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俺が白月蒼子を嫌う理由  作者: kuroro
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新しい街、新しい学校での生活が始まってからも、私は約束通り時々絵を描いてはコンクールに応募し続けた。彼女のように、心から絵を愛せる人間になれたらという淡い希望を抱いて。


そんな生活を続ける中で週に2、3度、彼女とはメールでのやり取りを行なっていた。



賞を貰った私の作品を実際に観に行ったこと。


中学生になったら美術部に入ろうと考えていること。


将来は画家として、たくさんの絵を描いて過ごしたいという夢を持っていることなど、彼女は画面の向こう側から私にいろいろなことを教えてくれた。



そんなやり取りを続けて、もうすぐ4年が経過しようとしていたある時、突然彼女からの返信がプツリと途切れた。私が中学3年生の夏のことだった。


彼女からの返信が途切れた理由は定かでなく、多少の疑問と不安はあったものの、私の方も受験や進路について、ピアノや水泳、書道など他の分野での活動も忙しかったため、きっとそのうち返ってくるだろうと、その時は深く考えることはしなかった。


それから半年が経過し、私はこの凪ノ宮高校に進学した。



私が高校生になる頃には、両親の期待も大きく膨れ上がり、家にいる間はほとんど稽古や練習に時間を使われるようになっていた。そんな生活が嫌で、少しでも家にいる時間を減らしたいと考えた私は思い切って部活動に参加することに決めた。


あいにく、入部してみたい部活は才能の数だけあって、どれか一つに決めるのはなかなか難しいことだった。


吹奏楽部や水泳部、テニス部、書道部に演劇部。もちろん美術部への入部も思案した。

けれど私は数ある部活動の中で、天文部を選び、入部することに決めた。



そうして無事学校での居場所を見つけ、学校生活が落ち着きを取り戻し出した頃、私は再び絵を描き始めた。


返信は無くても、きっと彼女は自分の夢に向かって努力しているはず。だから私は、そんな彼女との約束を守るためにも、とにかく絵を描き続けよう。


いつか彼女と再会した時、またあの笑顔を見ることができるように——。



それから、度々絵画コンクールに作品を応募してはいくつもの賞を獲得し、多くの人々から期待と賞賛をより一層向けられるようになった。


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