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グレートバラン作戦会議 2

 ナターシェの荒唐無稽な予想だが、グレートバランの面々は誰一人として茶化さない。

 海軍の様子がおかしいのは事実であり、追放者ギルドの脅威も同様だ。

 海軍の裏にいて、大陸中に根を張りつつある追放者ギルドという存在。

 その前提があるならば、グレートバランとてのんびりとしていられる状況ではなかった。


「で、ナターシェさんよ。うちらは小娘が人質に取られてるんだ。主題はそれなんだよ」

「カシムさん。アフクルム国内に囚われているという前提なら、どこか心当たりがあります?」

「さっぱりだな」

「グレートバランを欺いて人間を一人、拉致するような相手です。常識では考えられない場所かもしれません」


 誰もが黙った。ズールであれば、どこにでも侵入できるだろう。

 そう考えれば、おのずと候補は上がってくる。しかしやはり常識から脱するのは難しかった。

 彼らが考えた犯罪者が根城にしそうな場所では安易すぎる。

 ナターシェも頭の中で知る限りの場所を候補として挙げていた。

 グレートバランがなりふり構わず総力を挙げて捜索の手を広げた場合、まともな場所であれば特定にそう時間はかからない。

 ズールとて、そんな事はわかっているはずだとナターシェは何度も思考を巡らせる。

 山、森、廃墟。ナターシェが思いつくのはあくまで一般的な盗賊達が隠れる場所ばかりだった。


「めんどくせぇな」


 バランダルが苛立って立ち上がった。


「バランダルさん、どこへいくんです?」

「グレートバランをアフクルムの港から離れた南西へ動かす」

「当てがあるんですか?」

「イズベルタ地下収容所」


 バランダルがその言葉を口にした途端、一同は硬直した。

 誰もが候補から外していた場所であり、危険性を知っているからだ。

 ナターシェは驚いたものの、寸前のところで常識や先入観を振り払った。


「通称、アフクルムの闇か。いやいや……さすがにな」

「カシムよう。そういや昔、お前はあそこを攻略するって息巻いてたよなぁ」

「いやいや、バランダル大船長。あの時は若かったんですよ」

「と、グレートバランの幹部ですらへっぴり腰になるような場所だ。ナターシェよぉ?」


 それでも可能性はあるか、とナターシェは聞かれているのだ。

 ナターシェ自身も、さすがにすぐには肯定できない。

 イズベルタ地下収容所、そこはアフクルムの汚点でもある。

 かつてのアフクルムの王家は反発する者を徹底して弾圧した。

 特定種族や人種、思想、権力争いによって蹴落とされた者、まったくの無実の者。

 王家に罪とされた者達が収容されて非人道的な扱いを受けた挙句、処刑された。

 やがて世代交代の影響もあり、現代では改善されたが事実は消せるものではない。

 迷宮のように入り組んだそこでは怨念が形を成して、冒険者の好奇心ごと魂を刈り取っていた。


「あそこに住み着いた魔物は長年に渡ってアンデッドと共存している。半ばアンデッドみたいなもん……ハンデッドなんて呼ばれちゃいるな」

「特に最下層のあいつは……。バランダル大船長、マジであそこにルイカが?」

「知らねぇよ。そこの小娘に聞けや」


 全員の視線がナターシェに刺さる。

 ナターシェも確信があるわけではない。まともに考えれば、監禁場所としては不適切だ。

 しかしナターシェは最下層にいるネームドモンスターの噂を聞いた事がある。

 もしそれが正しければ、人質のルイカが生きている可能性もゼロではない。

 問題は追放者ギルドがどこまで強く、狂っているか。そんな場所に出入りできてしまうような相手となってしまう。

 バランダルも確証があって言っているわけではない。ナターシェを試しているのだ。

 ここで怖気づくようであれば、これまでの度胸と発言が一気に覆されてしまう。

 そこはさすがにあり得ない。バランダルはナターシェにそう言わせたいのだ。


「可能性はあります」


 ナターシェに確証や迷いはない。

 バランダルでなければ、まず思いつかなかった場所だ。

 もっとも可能性がない。あり得ない。非合理的だ。

 そう口にしてしまいそうなところだが、ナターシェは言い切った。

 常識では考えられない場所、ナターシェ自身が言い出した事だ。

 バランダルはそれに答えただけだった。


「ハッ、バカバカしい。バランダル大船長もどうかしちまったんじゃないか?」

「レイチェル、この状況がすでにどうかしてんだよ。幹部でもねぇ小娘がここでイニシアチブを握ってんだ」

「いくら命令でも、あそこは勘弁してほしいね。割に合わないよ」

「ちょうどいいのがいるだろうがよ」


 バランダルがナターシェに親指を向ける。誰もが察した。

 ナターシェはこの流れを想定しなかったわけではないが、さすがにイズベルタ地下収容所は予想外だ。

 かつて一級冒険者パーティすら行方不明になっており、その魂は地下に縛られるとされている。

 数少ない生還者の口から語られた情報だけが、イズベルタ地下収容所の概要として知られていた。

 ナターシェは知らないわけではない。命知らずだったかつての自分が挑みたかった場所だ。

 今、彼女は胸が高鳴っている。ルイカの安否はともかくとして、これをチャンスと捉えていた。


「望むなら私達が向かいましょう」


 冒険者として、ナターシェは前を向いている。

 そんな場合ではないというのに、ここにきて誰かがうつったかのようだった。


「骨は拾ってやらねぇぞ」

「バランダルさん。ルイカちゃんの事はともかく、私達があそこを攻略したらガーニス大氷河に案内してください」

「ケッ、なんだかんだでうまい流れになりやがったな」

「そちらの隊長格が怖気づくような場所ですよ?」


 この場に良識ある冒険者がいれば、割に合っていないと叫ぶだろう。

 かつてのアフクルムは過去の汚点を払拭するために、多額の金をかけてイズベルタ地下収容所の攻略に乗り出した。

 そして財政破綻を招いて以来、冒険者ギルドに譲り渡したが未だほとんど手つかずの場所だ。

 それほど危険な場所であれば誰も寄り付かない。計らずともアフクルムは過去を闇に葬る事ができたのだ。

 そんな場所に微塵も恐れを見せないナターシェに、バランダルはまた少しだけ圧をかける。


「あそこのネームド野郎は特級だ。知ってるか? 一級冒険者を一定数、ぶち殺した魔物がそう認定されんだよ」

「他にも著しい被害を及ぼした魔物も、ですよね。早くリティに聞かせてやりたいです」


 リティという名前がバランダルを再び刺激する。

 バランダルをもってしても、彼女を計り切れていないのだ。

 だからこそ、彼はエクスピースを試したかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] そんな事はあり得ないと言うものが盲点だからな(ʘᗩʘ’) 生きてんだが死んでんだかよく解らず、兎に角曰く付きのヤベー物件(↼_↼) エクスピースの冒険章、伝説の幽霊船、滅んだ古代遺跡、次…
[良い点] 遂に人質の場所の目星はついたこと。 エクスピースとグレートバランの関係がやや軟化してきたこと。 [気になる点] もし、行くとしてエクスピースだけ行くのかな? 仮にもし、エクスピースのみ…
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