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掲ぎ挙げるは星の旗章

パァアン...。


乾いた音が響いた。

空間を局地的に破った力学はリンネの胸部狙う。


しかし、彼女は倒れない。


パァアン...パァアン...パァアン...。


「お前...なんでまだ息があるんだよ!!」


「私が知ってる情報が、貴方よりも多かっただけです。」


「その銃の設計図士は私じゃない!!私は、貴方からの依頼をサボってある人物に託したんです!」


「そいつが私の未来を繋いだ!!」


「クッソ、じゃあ別の銃器で」


「させませんよ...!スキル脈動、『エルフ式国防術』!」


リンネの身体に流れる血液は、その流動速度を持続的に上昇していく。

課長が別の銃を引き抜くよりも早くに彼女は佇立からいこうしていた。


「良いことを教えてあげましょう。」


「いつの間に...後ろ!?」


「『気に食わない奴は鈍器で殴れば殺せる』んですよ。人間とエルフの切り札を、その身に一重に受けなさい。」


リンネは振り上げた手には小さくも精巧な鈍器があった。

拾った訳ではない、咲からの餞別だ。


彼女がリンネを置いて社員寮に戻る際に、聞き取れなかったがなにかを言っていた。

そしてその直後にリンネ身体は重たくなった。


心理的なものかと思いきやそうではない。

炭鉱の鉱石で製造したであろう鈍器が制服のポケットに入っていたのだ。


「終わらせてやるわ、課長...いえ、裏切り者!!」


リンネは思い切り振り下ろすと鈍器で課長の頭部を殴打した。

頭蓋が陥没するかのような打撃を食らっても課長にはまだ微かな意識が残っていた。


「うっ..はあ...お前、ただの新人じゃねえな...何...者だ?」


「バレンタイン王国第4王女...リンネ、リンネ・バレンタイン。」





「リンネ!!リンネ!?」


「咲さん?なんでここに...。」


窓辺から、ふと特別棟に目を向ければ彼女である星の瞬きが見えるではないか。


何かを追うようにして流れ行くその疑似デブリはすぐに見えなくなってしまったが、『私』は直ぐに炭鉱に向かった。


単なる残業だと思っていたがリンネに危機が迫っていたのだとやっと悟ったのだ。


冗談半分に咲が渡した鈍器が、上手く作用してくれれば良いのだがと思いつつ咲地下への階段を下りた。


目標の奴隷は直ぐに見つかった。

意識の無い課長を縛り着けて、事務所の前で座っていたのだった。


「ペルメテリアの裏切り者を引っ捕らえてたんです。...その仕事は今終わりました。」


「そんなことよりも、ボロボロじゃない...一体何があったのよ!?」


「ハハハ、思いの外課長と敵対勢力の攻勢が激しくて。でもかすり傷です。」


「敵対勢力? どういうこと?」


「貯蔵庫の裏に空洞があったでしょう? あれは、あるドワーフの裏帳簿であると同時に」


「特加専の課長、裏切り者とペルメテリアを良しと思わない者の密会場所だったんです。」


リンネが今日残った理由は密会現場に踏み込む事だったのだろう。


そして、彼女は単身裏切り者を捕まえるに至った。


「ああ、でもすみません。反抗者は逃しました...彼ら情報は全く得ていません。」


「かろうじて星屑(エトワール)で追跡は試みましたが、一体どこまで捉えきれたのかは不明です。」


私が見た星の光はそれだ。

敵対者らは、この炭鉱から地表に出て空中を飛んだのだろう。


「咲さん。」


話の筋には無かった筈だが、突然名を呼ばれて驚いた。


「数日後に来る予定のグローリアさんを、どうにか明日に都合を着けてくれませんか?」


私の困惑顔に気がついたのか彼女は続けた。


「アハハ、理由は『入社式に関して緊急の要件』とでも伝えれば良いでしょう。」


「ああ、うん、一応連絡はしておくわ。でも何でグローリアなの?」


裏切り者の取扱なら速水やサガミ、もしくは警備課のチヒロに任せれば良い筈だ。


「このペルメテリアで一番信用出来るからですよ。」


リンネには何か思惑があるようだったが、私には検討がつかなかった。

帰るや否やすぐに眠った咲に切り替わればすぐに答えを出すだろうが。


「それと一つ礼を述べて起きます。」


「あなたが銃器を設計してくれたお陰で、私は助かりました。」


「なんの事かわからない、という顔ですね。ええ、この事は必ず詳しく話しますよ。」


「この裏切り者を尋問する時にね。」


リンネは咲の炭鉱にまだ落ちたままの虜囚を投げると、心底疲れた顔で、帰りましょう、と呟いた。

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