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第三の武器

「何の間違いか貴女方は、この地下炭鉱に配属されていたんです。」


「ここで埋もれるには惜しい才能ですから、人事課である私の一存で配属先を変えさせて頂きました。」


願ってもないチャンスだった。

炭鉱から離れられるのであれば何でもいい。


ただ一つ思うことがあるとすれば


「人事課って何をするんですか?」


リンネも思うところは同じのようで、咲が心に落とした思いを彼女は外に出した。


「それは研修で教えてあげるわ。ま、っていっても雑用ばっかりだけどね。」


「まわりからは『人事課』なんて呼ばれずに『雑務課』って方が有名だし。」


「へえ...なら別にここを改築しなくても良かったかな。」


独り言の様に溢した言葉をグローリアはすかさず拾った。


「改築? もしかして呼びつけた本題と関係する事?」


「口で言うよりも見てもらった方がいいかも。」


その返答の後に、咲は炭鉱に続く階段に向かった。

グローリアとリンネは顔を見合わせて彼女に続く。


リンネは咲が炭鉱で行っていることは、傍目で見ただけで内容を細部は知らなかったのだろう。





「リンネ、光。」


「ハイハイ。」


先ずは貯蔵庫だった。

ここの浄化措置は、貯蔵庫及び高炉の加工場を全体的に換気する事を意図とした。


「...え?何?何をそんなキメ顔をしてるの?」


「貯蔵庫の衛生水準を戻したの、このダクトを見たらわかるでしょ?」


「...ごめんなさい、環境整備は私にはわからないの。」


深く考えれば当たり前の話だ。

そもそも咲が取り入れたのは外来の技術であって、その知識一切は共有されていない。


「ああ、えーっと。ここ空気の通りが悪いからさ、地上に孔を開けて外の新鮮な空気が絶えず循環するようにしたの。」


リンネはその説明で何かを得たようだった。


「一週間前よりも涼しいですね。」


「お前は暑いか涼しいしか反応が無いのか?」


本命のグローリアは少し思案した表情をするとリンネと同じような明るい顔つきに戻った。


「なるほど、幸運の変動流動性を応用したんですね!!」


「うん?うん、そうよ!幸運の...それを利用したの!」


何を言ったのかすらわからないし、それがなんなのかもわからない。

専門を語るはずが全く逆の立場を味わう事になると思わなかった。


この後は、それぞれの炭鉱の衛生状況に言葉を絡ませて伝えたものの、その全てが『幸運の~』と返されたので、咲は適当に相槌を打った。




「最後は特殊加工場ね。グローリアが今日来るってなったから、徹夜で終わらせたのよ 」


「え?」


呆けた声の主に視線をうつすと、彼女は驚いた表情でいた。


「...いえ、まさかね。なんでもないわ、続けて。」


尋問中から眠気に苛まれた理由はこれだった。

リンネの要望早まった視察に対して、咲は手付かずの特殊加工場を改築し終えた。


もちろん衛生環境改善に重きを置いて。


「材料の保管場所はここね。密閉隔離に、保護具...使用具のマニュアルも置いたわ。」


今度のグローリアは怪訝な顔付きから変わることはなかった。

一通りの説明を咲が終えた後に、一つだけ質問が出た。


「さっきから聞いてると、まるで貴方はここの改築を一人でやってのけたみたいに言ってるわ。」


「それも徹夜で、なんて...素人目で見てもかなり高度な改築をしてるように思うのに。」


「でも、取り寄せた書類には地下炭鉱の改築申請なんて出ていなかった。」


「規模、時間、技術の全てから見てもたった一人でなんて信じられないわ。」


「本当にあなたがやりとげたの? 一人で?」


元の世界では無理な話だ。

それでも、その荒業が可能だったことは魔術が容認されていたからだ。


咲のスキルには魔術が関わっていなくとも、そのスキルがある理由は魔術が関わっている事だろう。


「ええ、一人でやったわ。」


それでも、それを常識とした上でグローリアは問うのだから咲の行為は並外れたものであるのだろう。


自白した後で悟ったが、この改築はグローリアが確認した様に誰の許可も取っていないので、人に依っては咲を罰する可能性ももちろんあった。


「そう...ええ、凄いわ。何故かはわからないけれど、やっぱり貴方は貴方は凄い。」


最も、そんな懸念は必要無かったが。


「こんなに綺麗な『建築』(アーキテクト)は滅多に見れないわ。」


息を漏らすように笑うと、少女は自身気に返した。


「いや、これは『製造』(メイク)よ。私の適正職はなんたって『製造業』(マニュファクチャー)だもの。」


当然『ええ!?これを『製造』で!?』という反応を期待していたのだが、咲は読みを外した。


「これは『製造』じゃ無理ですよ。だから『建築』を使ったんですよね?」


噛み合わないと思った。

彼女は咲が『製造』以外のスキルを持っていると勘違いしているからだ。


だが、咲が否定するよりも早く、グローリアが出した一枚の紙によって自分の認識が間違いなのだと気が付いた。


「これ、あなたのステータス表ですよね?」


自分の名前が記された一枚の紙を受けとると、確認するように彼女は読み上げた。


「月宮咲...22歳、22か、字面が重てぇ...身長158cm,体重,51.4kg。」


単位が元の世界と同じである事は何度見ても不思議だ。

恐らく翻訳術の影響だろう。


「おお、健康的。」


後ろのエルフにからかわれながらも、咲は読み進める。


「適正職...製造業Lv10。保持スキル、『演算処理』『製造』...」


「『建...築』。」


そういえば王様が言っていた。

熟練度が上がっている、と。


それが製造業の横に記された数値の結び付くのであれば、『建築』もそれに応じて得たものなのかもしれない。


新しいスキルを得たことで嬉しい気持ちは確かにあった。

だが、咲の心にはより大きな思い占有していた。


「これも非戦闘スキルかよ!!」

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