エクスピースとグレートバラン、アフクルム海軍に挑む
「アフクルム国に突入する!?」
バランダルの作戦とも言えない行動指針に大声を上げたのはロマだ。
その突飛な行動そのものにも驚いたが、そもそも目標がアフクルムというのも不可解だった。
これについてはエネリーが会議室にて解説することになっている。
「捕らえたベルクフェクトが白状したで」
「ベルクフェクトって、あのナターシェさんが所属していたパーティのリーダー?」
「せや。何もかも観念しとったみたいで素直やったな。今はこの船でこき使われとるみたいや」
「そ、そう……」
ベルクフェクトやロガイを始めとした追放者ギルドのメンバー全員が同じ末路を辿っていた。
武装解除の上、甲板掃除や船内のすべての雑用をやらされている。
元二級冒険者のベルクフェクトが元五級冒険者のウラグルと今や同じ扱いだ。
どれだけ高みにのぼっても、落ちてしまえば行きつく先は同じなのだとエネリーは憂いた。
「まぁそんなわけで追放者ギルドについて色々わかったんやどな。リティちゃん、あのアルディスもおるらしいで」
「アルディスさんが!?」
「追放者ギルド内じゃ誰も逆らえへんくらい幅を利かせとるらしいな」
「そうですか」
「えらいあっさりやな?」
絶望するどころか、リティはこの時を待っていたとばかりに冷静に状況を見据えた。
リティの始まりとも言える人物が今は追放冒険者として立ちはだかる。
彼に憧れていたかつての自分、そして今の自分と比較した。
今や目標でも超えるべき壁でもない。
倒さなければいけない相手なのだとリティは笑った。
「リ、リティ……?」
「アルディスさんがいるなら私が戦います」
「いいの?」
「私にやらせてください」
アルディスの堕落を嘲笑しているのではない。
どんな形であれ、彼と戦えることが嬉しいのだ。
今の自分がアルディスに通用するかどうかなど考えていない。
純粋に戦えることそのものを楽しみにしている。
その様子を見て、船長達が二の腕をさすった。
元特級冒険者が二人も敵に回っているという絶望的な状況でなぜ笑えると、小さな怪物に畏怖する。
空気を断ち切るために、ナターシェが挙手した。
「はーい。その追放者ギルドが今もアフクルム内にいるとは限らなくない?」
「関係ねぇよ。アフクルムも邪魔するならまとめてぶっ潰す」
「あぁもうなんて人達と関わっちゃったんだろうなぁ」
「お互い様だろ」
バランダルの方針は正面突破だ。
アフクルム海軍を突破して王宮の椅子でふんぞり返っている上層部の者達に迫る。
それ以外、考えていなかった。
ロマはいよいよまともな状況ではないことに焦りを感じる。
「ア、アフクルム海軍と戦うってこと? 国を敵に回すなんて……」
「これが済んだらてめぇらをガーニス大氷河まで送り届けてやる」
「つまり私達は強制参加……。冒険者なのになんでこんなことに……」
「そりゃこっちのセリフだ。追放落ちなんて下らねぇことしやがって」
バランダルの怒りは高まっていた。
酒浸りの日々を送っていた彼はどこにもいない。
そして一週間後、いよいよ決戦の時がくる。
* * *
「見えたぞ。海軍の野郎ども、すっかりへっぴり腰だな」
アフクルム港の前には海軍の船が並んでいる。
完全に封鎖している形となるが、これをバランダルはへっぴり腰と例えた。
その理由がもう一つの存在があるせいだった。
まるで海軍の護衛のように巨大なイカの怪物が海面から姿を現している。
そんな光景にバランダルはニヤリと笑う。
「まるで俺達を歓迎するかのようだな。こりゃ完全にクロだ」
「うちらが来ることはウラグルのおかげで伝わったなー」
「ごちゃごちゃ考えることはねぇ。こんなもんはよ……」
バランダルが大きく息を吸い込んで、そして叫ぶ。
「突撃してぶっ潰せぇぇーーーーーーーー!」
「オオオォォーーーーーー!」
今、この時がグレートバランの本領発揮である。
この怒声は海軍にも伝わっており、海兵隊に振動として伝わっていた。
同時にグレートバランというものを肌で理解してしまう。
これは敵に回していいものか、と。
「一番船! ぶっこむぜぇーーーー!」
カシムの一番船が化け物イカに突撃した。
カシムの投げ銛が化け物イカに突き刺さり、更に二番船以降が続く。
レイチェルの二番船が旋回して化け物イカを迂回。
エルリードの三番船が反対側に移動した。
まるで三又の銛のように、グレートバランの船が攻める。
「カシムゥ! 手ぇ休めたらぶっ殺すぞッ!」
「へいっ!」
カシムから矢次に放たれる銛が化け物イカを圧倒している。
海軍の兵隊が頼りにしていた魔物が倒されつつある現状に、海兵隊は茫然とするしかなかった。
そして海面から伸びた複数の足で一番船を襲う。
「チッ! さすがに楽じゃねぇな!」
「カシムさん! 私が頑張ります!」
「みゃあんっ!」
一番船に飛び乗ってきたリティが、イカの足をまとめて叩き斬った。
追撃で放たれたヴァーティカルスラッシュがイカの頭を豪快に切断して吹っ飛ばす。
この様子に面食らったのはカシム達だけではない。
「なっ! ま、魔王イカが!」
「ウソだろ!」
「あのジジイ! 何が一級相当の魔物だ!」
魔王イカを切断した勢いでリティは海に飛び込む。
しかし間もなく海面から飛び出して、今度はエルリードの三番船の甲板に飛び乗った。
流れるようなリティの動きに、エルリードはすぐに言葉が出ない。
「……いやぁ、怖いね」
「エルリードさん、行きましょう!」
「あーあ、海軍の方々が浮足立っちゃってるよ」
エルリードの三番船が海軍の船と相対する。
複数の船を相手に、エルリードはため息を吐いた。
「後輩にここまで活躍されちゃ先輩の面目丸つぶれだよ。次は一級冒険者エルリード、海軍相手に無双しよう」
エルリードが鞘からサーベルを抜いて海軍の船に突きつける。
風の上位精霊シィルと共に立つ彼の姿を見て、リティが興奮しないわけがなかった。
もちろん異性としてときめいているわけではない。
コロナEXとニコニコ静止画にて、近々コミカライズ更新するとのことです。
お暇があれば、ぜひ読んでください!




