39
「それはそうと皇くん」
「何だよ」
「来週から中間テストが始まるわけだけれど、勉強の方は捗っているのかしら?」
「……絶対聞かれると思った」
白月が今話題に出したように、俺たちが通うこの凪ノ宮高校では、来週の月曜日から3日間、中間テストが行われる。今年度初めての定期テストということもあり、いいスタートダッシュを切ろうとやる気になっている者もいれば、まだ焦るような時期じゃないと全く勉強に手をつけていない者もいる。
「では、お前はどちらなのか」と問われれば、それはもちろん前者だ。
テストで良い結果を残すため。そして何より、自他共に認める天才の中の天才、白月蒼子に一度でいいから勝利するために、毎日毎日寝る間を惜しんで勉学に励んでいるのだ。
テスト期間中は、その努力が結果として表れる運命の日でもある。テストに対する気合の入れようは、他の奴らとは一線を画すものだと自負している。
俺にはスポーツの才能もなければ、芸術の才能だってない。もちろん、どんな問題にもすぐに答えられるような天才的な頭脳だって持ち合わせてはいない。
けれど、高校生レベルの問題……それも授業で一度はやったことのある問題なら話は別だ。
努力次第で点は取れる。
『凡人』が『天才』に勝てる可能性のあるものなんて、せいぜいこれくらいのものだろう。
だから、今回こそはそんな『凡人の努力』でこいつに勝ってみせる。
俺はそんな滾るような熱い想いを胸にしながら、対角線上に位置する白月に向けて口を開く。
「白月」
「何? もしかして、勉強が捗ってないから私に教えてもらいたいの? 困った子ね、皇くんは。それなら、ちゃんと床に額をくっつけてお願いしてちょうだい。あぁ、もちろん敬語でね」
俺はエンジン全開フルスロットルな白月を無視して言葉を続ける。
「次の中間テスト、俺と勝負しろ」
「は?」
「全教科の総合得点が高い方が勝ちってルールで、俺と勝負しろって言ってんだ」
「…………」
俺の言葉の意味がまるで理解できていないような間の抜けた声を発する白月に対して、俺は勝負のルールを伝えた。
すると白月は、そんな俺からの挑戦に即答せず、しばらく考え込んでからようやく口を開いた。
「別に構わないわよ。どうせ皇くんが私より高得点を取るなんて、無理なんだし」
「は? そんなの、やってみねぇーとわかんねぇだろ。やる前から勝手に決めつけんじゃねぇ」
「……いえ、これは皇くんの努力うんぬんの問題ではなく、もっと根本的な問題を考えた上で無理、不可能だと言っているのよ」
「……それはつまり、どういうことだ?」
白月は俺を揶揄するわけでも、馬鹿にするわけでもなく、至って真剣に話をしている。
だからこそ、白月の言っている言葉の意味が俺には全く理解できなかった。




