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元々の1話の文字数が多くなってしまったので、3話に分割して投稿します。
駅から白月の自宅へ向かう途中、2人でいろいろなことを話した。
中学校時代の思い出や互いの家族構成といった、至ってありふれた極普通の会話だったり、『天才』と『凡人』は一体何が違うのか、自分らしさとは一体何なのか、といった哲学的な話まで、その内容は様々だった。
どれも白月の方から話を切り出し、俺がそれに適当に答えるといったやりとりだったが、それでも案外話は続き、気がつけば俺たちは白月の自宅のある3丁目付近まで来ていた。
ショッピング街からはだいぶ離れているため、辺りを照らす光源は夜空に浮かぶ白い月と、まっすぐな通りに等間隔で設置されている街灯だけ。
まだそれほど遅い時間というわけではないけれど、こうして外を出歩いているのは俺と白月だけで、他に人影は見当たらない。
そんな夜道を歩きながら、街灯に照らされて一瞬だけアスファルトに映し出される2つの影をぼんやりと見つめていると、隣を歩く白月がぽつりと呟いた。
「なんだかこうして歩いていると、世界には私たちしかいないみたいに感じるわね」
「…………」
「何か言いなさいよ」
「いや……まさかお前の口からそんなロマンチックな言葉が出てくるとは思わなくて驚いた」
「もしかしてときめいちゃった?あらあらあらあら!」
「おいおい冗談はほどほどにしてくれ。吐き気がする」
ニタニタと嫌な笑みを浮かべる白月に対し、苦笑を浮かべながら言い返す。
「それに、世界にお前と俺の2人だけが取り残されるよりだったら、死んだ方がマシな気がする」
「そんなに死にたいのなら、協力してあげるけど?」
そう言って白月は全く感情のこもってない人形のような瞳をこちらに向けてくる。
「おい、そのガチっぽい目やめろ。普通に怖い」
こいつがその気になれば、本当に死体も証拠も一切残らない完全犯罪をやってのけそうで不安になる。
そんなくだらない話をしているうちに、白月の自宅がある3丁目へとやってきていた。
「お前んち、もうすぐだろ」
「……えぇ、そうね」
白月がそう答えるまでに、ほんの少しだけ不自然な間が空いた。
「どうした?」
「いえ……何でもないわ」
そう言って街灯に照らされる白月の表情は、だんだんと家に近づくにつれて、僅かだが曇っていっているように見えた。