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奇襲

製造____咲の味方であり長所であるスキル。

製造職、という抽象的なジョブに付随してきたものだ。


『非戦闘職』などの宣われた為に期待はしていなかったが、中々使い勝手が良い。


最初にスキルを使ってみた時は、頭に思い浮かべた物を手元に出す、という都合の良すぎる解釈で飲み込んでいたがそれは違う。


材料有っての製造なのだ。


伝説の勇者の剣を製造したくともその構成材料がわからなくては造り出せない。


製造する製品の材料が明確であること、そして周囲にその材料があることが重要なのだ。


ただ、あくまでも誰かに聞いたわけでも文献を参照した訳でもない。

咲の中で決めつけた勝手な推測だ。。






「何をするつもりなんだ?」


「今まで作った物は...大きくても私の視界に収まるものだけだった。」


「...製造。」


音もなく、揺れもなく。

物理的な変動は一切無かった。


それでも一つ言える事は、咲の一言が発せられた後にバベルの塔を囲む木々は消え去った。


後に残った物は、塔の外壁を添うようにして取り付けられた木製の階段。


普通に行えば年単位でかかる工程を、咲はたった一人で、それも瞬時に終えた。


「さ、階段よ、外側から登れば誰にも見つからないでしょ。」


「魔法や魔術の類いだ...この規模の構築物を一瞬で組み立てるなんて。」


「残念ながら私にはそのどちらも使えないの。」


「驚嘆は後だ。月宮が造ってくれたんだ、さっさと登ろう。」


リンネとミルトは驚きの表情をしながらも、少しだけ恐怖の念を醸し出していた。


だが、それがなんなのかを彼女達が知る事はまだないだろう。


自然の冒涜、自然への畏敬。

そういった物をドブに捨てて、己が利益を優先する化け物。


そう言った存在は今までこの世界には居なかった。


だが、目の前の人間はそういう存在だ。

何せ[彼ら]が元居た世界では、こんな出来事は日常茶飯事なのだから。









「大体一日ぶりだな。この神殿に来るのは。」


「...。ええ、そうね。」


「見下ろしてどうしたんだ?」


「何でもないわ。確か、神殿の脇から内部に入れるのよね。」


「はあ、はあっ...ちょっと...待ってくださいよ...。」


「どうして...はあっはあっ、お二人は疲れて無いんですか...?」


「ふふん。転移者だからよ。」


答えになっていない答えを咲は吐き捨て、未だに肩で呼吸したままのエルフと獣人をおいて先に進んだ。


「...おう、わかった。」


「何が?」


「ビーチュが王国に着いたそうだ。」


「速いわね、流石エルフ特製の馬車。」






「執務室...ここか。」


内部に入ってから、ビーチュの持っていた内部図を手掛かりに道を進んだ。


だから迷うこと無く最短経路で執務室まで辿り着く事ができた。


そう、最短経路で。


「上手く行きすぎな感じがするわ。ここまで一切信者を見かけなかったし。」


「気付かれているって事ですか?」


「まさか、事前に計画も何も無かった奇襲だぞ?」


「なんにせよこの扉を開けない限りは始まらないわ。」


パタンッ


扉はその厚さに似つかわしく、軽快な音を立てて開いた。


「ノックぐらいしなさ...ようこそ、今度は何用ですか?」


「フェティマ教教祖、エレナ・フィッシャー。御同行願おうか。」


「警察みたいな事言うのね。お断りよ、私何も悪い事してないもの。」


「私を殺しかけたじゃない。」


「...生きてたんですね。」


「無策で飛び降りた訳じゃないだけの話よ。」


「そして、ここにいるのだって無策な訳じゃない。」


「あなたは今、近づけば魅了に嵌まるっていう防壁を手放した状態。」


「なるほど、それなら殴りあっても勝てるって算段ですか。」


「三対一それにマルテの剣だってある。力比べなら勝ち目はない、でしょ?」


「戦力差を見誤る程...いえ、見誤ったから簡単に奇襲を許したのでしょうね。」


「まさか一日に二度も侵入を許すとは思いませんでした、想定外です。」


エレナは執務室に唯一取り付けられた窓の前に立つ。


「自責や反省は後でするんだな。」


「確かに、これほど早く侵入するとは思いませんでした...が、裏を返せば、貴方達はこれほど迄に事を急かなければならなかった。」


「つまり、何かを恐れている。時間経過によって起こりうるなにかを...違いますか?」


「速水、聞く耳を立てる必要は無いわ。時間を与えれば反撃の機会を与えちゃう。」


「そうだな。エレナさんの推理は後でじっくり聞くからよ、とりあえず一緒に来てもらおうか。」


「随分余裕が無いのね。そんなに次の恩恵が怖いのですか?」


「次...やっぱりまだ終わって無かったんですね。」


「月宮が得た情報から、”隻眼の王”を観察したのでしょう。」


「そこから次があることまで予測した事は感心に値します。」


「その通り、”隻眼の王”は繋ぎという役割でしかありません。」




(繋ぎ...そういえば”隻眼の王”は不可逆性と支配性を強化したもの...塔で信者を見かけなかった事を踏まえると、何かを命じている?)


(それなら”恋の病”もある意味、魅了を利用して命令を出せたはず。)


(近付くだけで術中に嵌まる、という絶対防壁を手放してまでまで”隻眼の王”を選らんだ理由。)


(あの場を切り抜ける為だけに”恋の病”を捨てたのかしら?)


(『これほど早く侵入するとは思わなかった』...侵入される事自体は想定内だってこと?)




「あらあら、何を難しい顔を為されているのかしら。」


「突然黙ってどうしたんだ月宮。」


「速水、リンネ...詳しい理由は後で話すわ、今すぐにエレナを無力化して!」


「私も今そうしようと思っていました...どうやら咲さんと同じ考え見たいですね。」


「な、お前達だけ何か気が付いたのか!?」


「本当に、月宮はいつも惜しいところまで行く。」

























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