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俺が白月蒼子を嫌う理由  作者: kuroro
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俺は2年教室のある東棟2階から階段と渡り廊下を使って西棟3階へと移動すると、そのまま文化部の部室が一列に建ち並ぶ廊下を真っ直ぐに進み、その一番奥にある部屋の前で立ち止まった。


扉の上部には黒のマジックペンで『天文部』と書かれた白いプレートが1枚貼り付けられていて、その扉の向こうからは何やら楽しげな話し声が聞こえてくる。



「んー……私はやっぱりアルナイルかなぁ」


「アルナイル……確かに葉原さんにぴったりね」


「なんか照れる。……で、蒼子ちゃんは?」


「私は……そうね、無難にシリウスとかかしらね」


「いいねー! 確かに蒼子ちゃん好きそう。なんかいろいろと似てるし」



しばらく扉に耳を近づけて会話を聞いていたが、ちょくちょく分からない単語が出てくる。


……アルナイル? シリウス? 一体なんの話で盛り上がってんだ、こいつらは。



俺は扉から耳を離すと、もうすっかり見慣れた扉の前でフッと一息吐き、ドアノブに手を伸ばす。そしてそのままドアノブを半回転させて扉を開き、部室の中へと足を踏み入れた。


部室の中では白月と葉原が4人掛けのテーブルに向かい合って座っていて、俺が入ってくると同時にそれまで会話を続けていた2人の視線がこちらに向く。



「あっ、晴人くんだ。やっほ〜!」


「おう」


部屋に入るなり、緩い挨拶を飛ばしてくる葉原に対して短くそう返すと、俺は白月と向かい合う葉原の隣の席に腰を下ろす。



「遅かったね。何かあった?」


「いや、特に何も。ちょっとクラスのやつと話してただけ」


「ふーん……。あっ! 今ね、蒼子ちゃんと何の星が好きかについて話してたところなんだよ」


「ほぉ……」


なるほど。さっき中から聞こえた聞き覚えのない単語はそれのせいか。まぁ、天文部らしいと言えばそうなのだが、もっと女子高生っぽい話でもしろよ、などと思いながら適当に言葉を返す。



「で、晴人くんはどんな星が好き?」


「えっ、俺?」


突然、葉原から質問が飛んできて思わず声が出る。星なんて12星座くらいしか知らねぇよ。



「し、獅子座……とか?」


「………………フッ」


とりあえず知ってる星を答えてみたのだが、斜め前に座って机に突っ伏す白月に鼻で笑われた。



「何笑ってんだ。ぶっ殺すぞ」


「いや、だって……ふふっ、し、獅子座って……」


なにがそんなに面白いのか、白月は肩を小刻みに震わせながら笑う。ふと隣の席に目をやると、葉原は少し困ったような表情をしてこちらに目を向けた。


「あー……今、晴人くんが言ったのは『星座』で、私が聞いたのは『星』だったんだけど……。まぁ、そういう知識がない人からしてみればどっちも同じようなものだよね!」


「お、おう……なるほど」


だから白月はこんなにも面白がっているってわけか。……マジでこいつ、性格悪すぎんだろ。1回くらいぶん殴っても許されるのでは?


そんなことを考えながら白月を睨みつけていると、息を整えて顔を上げた白月と目があった。



「まぁ、無知な凡人に何を言っても仕方がないけれど、皇くんも一応天文部員なんだから少しは勉強しておきなさい。そんなんじゃ、いつまで経っても話に混ざれないわよ。教室だけじゃなく、ここでもぼっちしたいのなら無理にとは言わないけれど」


「えっ……晴人くん、ぼっちなの? でもさっきクラスの人と話してたって…………あっ……」


白月が発した余計な一言のせいで、葉原は哀れみの目をこちらに向けてきた。



「葉原、何かを察したような哀れみの目をこっちに向けないでくれ。ぼっちなのは俺じゃなくて、こいつだから」


「あっ、そうなんだ……。でも大丈夫! どっちがぼっちでも、私がいるから安心して! 私は2人を見捨てたりしないから!」


「優しいな、葉原は……」


両手を握りしめて熱く語る葉原に、そんな心からの言葉を送る。白月もカケラほどでいいから葉原の持つ優しさを見習ってほしい。



「でもまぁ、晴人くんもせっかく天文部に入ってるんだし、覚えておいて損はないと思うよ」


「葉原がそう言うなら、少しは覚えておくことにするよ」


「うん! 今度、星とか天体に関する本いろいろと持ってきてあげるね」


「ありがとう。助かる」


と、そんな心優しい後輩に促されたところで、斜め前の席に座る白月が突然席を立ち上がった。一体どうしたのかと思い白月に目をやると、白月は部屋の奥にある窓の方に歩み寄り、クレセント鍵を外してゆっくりと窓を開けた。


外からは夕暮れの涼しげな微風が陽の光を乗せて室内に入り込んでくる。



「おい、どうした?」


開け放った窓から、夕陽に照らされる中庭を見下ろす白月に声をかける。


すると白月は、風で靡く黒髪をそっと手で抑えながらこちらを振り返り口を開いた。



「夏休み中に天体観測をします」


「は?」


「えっ?」


白月の突然の発言に、俺と葉原はほぼ同じタイミングで困惑の声を上げた。


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