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夏季休暇中の合宿について話が行われた日の翌週から、1学期期末試験のテスト準備期間が始まった。それと同時に、俺と白月による葉原の学力強化セミナーも開講された。中間試験と同じく、この1週間はすべての部活動が活動禁止となる。そのため、放課後は部室ではなく図書室を借りて試験勉強に取り組むことになった。
葉原の学力強化セミナーは葉原の苦手とする英語と数学を中心に執り行われ、俺が英語、白月が数学を担当することになったのだが、いざ試験勉強を始めるといきなり問題が発生した。
別に葉原の学力が予想以上に低かったとか、そういうことではない。……問題があったのは葉原ではなく、数学を担当する白月だった。
「葉原さんがどうしてこの問題で悩んでいるのか、私にはよく理解できないのだけれど……。ほら、ここに式が書いてあるじゃない。この通りに解いていけばいいのよ」
「えっ、えっ……蒼子ちゃんちょっと待って。もっと具体的に教えてくれない?」
「具体的……? 具体的も何も、普通に計算すれば答えは出てくるのだけれど……」
「え、えっ、普通って何!? うぇぇ〜……晴人くん助けてぇ〜」
まぁ、言ってしまえば『天才 白月蒼子』は、これまでの人生で一度たりとも目の前の問題に躓いたことがなかったため、俺たち『凡人』がなぜ問題を解けないのかを理解することが出来なかったのだ。
白月にとって「問題を解く」という行為は、呼吸をするのと同じくらいに当たり前のことなのだ。
そんな奴に、他人の勉強の手伝いなんて出来るはずもない。
そんなわけで、結局どちらとも俺が担当して教えることになった。もちろん、葉原の試験勉強だけではなく自分の試験勉強もしなければならなかったため、期末試験が行われるまでの1週間は2人分……いや、3人分の働きをする羽目になった。手を貸してやると言った手前、葉原の試験勉強の手伝いを放棄することは出来ず、しっかり責任感を持って最後まで面倒を見きった。
かく言う白月はというと、脳がオーバーフローしそうになりつつある俺を、試験勉強することもせず、ただ余裕の笑みを浮かべてじっと観察していた。
ほんと、こいつ肝心なところで使えねぇな……。
兎にも角にもなんとか試験勉強は無事に終えることができ、土日を挟んで迎えた月曜日から3日間、1学期最後の定期テストが執り行われた——。




