16
かつては人々に信仰されていたはずの神社が、今ではその存在をすっかり忘れ去られてしまったいる現実に、俺は淋しさのようなものを覚えた。
ひょっとして、ここが白月が最後に訪れたいと言っていた目的地なのだろうか。
すると、その光景を見た俺の考えを読むかのように白月は口を開く。
「お疲れ様。でも、ここがゴールってわけじゃないから」
「……まだ歩くのか」
疲労困憊な俺を見て、白月は口元に薄っすらと笑みを浮かべると、
「付いて来なさい」
と、俺たちから見て境内の右手に見える狭い小道に向かって歩き出した。
小道は少し上り坂になっている上、ほとんど舗装はされておらず、スニーカーを履いていても歩きにくい。
ヒールの白月はもっと歩きにくいのではと少し心配していたが、どうやら杞憂だったようだ。
白月はアスファルトの上を歩くのとなんら変わらぬ様子で、小道を進んでいく。息を切らす気配もない。
そんな白月の足元を見つめながら、俺はただひたすらに足を前へ前へと動かし続けた。
***
それから30mほど歩いたところで、視界に映っていた白月の足が動きを止めた。
「着いたわよ」
そう言う白月の声に反応して顔を上げると、そこには木製のベンチがぽつんと1つ置いてあるだけの小さな空間あった。
広場と呼ぶにはいささか小さすぎる気もするし、休憩所と呼ぶにしてもベンチが1つあるだけではなんだかしっくりこない。
ここが一体何の目的で作られた場所なのか首を傾げて考えていると、白月が丁寧にもその答えを提示してくれた。
「ここ、一応は展望台ってことになってるの」
「なるほど……展望台か」
確かに言われてみれば、周囲を胸の位置ほどまである手すりで囲まれていたり、その向こう側に見える景色も展望台からの眺めとしてなかなかに納得できるものがある。
しかし、なぜ白月は俺をここへ連れて来たのだろう。これには流石に何か意味があるはず。
そう思って、俺は白月が今日最後の目的地としてここを訪れた理由を尋ねてみる。
「白月」
「何?」
「……どうして、俺をここに連れてきたんだ?」