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リティ、格闘士ギルドの為に奮闘する

 格闘士(マーシャル)ギルドが休みの日でも、リティ達に休息はない。ダッガム支部長の手前、バイダーを見返してギルドを守ると宣言したのだ。

 全員で少しでも実績を積もうと思い立ったのが、なんと6級の依頼だった。

 メンバーの内訳は3級のリティ、4級のオリガー、6級のエイーダ他3人。合計6人が6級の依頼を受けるという珍事に、受付が何度も聞き返す事態だ。

 リティはクーファも誘おうと思ったが、召喚師(サモナー)ギルドに籠って勉強中とのことなのでやめておいた。


「6級の依頼か。実は初めてなのだが……」

「オリガーさんはすぐに5級に上がって依頼を引き受けたのですか?」

「すぐというわけではないな。これでも年単位の時間がかかっている」


 オリガーはすでに治癒師(クレリック)の称号を持っている。更に格闘士(マーシャル)の称号があれば、上位職である武闘僧(モンク)を目指せるのだ。

 これを果たして、将来は故郷の寺院を継ぐのが彼の夢だった。それだけに6級の依頼などに脇目を振っている場合ではない。


「君の提案には賛成だ。確かに街中で鍛え上げた我々の勇姿を見せつければ、格闘士(マーシャル)ギルドもきっと見直される」

「前にいた街で頑張っていた時に思ったんです。一生懸命やれば、認めてくれる人達はいます」

「しかし、君まで付き合う事はないだろう? 魔物討伐のほうが効率がいいのでは?」

「皆さん、6級の依頼はやったことがないなら私がついてないと!」


 妙なところで先輩風を吹かせるリティに、メンバーが笑う。そんなリティは最初、魔物討伐を提案した。

 しかし、すでに実績があるリティとオリガーで魔物討伐を行っただけでは宣伝効果が薄い。そんなオリガーの指摘に彼女は納得して、今回の結論に至った。

 生半可な結果では、バイダーは納得しないというのが満場一致の意見だ。

 そんな中で唯一、押し切れる結果といえばギルドへの加入希望者の数だとオリガーはいう。人が多くて賑わっていれば潰せないと、彼は踏んだのだ。

 しかも、格闘士(マーシャル)ギルドで培った身体能力ならばやれる事は多い。

 王都でそれが広まれば、ギルドへの加入希望者も増える。うまくいくかは各々の中で不安としてあったが。


「わたしも経験者だから、わからない事があったら聞いてね」

「ありがとう、エイーダ。しかし、まさか4級にもなってこのような指導を受ける事になろうとは」

「これも修業でしょ?」

「なるほど、それを言われるとつらいな」


 家庭環境も相まって、エイーダは努力家だった。金欠故に格闘士(マーシャル)を選んだとはいえ、それは決して甘えではない。

 目標があり、守るべき者達の為に常に最適解を選択している。武器を買う金があったら家族に肉でも食べさせる、学園にも通わせるとは彼女の口癖だった。


「あ、武闘服がちょっと破れてるかなぁ。これはさすがに妥協できないや」

「スパッツがお勧めですよ。動きやすいです」

「そ、それねぇ。なんか恥ずかしいな……」

「家族の為ですよ」

「それを言われるとつらいなぁ」


 リティから意趣返しを受けたエイーダが舌を出す。そうこうしているうちに最初の仕事先に到着した。内容は引っ越しの手伝いである。

 王都内ではあるが、鍛えていない一般の人間には重労働どころではない。大きな家具などもあり、知り合いがいなければ到底不可能である。


「いやー、助かるよ。知り合いもいないし、誰も引き受けてくれなかったらどうしようかと思った」

「お安い御用です!」

「それにしても、すごい体力だね。冒険者は皆そうなのかい?」

格闘士(マーシャル)ギルドで鍛えてますから!」


 リティの指揮によって迅速に進んでいる。力持ちを存分にアピールしつつ、引っ越し先まで無駄なく運ぶ。

 すべての作業を終えた頃には、さすがのメンバーも疲れを隠せなかった。体力自慢を出来たのはいいが、これで本当にいいのだろうかと疑問を持つ者もいる。


「あの人には感謝されたけど、宣伝になってるのかな?」

「地道に頑張りましょう」


 次は廃屋の解体作業だ。ただの力仕事ではなく、より危険が伴う。その建物は築年数が相当経過しており、費用の問題もあって管理者の老人も頭を悩ませていた。

 国に依頼すれば莫大な費用になるのだが冒険者ならばと、老人は考えたのだ。報酬の割に重労働で、放置された依頼の一つである。


「大丈夫かい? 所々、傷んでるから廃材が落ちてきて危ないが……」

「任せて下さい!」


 老人の心配はすぐに吹き飛ぶ。解体には技術と知識が必要だが、そこを身体能力でカバーした。

 うっかり落ちてきた廃材をかわして、キャッチ。あるいは蹴り壊して、見る者を釘付けにする。

 戦闘ではなくても、これなら十分にアピール出来るとして一行は引き受けてよかったと満足した。


「す、すごいな。あっという間に終わってしまった。初めて冒険者の生の仕事を見たが、これほどとは……」

格闘士(マーシャル)ギルドのおかげですね」

「そうなのか。ありがとうよ。この土地をよこせと騎士団に迫られて、どうしようかと思っていたところでの」

「それってヘビみたいな顔をした人ですか?!」

「そう、そうだ。だがこれで土地を誰かに売るなり、使用目的が出来た。今度きたら追い払ってやるわい」


 老人は何度も頭を下げて、感謝を表明した。こんなところにもアンフィスバエナ隊の影が、と呆れる事にもなった一行。

 騎士団とは善良な民を守るのが仕事と認識していたリティは、疑問が募るばかりだった。


* * *


 一週間という短い期間ではあるが、リティ達は仕事に励む。格闘士(マーシャル)ギルドでの激しい訓練後も赴き、人々に貢献する。

 本来なら過労もいいところだが、これも格闘士(マーシャル)ギルドのおかげだ。

 王都という広い街ではあるが、彼女達の活躍に一部が興味を持ち始めた。特にリティが向かった先の依頼主はほがらかに笑う。


「あんた、働きものだねぇ。冒険者って野暮ったい連中が多いと思ったけどね。あんたはいいよ」

「どうもありがとうございます。おばさんは一人で暮らしているんですか?」

「旦那には先立たれたし、息子が騎士団の宿舎で暮らしているからね」

「そうなんですか……」


 やや富裕層の中年の女性が、ミャンの頭を撫でながら語る。足腰が弱い彼女に代わって、リティが買い物代行を務めた後の休息だ。

 本当は息子にいてほしい、と本音を漏らした彼女にリティは一抹の寂しさを感じた。


「騎士団なんていうけど、あの人達に強引な立ち退きを命じられた人もいるからね……。そんな話を聞く度に、息子が関わってないか心配でたまらない」

「騎士団ってそんなにすごいんですか?」

「治安維持の象徴だからね。それをやりやすくするために、与えられてる権力もあるのさ」


 リティの中で疑問が深まる。バイダー率いるアンフィスバエナ隊がやってる事は治安維持ではない、と。

 難しい事はわからないリティだが、この女性の息子だけは正しくあってほしいと願った。


* * *


「……リティ、称号を授ける」

「えっ! 間違いないですか?!」


 リティがそんな確認を取るほど、ダッガムの言葉が衝撃だった。連日、ダッガムと互角の戦いを演じた甲斐があったと周囲が労う。

 しかし、それだけでは終わらなかった。支部長はエイーダの元へ来て、見下ろす。


「エイーダ、お前にも称号をやる」

「わ、わたしにもですか!」

「元より、前からお前の武術は洗練されていた。称号授与に踏み切れなかったのはワシの弱さだ。それに……」


 ダッガムがリティ他、見習い達を見渡す。各々の体の擦り傷は訓練によって出来たものではないと、ダッガムは見抜いていた。

 彼らが何をしているか。何のために。それがわからないほど、ダッガムは愚かではない。


「お前達が前へ進んでいるのに、ワシだけ止まっているわけにはいかんからな」


 冒険者カードを出せと、手で促すダッガム。二人が差し出すと、奥へと消えていく。

 数分の後、戻ってきた頃には待望の称号が刻まれていた。リティはもちろん、震えるほど感動しているのはエイーダだ。


「やった……わたし、ついに……」

「だがッ! 一つ、言っておくッ!」

「はいッ!」

「絶対に死ぬな! 死ねば称号は剥奪する! それどころかお前達の冒険者の資格も同様だ! わかったか!」

「はい!」

「死にません!」


 死ねば冒険者も何もないなどと、野暮な突っ込みをする者はいない。それがダッガムなりの激励だとわかっているからだ。

 先を越された4級のオリガーが、後輩のエイーダに何の感情も抱かなかったわけではない。しかし連日の6級の仕事で、彼にも心の余裕が出来た。

 討伐依頼ばかりで人から感謝される機会があまりなかった彼にとって、それは貴重な体験となったのだ。

 後輩の門出を祝福してやれないで、何が寺院を継ぐだ。オリガーもまた成長していた。


「エイーダ、おめでとう。そうだ、せっかくだから私が何か奢ろう」

「え……オリガーさん。それってまさか肉ですか?」

「いや、肉とは限らないが……」

「肉でしょう! 肉! にくッ!」

「わかった、わかったから涎を拭きなさい」


「ありがたくご馳走になりますッ!」


 エイーダに続いた後輩達が、勝手にオリガーに感謝する。あくまでエイーダ限定のつもりだったが、引っ込みがつくわけもない。


「それと弟達も呼んでいいですかッ?!」

「案外、遠慮がないな?!」

「いいですよ。私もお金を出します」

「さすがはリティさん! 3級!」


「やれやれ……ワシも出そう」


 参加してきたダッガムが気恥ずかしそうだ。いつも訓練で激しい激を飛ばしていた彼のイメージが覆る。

 メンバーの中にはやや気まずい、と思わなくもなかった者もいた。しかし結局は肉の誘惑に打ち勝てない。


「やれやれ、これも修業か……」

武闘僧(モンク)になるためですよ」

「みゃんみゃん!」


 もはや何の関係もないが、リティのデタラメな言葉にもオリガーは不思議な説得力を感じた。

 リティはリティでミャンのはしゃぎようが気になったが、すぐに氷解する。


「ミャン、お肉を食べたいんですか?」

「みゃーん!」


 ミャンの一筋の涎がすべてを物語っていた。


名前:リティ

性別:女

年齢:15

等級:3

メインジョブ:剣士(ファイター)

習得ジョブ:剣士(ファイター)

      重戦士(ウォーリア)

      召喚師(サモナー)

      弓手(アーチャー)

      格闘士(マーシャル)

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― 新着の感想 ―
[一言] 何も食べなくていいはずのミャンが、肉大好きだった!? しっかし、ほうぼうで土地よこせと活動してましたね。 騎士団が土地よこせと言ってた場所を地図にプロットすれば 何か意図がわかるかもしれな…
[一言] いい汗かいた後の飯はうまいぞ~( ̄▽ ̄;) そんでもって聞こえてくるバカな噂がポロポロと (-_-;)
[一言] リティのジョブ欄を見て一言 お前はどこを目指してるんだっwww
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