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身近な陰り

異動から二週間後...入社式まで残り一週間


「ああああ!疲れた!!」


簡易的な休憩所に身を投げ出して少女は吐き出した。

都市一つを歩き回っているのだ、たまにはそんな溜め息を吐いても良いだろう。


リンネとグローリアは別棟に足を運んでいる。

人材が少ないので、結局分断して動く事になったのだ。


ピッ


元の世界の自動販売機に模された機械の前に立ち、適当なボタンを押して端末をかざす。


重たいながらも聞きなれた音がした後に、咲は取り出し口に手を突っ込むと出てきた飲料物を取った。


「んっ...はああ...まったく、どんだけ居るのよ...。」


人知れず鎮圧に動き出した三人。

二週間経った現在では、50名程の裏切り者が見つかっていた。


ただ、咲が手に掛けた課長程の悪事に手を貸した者は少ない。


とりあえず情報を掴むために手駒にしておく、そんな意図で働くような者が多かった気がする。


「はあ...次は魔術研究課だったかな...あれ、これどこかで...。」


腰を無理やりあげると少女は再びあるきだした。

ちなみに、課長は未だに目を醒ましていない。




開発部魔術研究課

そんな札がかけられたドアを開けて何も言わずに中に入った。


「ちょっと!部外者は立ち入り禁」


「人事課の視察よ。理事会になった時の配属に異議が起きぬように、全課を見て回っているの。」


全課という聞き慣れぬ単語を即興で発したものの、以外と効果があったようだ。


研究員は退くと自身のデスクに戻った。


「リース、元気?」


一際背の小さい少女が座るデスクに向かう。

呼び掛けに応じた彼女は、驚いたような表情で声をあげた。


「あれ!?月宮!どうしてここに?」


「先々週に異動が下ってね。今人事課に居るんだけど、その職務の一貫よ。」


彼女ならば...信用に足り得るかもしれない。


「今時間あるかしら?」


「あー、今新製品のデータ取ってるだけだから暇だよ。シルヴィアも呼んで来ようか?」


「そうね、空いてるならシルヴィアも居て欲しいわ。外の休憩室で待ってるから来て頂戴。」


「視察じゃないのか?」


「見ただけでわかるもんなの?」


その問いへの答えは無く、咲はそのまま外への扉を開いた。





「なんの用よ!あんたに取ってあげる時間なんてないんだから!」


「寮の外じゃそんな感じだったわね。まあ、話が通じるならそれでも良いわ。」


「最近研究課でなんか不満を漏らしてる奴とかいない?」


隠匿もなにもない。

直線的な質問を投げた。


「なんでそんな事聞くんだ?」


「充実度調査よ。小さな不満でも募ったら何かしら起こしかねないでしょ。」


「...? 居ないと思うけど...。」


なんのための質問かまだ飲み込めていないのだろう。

歯切れの悪い返答が終わると同時に、一足早く悟ったシルヴィアが彼女に耳打ちした。


「え...あっ!そういうことか!チヒロが言ってたね!」


「研究課にはペルメテリアを裏切るような輩は居ないよ。主産業だけあって待遇も良いし、やりがいもあるからね。」


知らないのかわからないが、少なくとも対物性愛が嘘を吐いているようには見えない。


隣のツンデレを気取った真面目な騎士も、口を開かないが同じ答えのようだ。


「外れか...。ありがとう、これ聞かれたってことは上手く誤魔化しておいて。」


さっさと次の候補先に向かおうと足を踏み出した瞬間、呼び止める者がいた。


「あ、待って...言う...べきなのか...わからないけど...一人様子がおかしい奴が居る。」


「誰?」


振り向く事無く背中越しに声を届ける。


「...ディーナ。」


「最近夜になると黙ってどこかに行くんだ。それも、何故か一律で服装を黒っぽくして。」


「他に思い当たる節は?」


「あとは隠れて私とシルヴィアを見てたりする。私達が要ることが不都合であるかのように...。」


「わかった、後で経理課に行って聞いてくるわ。」


心内ではリンネ辺りに任せれば良いと勝手に思っていた。

なぜなら、彼女が裏切り者だとして...その行為がどんなものであるかの予測はつくからだ。


精々資本の流出程度だと思う。

咲が現在は捜索しているような、『兵器流出に一枚噛んでいる裏切り者』ではないと踏んだからだ。


「裏切ってたら止めてあげて。きっと何か理由があったんだから。」


勿論よ、そんな気休めの言葉を発する事すら無く、咲は歩みを進めた。




「検挙~!捕まえましたよ!あなたが裏切り者ですね!?」


「なんでノータイムで俺が敵対派の息がかかったってわかったんだよ!!」


リンネのは片っ端から裏切り者を捕まえていた。

姫であっただけに、深層の意思や思いを見抜く事に長けていたのかもしれない。


当該人物を、さも彼個人に興味があるかのように人気の無いところに誘い出し、捕まえる。


そんなハニートラップをついいましがたかけ終えた。

首を決め、裏切り者の意識を落とす。


あとはこいつをチヒロに引き渡せばリンネの仕事はおしまいだ。


「...?」


ペルメテリアの裏路地。

完全に人目を隔絶する場所を選んだはずなのだが、確かに誰かの声が聞こえた。


未だ続く言葉をたどりそこに歩を進める。


「...ああ、本当に困るぜ。あんな環境じゃ身が持たねえよ。」


独り言だろうか。

ペルメテリアへの不満のようだ。


(まさか、裏切り者...?)


もう少し体を乗り出して声が聞こえるように壁際に立つ。


「あんな事がないなら働いても良いって妥協したのによ...クソっ、結局変わらねえのかよ!!」


何にたいしての憤慨なのかはわからない。

ただ、いままでの『裏切り者』よりは何か違う土俵に立っているような気がする。


(全然関係なかったら...裏切り者情報が広まっちゃう。...先にあそこで寝てる奴を連れてくべきね。)


聞かなかった事にしたリンネは、咲が作った台車に布を被せた。


全身黒いジャージに身を包んだ誰かはリンネが居なくなった後も毒を吐き続けた。


経理課の...ペルメテリアの...ではない。


「あの龍人達め...!!ふざけんなよ!!」


ディーナは祖国に向けて暴言を振るう。

自分だけ知る心内を...誰にも聞こえぬ裏路地で叫び続けた。

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