
ある日学校から帰っていたら後ろから殴られて気付けば檻の中に居た。
どうにかして脱出しなければ!だが、俺の周りには何もない。
(ガチャガチャ)こんな素手で檻を開けれる訳がないs……開いただって!?
檻から出る ←
檻から出ない
「まあ、これはとりあえず檻から出るよね」
素直に檻を出るという選択肢を選んで押してみる。
[ ]
よし、檻から脱出するぞ!
という訳で無事に脱出した俺は、周りを見渡す。
如何にも普通の10代の女の子の部屋といったそれは、
俺の知っている部屋だった。
此処は俺の幼馴染であり恋人の、梁出玲弥の部屋だ。
なんで玲弥の部屋に檻なんて物が……。
部屋から出る ←
部屋から出ない
【俺も恋人を檻に閉じ込めたい。居ないけど】
【通報しました】
【おさわりまん此処です!】
「逮捕しちゃうぞ? んー、これも出るかなぁ……」
[ ]
檻があるなんて普通じゃない。急いで部屋から出ないと。
しかし、俺がドアノブを回して扉を引くとそこには玲弥が居た。
[玲弥]
志輝くん、起きたんだね。でもなんで出ちゃってるのかな?
どこに行くつもりだったのかな? せっかく志輝くんの為に用意したのに。
[志輝]
玲弥、お前が俺を閉じ込めたのか? なんでだ……?
そもそもこんな事しておかしいだろ!
[玲弥]
だって志輝くんが悪いんだよ? 今日あの女とキスしてたよね?
私が居るのになんで他の女なんかと……志輝くんは私だけを見ていればいいんだよ……
[ ]
なぜ玲弥が音鳥さんとの事を知っているんだ。確かに俺は今日キスをしている。
だがあれは俺が悪いわけじゃない。音鳥さんが誘惑してきただけなんだ。
そんなのしてしまうに決まってるじゃないか!だから俺は何一つ間違ってない。
「……何、この屑男」
【屑やんけ!】
【えぇ……(困惑)】
【ああ、主人公の名前"うわきしてる"か!スッキリ!】
【初見です、入ったら屑男って言われて嬉しいので出ません】
【変態だー!】
「あ、そういう事。上木で浮気、志輝でしてると。初見さんはいらっしゃいー」
[ ]
いや、それよりも……玲弥が手にしたのは……包丁!?
[玲弥]
昔からずっと考えてたの。志輝くんを私だけのモノにするにはどうすればいいかって。
こうしたら志輝くんはずっと私だけのモノ。ふふっ、なんでこうしなかったのかなぁ……
志輝くん、志輝くん、志輝くん、志輝くん、志輝くん、志輝くん、志輝くん、志輝くん
、志輝くん、志輝くん、志輝くん、志輝くん、志輝くん、志輝くん、志輝くん、志輝く
ん、志輝くん、志輝くん、志輝くん、志輝くん、志輝くん、志輝くん、志輝くん、志輝...
[ ]
ヤバい、このままだと俺は玲弥に殺されてしまう!!どうにかして逃げないと!!
「正直これは刺されるべき。玲弥ちゃん頑張れ!」
【 (アカン)】
【ベルさんの言う通り】
【ベルさんwwww】
【むしろ挿されるべき♂】
と、ヒロインの方を応援していた私だが、ゲーム内で説明が入る。どうやらここからQTE形式の様だ。QTEとはクイック・タイム・イベントの略で、画面上に出た指示に従ってボタンを入力して、その成否によって次のイベントが決まるのである。
↓SCORE Perfect:3 Good:2 Miss:0
↑↓↑→←↑→↑↓→
↑
【べるさんがんばえー】
【これQTEか?音ゲーじゃなくて?】
【QTEは悪。わかんだね】
「流石にこの速度で失敗はないって、ね、っと」
SCORE Perfect:9 Good:6 Miss:0
[ ]
あ、危ない。玲弥が突き刺してきた包丁を後ろに跳んでかわした俺は冷や汗を流す。
コイツは俺を本気で殺す気なんだ。
[玲弥]
なんで避けるの? ねぇ? なんで? なんで? なんでなんでなんでなんでなんで
[志輝]
刺されたら死ぬだろうが!? ふざけるな! 退けよッ!!
↓SCORE Perfect:3 Good:9 Miss:2
↑→↓↓↑→
↑
「下、右、う……って、あー!? ミスった……けど1回だけなら、ってまたー! むぅー」
【そんな失敗で大丈夫か】
【大丈夫だ、問題ない】
【むぅーとか可愛いかよ】
SCORE Perfect:4 Good:14 Miss:2
[ ]
俺は玲弥を突き飛ばし、扉から逃げようとする。この部屋から出れさえすれば!
[玲弥]
痛っ、痛いよ、志輝くん。……ねぇ、逃げないで。逃げないで戻ってよ、戻ってよぉ。
[志輝]
うるさい、黙れ! こんな事されて、逃げねぇ奴なんて居ねぇよ!
お前なんてもう恋人でもなんでもねぇ! 大ッ――
↓SCORE Perfect:2 Good:5 Miss:0
↑↓→←→↓↑→→↓→↑→↓↑→↓↑→←←←↑
↑
「……っ! 早いけどなんとか出来そっ……あああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! ? ! ?」
【!?】
【ベルさん!?】
【どした!?】
【!?】
画面を流れる指示に従いカーソルキーを叩く事に集中していた私は、突如反応しなくなったキーに一瞬の思考停止のち思わず叫んでしまった。さっとキーボードを見てみると電源部分にライトが灯っていない、そして私が使っているキーボードはワイヤレスである。男としての感性がカッコイイと思ってしまった故に買ってしまったモノだ。これが現す事柄とはつまり――
「キーボードの電池が……なくなった……」
【え、ワイヤレス?】
【(アカン)】
【キーボードとマウスは有線じゃないと】
【なんてタイミングで】
【あー……】
SCORE Perfect:3 Good:6 Miss:21
[志輝]
――嫌……い……だ?
[ ]
俺の背中に何かが突き刺さる音が、痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛
い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い...
[玲弥]
私は、志輝くんのことが、ダイスキだよ。ふ、ふふ、あははははははははははっは
はははっはははははははははははははははははははははははははははははははは...
[ ]
狂った様に笑う玲弥の声を聞きながら、俺の意識は沈んでいく。ああ、寒い。
どうして、こんな、こと、に……。
【BAD END】
私はバッドエンドを迎えるゲーム画面を横目に、机の引き出しから取り出した新品の電池をキーボードの電池と取り変えた。そして、このゲームをプレイして心に浮かんだ感想を口に出す。
「……絵柄と内容、あって無くない?」
【わかる】
【思ってた】
【空気読み】
今回ベルさんがプレイしていたフリーゲームはこちら。
【ぷりずんぶれいく】LoseXP/pista/7/8/10対応
Story:
起きたら檻の中に居た。無事に逃げ出そう!
character:
上木志輝(主人公)
デフォルメされたもっふもふの学ラン着た猫。
梁出玲弥
デフォルメされたもっふもふのセーラー服着た犬。
これを踏まえてもう一度読み直してみよう。
檻の中に居るもふ猫のスチル、ナイフを持ったもふ犬のスチル……。
ベルさんとリスナー達が感じてた空気読みを共感できるかもしれない。
ちなみに音鳥さんは上木くんと同じく猫。泥棒猫。