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怪談  作者: 胃灘友則実
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本当か嘘か

 明日香は二十歳のころ、会社で出会った達也と幸せな結婚をした。


達也は優しい人だ。いつも明日香が食事あとに、コーヒーを入れてくれる。


「はい。明日香」


にっこり達也さんがほほ笑む。


「ありがとう」


明日香は微笑んでコーヒーカップを受け取る。


「新婚旅行楽しみだな」


「そうだね」


明日香と達也は有休をとって冬山に新婚旅行に行くことにしていた。



その幸せはずっと続くと思っていたが、ところが新婚旅行の雪山から達也と明日香は遭難してしまい、明日香はなんとか無事に発見されたが、達也は雪の中で意識不明の状態で発見された。

緊急で病院に運ばれたが、達也は植物状態で目覚める可能性はすくないと、病院から残酷な宣告をされてしまった。


「達也さん」


明日香は眠っている達也の手を握る。


明日香は達也が必ずいつか目覚めると信じ、医者にはずっと達也に治療を続けるようにお願いすることにした。


明日香のおなかには達也との新しい命が宿っている。子育てにもお金がかかるし、達也の治療にも莫大なお金がかかるだろうと、不安になる。それでも明日香は頑張ろうと思った。いつかまた達也と出会うために。


それから二十歳だった明日香は、三十になり、四十になり、ついには六十歳になったしまった。それでも達也は目覚めない。

けれど明日香は再婚もせずずっと、達也の帰りをまっている。


年を取ってしまった達也の顔を見つめ、明日香は微笑む。


「あなた」


少しでも明日香は達也を感じようと、達也の隣に顔を伏せる。

その瞬間血走った目を開いた達也が凄まじい形相で、明日香の方を見て言った。


「何故死なせてくれなかったんだっ」


「ひ!?」


 いつの間にか明日香は病室で眠っていたらしい。目の前にはやはり目を覚まさない三十代の達也がいる。あれは夢か幻か。明日香の罪悪感がみせた夢かもしれない。

けれど明日香の後ろにはなぜか血走った目の達也のいるかもしれない気配を感じていた。


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