#読まなくても大丈夫なプロローグかもしれない
ハーメルンに投稿している作品の特殊タグなしVerです。
特殊タグを使用する前提で書いているので、ハーメルンの方が楽しめます。
ごちゃっとしたのがお嫌いでなければ一度お越しください。
https://syosetu.org/novel/219735/
ある日起きたら女の子になっていた。そんな転生物のテンプレというべき状況が起きたのは私が3歳の時である。
目が覚めたら知らない布団で知らない男女に挟まれているという状況に混乱し、しかし少しの冷静な思考に従い無音で離れようとした。が、身体を起こした時私の目に小さな手が映る。子どもの手としか思えないそれに意識を取られ固まっていると、横の女性が身動ぎをした。
「ん~……。すーちゃんトイレに行きたいの……?」
その声を聞いて二人が私の両親だという記憶が脳裏に浮かんでくる。そして流されるままトイレに連れて行かれ一人で寝間着を脱ぐが、途端私の心は寂寥感に襲われた。
「あいぼうがいない……」
元の私は魔法使い予備軍の男であった。その相棒が使われる事無く去って逝った悲しみは、男としてとても辛いものがある。私は生涯魔法使いとして生きる事になる未来を思い、一筋の涙を流した。
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そんな出来事から早10年。現在の私、音鳴 鈴は至って普通の女の子として生きている。
人間とは慣れる生き物である。転生した当初は女の子という事に悩んだりもしたけど、それよりも思う事があってその悩みは何時の間にか消えていた。
前世の私は所謂コミュ障……といっても業務的な会話だけは問題なく出来るが、それ以外が駄目で友人が一人も居なかった。中学・高校と虐められたせいか、元から一人で居るのが好きだったのが他人について無関心になった事が原因で、でも生きていくのに問題はなかったから当時は特になんとも思っていなかった。
しかし、せっかく生まれ変わったのだ。気持ちを切り替えて友人を作ろうと思った私は頑張って、頑張って、頑張った。
小学生の時は良かった。前世はインドア派で余りしたこともなかった男の子の遊びという物に混ざって楽しく遊んだ。最近の流行を調べて女の子とも話して友達も出来た。
……が、中学生になって失敗した。後から考えてみると前世の男としての感覚が駄目だったのだろう。男子が話す下ネタや少年漫画にもそれなりの理解を示す親しげな女子という、御多感なお年頃には効きすぎたのか。ある日学年で一番目にカッコイイと女子が噂している男子に告白されたのだ。私は彼の事を友人と思っていたけれど彼にとってはそうではなかったようである。
――私という存在は男として生まれ、生きて形作られたモノだ。そして女の子になって10年生きても、私は飽くまでも女の子っぽい男の子にしかなれなかった。つまり私にとっての恋愛対象は女の子であるのだ。
なので私は彼の告白を断ったのだが、それが駄目だった。彼の事を好きな女子達に睨まれたのだ、しかもその中に女子の学年カーストでトップなグループも混じっている。ということはつまりもうどうしようもないという事で。
幸いにも虐められる様な事にはならなかったが、私と喋るような女子は居なくなった。深い付き合いの友人は居なかったから被害を受けたくないのだろう、皆離れていった。
男子には避けられているわけではないので話そうと思えば話せるが、何がきっかけで余計に女子の怒りを買って虐めが始まるかもしれない。そんな危険を避ける為に私は中学での友人を作ることを諦めた。
という訳で私は放課後の今まで友人付き合いの為に使っていた時間が空いてしまい、どうするか悩んでいた。そんな時に父がパソコンを買い替え、私専用として古い物を貰える事になったのだ。
古いといっても私が生まれ変わる前に使っていた物よりは遥かに高機能な物で、時代の流れという物を沁み沁みと感じてしまう。そして貰ったパソコンで時々見ていた動画サイトを眺めている時に目についた物がある。前世の私が一番嵌っていたゲームを配信している生放送だった。
タイトルに引かれて見たそれは特に人気もある訳ではなく、コメントが来たら生主が少し喋る程度の配信ではあったのだが、それを見てふと私もしてみたいと思ったのである。
それから両親の許可を得て貯金を叩いて機材を購入した私は、ゲーム実況者としてデビューしたのであった。
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ベルが行く!箱ダン実況#5
2017/12/06(水) 19:57開始
#ゲーム #BS3ゲーム配信 #箱庭のダンジョン~聖なる櫃の謎~
今回はサイドストーリーの収奪の王と書の娘を攻略します!
ベルさん Lv19◉ ★フォロー
コミュニティ登録者数1511人
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という事があってから1年、始めた当初は人が来ない時もあったが、今ではコテハンを付けて来てくれる方も増えてきた。細々とやっているだけなのだが、千人を超えて来たコミュニティを見ると少し誇らしく思う。
相変わらず学校では一度外れた異物は群れから追い出されるというもので、友人という物が出来ない私であるが、今のこの人生を楽しめているので良いのではないかと感じる今日この頃である。
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