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ペルメテリア開拓公社

「つまり、王様は転移者が帰還しないのはこの世界が、まだ十分に平和だと言えない為だと?」


「そうじゃ。五年前、転移者が集団失踪した際の原因も何でも女神からのお告げだったそうではないか。」


『ここ世界を平和にせよ』

エレナはその言葉を胸に思想の統一と言う荒業へと踏み出した。


「じゃがな、『平和』というものの曖昧さは王であるわしが最も知っておる。」


「そんなものを終着に進め、と言われても十人十色に別々の方向に歩んでしまう。」


「むしろそうなれば『平和』から外れる事は明白じゃ。リディニア異変がそのモデルケースじゃな。」


「加えてな、『平和』という命題を転移者に放任するというのは、この世界の我々の怠惰じゃ。」


それはそうだ。

自国の治安維持を他国の人間に任せているのだから。

何が起きてしまっても、自国における責任を問われる事は間違いない____それが明らかに他国の者に非があっても、だ。


「ではこの世界に住む我々が出来る事は何か。それは、転移者を含めたこの世界全体の歩調を合わせ、一方向にまとめあげる事じゃ。」


「時に咲、君はこの五年間の消息が無かったから尋ねるが、外部の潮流に目を向けた事があるかの?」


「いえ、全くありません。」


当然だ、エルフの国から外れてもせいぜいレミニア止まり。

魔王征伐の情報も、事もあろうに半裸の狂人から知った程だ。


「ふむ、そうか...この五年で十の種族は足並みを揃える傾向にあってな、ある種族だけは対協調であったわけだが。」


「その長が最近死亡して、特に協調路線が強められた訳じゃ。」


「そして最近、初の試みの元で、ある組織が創設される事となった。。」


「大陸連合平和理事会、ペルメテリア。」


「又の名をペルメテリア開拓公社。」


「つまり十種族協同の象徴となる組織じゃの。」


「ペルメテリアって...確か、神話の...。」


リンネはペルメテリアという言葉を知っているようだった。

それにしても長い名称だ。

協同組織であるのに社という事も気になる。


「協同の象徴といえど、それぞれの国の政府が手を出せば少なからず政争の道具になってしまう故な。」


「純粋な平和、を目的に政府がバックアップの形で、会社という形を取っておる。」


そう語る王様の表情は赤く昂っていた。

おそらく人類がその組織創立を牽引したのではないだろうか。


「じゃあ、政府の管理下に無いのならペルメテリアの管理者は誰なんです?」


まあ、おおよその予想は付く。

ペルメテリア創立は協調路線が強まった事で成された事。


ではかねてより主流であった協調路線を更に強めた出来事は、と言えば足並みをを揃えないはみ出し者の排斥だ。


じゃあ排斥を行った人物。


「転移者じゃよ、魔王を征伐した。」


姿形は人間であっても、その実転移者はエイリアン等とそう変わらない。


入り口が人間の領土にあっただけで、どこの種族にも帰属しない。

もっと言えば女神からの恩恵を持つ強大な人物。


多種多様な種族のトップとしては適任なのだろう。


言葉にすれば私とは対称的だ。

それならば、


「はあ~、なるほど。その方には本当に是非とも頑張ってもらいたいものです。」


ペルメテリアなど私には関係の無い事だ。


「そなたも行くんじゃよ。ペルメテリアに属せ。」


でしょうね、そうは問屋が下ろさないと思ってました。


「ええ~?それはちょっと...。」


「じゃがな、咲がペルメテリアに加入出来るとは限らないんじゃ。」


「私が恩恵を持たないからですか?」


「間接的に言えばそうじゃ。ペルメテリアはその目的から世界的に優れた者のみ加入が許されるのじゃ。」


「その為に、入社希望者には加入試験が課されるのでな半端な能力ではペルメテリアに足を踏み入れる事はない。」


「あ、じゃあ!その試験に落ちればペルメテリアに入らなくてもいいんですね?」


「恐らくペルメテリアに落ちたい、などという戯言を抜かすのは世界で咲一人だろうな。」


王様の話を聞いていてペルメテリアがこの世界でどんな立場にあるのかは大体わかった。


要は選りすぐりのエリートだけが加入できる組織。

ペルメテリアの人間、と言うだけで羨望の眼差しを浴び、憧れに焦がれるのだろう。


「あの? ペルメテリアは私でも入れますか?」


そう尋ねたのはリンネだ。

私が入るのなら、自ずとリンネもペルメテリア入りは必須だ。


「ふーむ...わしが推薦しても良いのだがな、それでは癒着が生まれるというもの。」


「推定倍率139.0 倍の壁を越える自信があれば、ペルメテリアの一員にはなれるぞ。」


数値バグってますよ、とは言えなかった。


「139.0 倍って...。」


「安心せい、咲は転移者じゃからの。わしが推薦しても何の障害もない。」


「いけません!王様っ!私は転移者です!王に手を煩わせずともこの月宮咲、139人の頂点に立って見せましょう!」


「お、おう!突然大きな声をあげるから少し驚いたぞ。」


「ああ、言い忘れておったが、既に他の転移者はペルメテリアでの重役のポストについておる。さらに、既に加入済みの他種族の者もおるからな、君たちは彼らの下に就くこととなる。」


「ペルメテリアって創立は恐らく5ヶ月前ですよね? もう階級が決まってるんですか?」


「正確に言えば、現状は階級は無いんじゃ。」


いけない、ついいつもリンネに向けた口調で『は?』と言ってしまいそうになった。


この王様は一体何を言いたいのだろう。


「大陸連合平和理事会としてのペルメテリアは正式樹立が1ヶ月後なんじゃ。」


「開拓公社としてのペルメテリアは、実は二年以上前から創立していて実働しておる。それゆえ、公社としての階級が既に暗黙で存在している。」


「ややこしい...。」


「ええっと、元々あったペルメテリア開拓公社と言うものを、政府がバックアップを取る為に1ヶ月後に理事会という立場に置き。」


「理事会での階級を、現在開拓公社で暗黙の了解として存在する階級を明文化して引き継ぐって事ですか?」


「そういう事じゃ。」


「さっすがリンネちゃん!!かわいい!優しい!頭良い!」


「ちょっと黙っていてください!咲さん!」


正直まだ理解できていない。

でもこの場でそれを口に出せば、リンネに何を言われるかわからないので言わない。


「ま、理事会という立場ではあるが、開拓公社というのも変わらん。連合組織でありながら、一公企業という特殊な組織じゃからな。」


そう言い終わると、王様は私たちにペルメテリアへの紹介状を渡した。

用が終わったので退こうとした時、一つこちらの用事が残っている事を思い出した。


「王様、一つ質問を宜しいでしょうか?」


「ほう、なんじゃ?」


「二ヶ月前、レミニア近辺で起きた災害に関してです。」


二ヶ月前の災害という言葉を聞いた途端、王の顔つきが少し強ばったような気がした。

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